第2話 アラン・アーチボルド

二度目の人生がスタートした。


新しい名前は【アラン・アーチボルド】

鏡を見ると、金髪でエメラルドグリーンの瞳を持つ幼い男の子の姿がある。

年齢は4歳。


部屋の中で絵本を読んでいると、前世の記憶を思い出した。


周囲には読みかけの絵本が散らかっていて、積み木などのおもちゃもある。


「――広い部屋だな」


権力者、人生の勝ち組に転生するようにとあいつは言っていた。


どうやら約束を守ったらしい。


俺の記憶には確かにこの貴族の家に生まれたとある。


アーチボルド伯爵家。


超魔道国家アルバート帝国――アルバート王朝。


そんな帝国で、前世の北アメリカ大陸ほどの面積の領地をもつ伯爵家に跡取りとして生まれた。


未来の領主様だ。


「行ってた通りだな」


気づいたら笑みを浮かべていた。


いろいろあって転生したが、今世は良い人生になりそうだ。


しかし、このアーチボルド伯爵家…どこかで聞き覚えがある。

まぁ、大事なことだったらいずれ思い出すだろう。


「楽しくなってきたな。――ん?」


ベットの上に手紙が置いてある。


両親からのだろうか?


手に取ってみると案内人からの手紙の用だ。


「どうして直接言いに来ないんだ?」


そんな疑問の答えは手紙にあった。


内容としては、問題なく転生できたことへの祝いの言葉、残してきた彼女は幸せに暮らしていることなどが書いてあった。


同時にこれから別の人の担当になってしまい様子を見れないと書いてある。


だがらこれから一人で頑張ってくれと。


そうしていると、使用人を連れた両親が部屋に入ってきた。


アドルフ・アーチボルド


カーリー・アーチボルド


二人は嬉しそうに入ってきた。


使用人は心なしか疲れているように見える。


すると両親は


「アラン。お前に妹ができたぞ」


「もう、あなた。そんな無愛想に言って。アランちゃん、あなたお兄ちゃんになるのよ」


二人は嬉しさを抑えながら俺に話しかけてきた。


「そ、そうなのですか!?」


「そうよ、あなたはこれからお兄ちゃんになるの!」


「名前は決まっているのですか?」


「名前はブレンダ・アーチボルドだ」



俺はその名前を聞いて前世で聞いたあるゲームを思い出した。


それはファンタジー恋愛ゲームが原作であり、あまりにも人気が出たためアニメ化、映画化、実写化と続けて行い。そのすべてがヒット、社会現象にまでなったものに出てきた悪役令嬢だ。


俺は興味なかったが、彼女がとてもはまってしまいよく話を聞いていた。


どうしよう、やばいぞ。


このままだったら俺は没落だけじゃすまない。


最悪処刑だ。何とか回避しなければ。


幸いまだブレンダは生まれていない。


それだったらまだやりようはある。


「いい名前ですね!僕はブレンダに誇れるお兄ちゃんなって見せませす!」


「あらあら、あなたアランったらこんなに嬉しそうにしてますよ」


「ああ。私たちもアランに負けないようにしないとな」


「それじゃあ、アランいいこにしているのよ。これから父様と母様は王都からの客人をおもてなししないといけないわ」


「じゃあな、アラン。明日の朝また会おう」


そういって両親は使用人を連れて部屋を出ていった。


来たときは嬉しそうな雰囲気丸出しだったが、出ていくときはキリっとした雰囲気で。


両親が部屋を出て、ある程度離れたのを確認した。


さて、これからどうしよう。


ブレンダを出産した時にカーリー・アーチボルドは死んでしまう。


それがきっかけでアドルフ・アーチボルドは酒浸りになり、俺やブレンダに暴力を振るうようになる。


そしてブレンダはどんどん性格がゆがんでいき最後は断罪される。


俺はそんな結末は望まない。


絶対に阻止してやる。



翌日。


俺は両親と朝食をとっている。


俺は、あんな未来を否定するために作戦を立てた。


その第一段階としてまずは自分のスペックを上げないといけない。


そしてブレンダがゆがまないようにサポートもする。


決めたこととはいえオーバーワークじゃないか?


ブレンダ出産時にカーリーを助けるという選択をしない理由は5歳の子供が妹の出産に付き添ってなおかつ、カーリーに対する的確な治療ができると思うか?前世はただのサラリーマンだったんだぞ?


念のためにこの世界の医学書をよんで勉強はするが望み薄だ。


すると、アドルフがふと思い出したように


「そういえば話ってなんだ?」


と言ってきた。


そう、俺はアドルフの側近に頼んで話があることを伝えてもらっていた。


俺の目的はいろんな分野の家庭教師を雇って徹底的に自分を磨くこと。

とは言っても、学習用ポットがあるのでそれで学べること以外。


ポットに入ることで身体能力も強化されるのでなにか武術を習おうと思ったのだ。


実際、適度な運動は体にいいしね。


それに、憧れるじゃん。こういう、武術の達人になるってやつ。


「はい、父様。僕は勇者様みたいに剣術と魔道の達人になりたいです!」


「アランちゃんも憧れたのね~。アドルフの小さいころを思い出すわ」


「おい。やめてくれ


それで、武術と魔道を習いたいんだったな。わかった、手配しておこう。この世界で最高の武術かと魔導士を付けてやる」


「ありがとうございます!」


よし!あとはポットに入って勉強するだけだ!


「そういえば、アランがポットに入るのは今日からだったわね」


「あぁ。そういえばそうだったな。それじゃあ、次にアランに合うのは1年後か」


なんだと⁉


それじゃあ、カーリーを救えない!起きた時にはもう手遅れになってしまう。


「母様、お体には気を付けてくださいね!」


「アランったらもうお兄ちゃんね。ありがとう、アラン」


そうしているうちに、朝食も食べ終わりポットに入る時間がやってきた。


「アランが起きた時にはもう兄か」


「そうね。アランの為にも元気な赤ちゃんを産まないとね」


「「おやすみ、アラン」」


そうして、俺は両親に見守られながら眠りについた。

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