異世界貴族転生記

あかぶ

第1話プロローグ

どうして俺がこんな目に遭う。


血だらけの使い古したスーツと通り魔が落としていったナイフをみていた。


傷口に手を当てようとするが力が入らない。


持ち上げようとする手はやせ細っていた。彼女との結婚のために働きすぎたらしい。


冷たいアスファルトにも血が流れ、汚れている。


「なんで・・・俺が」


傷が痛むのももちろんだか、会社でうまくいきこれからというのに、こんな目に遭うなんて悔しくて悲しくて辛かった。


走馬灯のようなものが見える。


俺はそんなに器用な人じゃなかった。それでも、人より努力してやっと会社で評価された。


昔は努力なんてめんどくさくて続いたことがなかったけど、それでも真面目に生きてきた。


犯罪に手を出したこともなければ、世間一般には善良だと言われるぐらいには真面目に生きてきた。


結婚を約束した彼女もいて、仕事も順調でこれからというのに、、、これから結婚して子供が生まれて、家を買って。


それなのに、通り魔に襲われて幸せだったはずの未来を奪われてしまった。


「あぁ。悔しいな~。これから結婚だったのに。あいつ、泣くだろうな~。約束したのに、泣かせないって。」


「こんばんわ。実にいい夜ですね」


ふと声が聞こえて眼だけ動かすと、おぼろげに見えたのはシルクハットをかぶった人?のような方だった。


見たところ人間の男のような見た目だが、どこか違和感を感じる。


そもそも燕尾服を着ているというのもそうだが、こんな知り合いは俺にはいない。


「なんだ、お迎えか。」


怖がって逃げようと思う気力すらなかった。

痛みにこらえながらそう聞いた。


そんな俺に男は嬉しそうに笑みを浮かべどこか嬉しそうだ。


「お迎え?まぁ近いですね。ただ、もう少し正確に表すとするならば、”案内人”が一番近いでしょうね。」


男は案内人と名乗ると指を鳴らした。


すると家で俺が帰るのを待っている愛しい婚約者が見えた。


おいしそうな晩御飯を作って俺の帰りを待っている。


そんな彼女の姿をみて辛くなる。

そんな俺の様子を見て案内人は心底嬉しそうに話してくる。


「あなたが死んでしまったら彼女、どうなんでしょうねぇ。もしかしたら、あなたを追って自殺するかも。なんだったら彼女の今後の人生が良くなるようにお手伝いしてあげましょうか?」


胡散臭い物言いをする案内人。


俺は正直迷っている。俺のせいで自殺なんてしてほしくない。幸せに生きてほしい。そう思った俺は胡散臭いがこの案内人に頼むことにした。


「ああ、そういうことなら彼女が今後の人生で不幸になることがないようにしてほしい。」


それを聞いた案内に口を三日月のように口角を上げて笑っている。


「そういうことなら、お任せください。その代わりあなたには異世界へ転生してもらいます。」


そういう条件に了承した俺は彼女が不幸になることがないという安心から涙を流した。


「あなたが行く世界は魔法が著しく発達したファンタジー世界だ。人間以外の種族もそんざいし、人の寿命も魔法のおかげで何倍にも増えています。そこで新しい人生を歩んでください。」


あぁ。ありがとう。


案内人は続けた。


「権力者の家に生まれるようにしておきましょう。貴方の次の人生はすべてをもっている勝ち組というわけです。よかったですね。」


そう聞こえると意識がだんだん暗くなり俺は人生を終えた。

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