第10話 開戦

国民に放送局を使って説明を行ってから2日が経過した。


敵に四方を囲まれいる結果、多方面作戦を強いられる。


複数の敵を同時に相手したくないが、領を守るために俺たちはある作戦を立案した。


それは、各方面に部隊を配置して敵が攻めてきたら遅滞戦術を行い中央から送られてくる本隊が到着するまで時間を稼ぐ。


そして、本体が到着次第全軍の総力をもって敵を撃滅するという作戦だ。


1つ1つの家を各個撃破はやろう思えばできるが、その間に他の3つの家に攻められては領を守れるか怪しい。


結果、俺たちはこの遅滞戦術を用いた作戦しか道はなかった。



――side西方方面軍


「なぁ、俺たちどうなるんだろうな。分家だったやつらが宣戦布告してきたんだろ?領内の地理も知り尽くされているし勝てるのか?」


「なぁに不安になってるんだよ!俺たちが勇気を持って戦わないと領がアラン様が治めるこの領を守れないだろ」


方面軍兵士たちがこれから始まる戦争に不安を隠せずに話していると見張りの兵士が異変に気が付いた。


「なんだ…あれ?」


見張りの兵士が10kmほど離れた山を望遠魔術が施されている魔道具を使って見るとそこから魔道揚陸艦が見えた。


「や、やべえ!警報を鳴らせ!」


警報がなり、すぐに西方方面軍の戦闘準備が整った。


「すぐに魔道人形を発進して戦艦も浮上させろ!領都にある軍司令部には西方方面軍が戦闘に入ったと報告しろ!」


「了解しました」


西方方面軍司令官が指示を行い、本隊の増援を求めるだけでなく地帯戦闘を訓練通りに行うために各所に指示を飛ばしている。


指揮官の指示の通りに西方方面軍基地から魔道戦艦50隻、魔道人形5000機が発進して現れた敵艦隊と艦隊戦を始めた。



そのころ他の方面軍でも敵が現れ、戦闘が始まっていた。




――side軍司令部


戦闘が始まったと連絡があり、俺は軍司令部に来ていた。

戦闘の規模が大きい順に西、南、北、東だ。


軍司令部の会議室では敵が想定通りに来たことに一安心し、どの方面軍から本隊を送り敵を撃破するかを議論している。


俺は作戦の立案などはできないが、領主として、最後に責任を負う立場にあるからこの防衛戦争を作戦立案の過程から知っておくべきだとアイに言われてここに来ている。


「ここは1番敵の戦力が少なない東方方面軍に本隊を送るべきだ。東、北、西、南の順に敵をせん滅するのがいいだろう」


「いや!ここは1番戦力の多い西をたたいたほうがいい!敵の1番戦力を叩くことによって敵の士気は激減する。もし他の方面軍から本隊を送ったらその間に西方方面軍は西以外の方面軍よりもずっと多い犠牲が出る可能が高いんだぞ」


防衛戦争ということもあって、軍の高官たちの気合の入りようが凄まじい。様々な意見が飛び交い議論が白熱している。


このままでは議論をしているだけで事態が悪化していくだけだ。


「ルドルフ男爵。男爵から見てこの場合は敵戦力が1番多いところを叩く方がよいのか?」


軍のトップとしてこの会議に参加していたルドルフ男爵に質問すると、思案顔で


「そうですなぁ。この場合は1番戦力が集中しているところを叩くべきでしょう」


そういうと男爵は議論をいったん止めて自分の意見を話した後、今後軍がとる行動を決定してこの会議は終了となった。


「さすがだな、ルドルフ男爵。早くも軍からある程度の信頼を勝ち取っている」


「いやいや、私なんてまだまだですよ。この領には私より経験のある年上の軍人たちが山ほどいらっしゃる。これほどの練度を持った領軍は聞いたことがありません」


「まぁ、他の貴族たちは盗賊を討伐するどころか癒着する人たちだったからなぁ」


ルドルフ男爵と話しながら、軍司令部に隣接している行政本部に訪れた。

これから、ルドルフ男爵は軍のこれらの作戦を役人たちに説明をしてもらい、俺や役人たちがこれからの政府の対応を決定するのだ。


「続けての会議だ、苦労を掛けるな。この戦争が終わったら褒美を渡すから考えといてくれ」


「アラン殿。まだ戦争が始まったばかりです。いくら戦争に勝てる可能性が高くてもそのように油断をしているといつ足元を掬われるかわかりませんぞ」


「そうだな、気を付ける」


行政本部の会議に入室し、俺は円卓状になっている席を上から見下ろすように置かれている自分の席に着席した。


着席するとすぐそばにブライアンが寄ってくるので、その時に今回の会議で使用される資料をもらう。


円卓にはすでに資料は用意されており、席に着いたものから順に資料を手に取り今回の議論内容を把握している。


「我々は今、防衛戦争中となったわけだが、敵は裏切り4分家と呼ばれるものたちだ。この戦争の勝つために行政は軍と協力し、速やかに外敵を排除する意思がある。ルドルフ男爵、今回軍がとる作戦やそれにかかるコストなどの説明をよろしくお願いします」


会議が始まり、議長が会議の始まりを宣言する。

そのあとに今回の主な議題を上げ、最初に議論される「防衛戦争の戦略」について軍との調整を図りつつ領内の経済を下落させないようにする政策を話し始める。


「やはり、戦争がはじまり工場の軍事物資生産割合が8:2になっていることで物価の上昇が見られます。このことの解決が先決かと。このままでは領民が生活必需品さえ購入できなくなってしまいます」


ルドルフ男爵からの軍が行う作戦行動についての説明が終わり、防衛戦争の影響をどのようにして最小限に抑えるかという問題を解決するために話し合っている。


会議は3時間ほどで終わり、これからルドルフ男爵は領内に置いてある別邸に帰宅、俺は屋敷に戻ってこれから政務が待っている。


執務室に戻り自分の椅子に座ると、机の下にブレンダが潜んでいた。


「あっ。見つかってしまいました。すみません、兄さま。最近の兄さまは根を詰めすぎてるように見えまして心配だったのです。ご迷惑でしたか?」


ああ、ああああああ。なんて優しいんだ!ブレンダ!


「そんなことないよ。君が心配してくれたことはうれしく思う。そうだな…今日はここまでにして久しぶりに二人で夕食を食べようか。そろそろいい時間だしね」


「はい!すぐに準備してまいります!」


するとブレンダはメイドを連れて急いて自分の部屋に戻っていった。


「ブライアン。いるか」


「はい。ここに」


「そういうことだから、今日の執務が終わりだ。どうしても今日中に終わらせないといけないのはブレンダが寝てからにする。あるならリストアップしておいてくれ」


「かしこまりました」


久しぶりにブレンダと夕食を取れるのでテンション爆上がりだ。


コックに行って今日は一段と豪華な食事にしよう。

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