ミナの想い


アルドとエイミは合成鬼龍に向かいながら話していた。


エイミ「私だって、リナのためになんとかしてあげたいって思うけど、何も手がかりがないじゃない。おばあさんにこれ以上聞くわけにもいかないし。」


アルド「手がかりになるかどうかは分からないけど、これ。」


そう言ってアルドはポケットから何かの切れ端を取り出した。


エイミ「それまさか、、、さっきのご先祖様からの手紙の?勝手にちぎっちゃダメじゃない!」


アルド「いやいや!かなり劣化してたから渡された時に端っこの方が欠けちゃって。たまたまだよ。」


慌てて弁解するアルドを見て、エイミは疑い深い目を向けた。


エイミ「ふぅん。何だかんだ言ってアルドも気になってるのね。調べる気満々じゃない。」


アルド「あのばあさんも心の底では呪いの首飾りに対して疑問を持ってるんじゃないかな。ちょっとそんな気がしたんだ。」


エイミはなるほどね、と納得しその切れ端を手に取った。


エイミ「あれ。さっき気づかなかったけど、触った感じこの紙植物なんじゃない?」


アルド「植物?確かに、手触りが葉っぱぽいな。」


アルドは少し考え込んでから、何か良いアイデアを閃いたように顔を上げた。


アルド「植物ならどこに生えているものかわかるかもしれない。こういうことは俺のじいちゃんに聞きに行こう。」


エイミ「分かった。じゃあバルオキーに行きましょう。」





合成鬼龍に乗った二人はバルオキーの村長のもとへ向かった。


アルド「じいちゃん、元気だったか?」


村長「アルド、わしは元気じゃぞ。それよりわしに何か聞きたいことがあって来たんじゃろ。」


村長はお見通しだと言うように細い目をさらに細めた。


アルド「あぁ、話せば長くなるんだけど、、、」


アルドは事の次第を話し、切れ端を村長に手渡した。


村長「ふーむ。確かにこれは葉の一部のようじゃな。おそらくチャオチャブの葉だろう。」


エイミ「チャオチャブ?聞いたことないわね。」


村長「ふぉっふぉっ。水に弱い珍しい植物だからのぉ。この大陸だとルチャナ砂漠にしか生えておらんじゃろう。水や植物が貴重なザルボーではチャオチャブの葉を紙の代わりにして使っていると聞いたことがあるぞい。」


アルドとエイミは顔を見合わせた。


アルド「それだ!間違いない!さすがじいちゃんだ。」


村長「ふぉっふぉっ。年の功じゃのう。」


エイミ「そうと決まったらザルボーに行って話を聞くわよ!」


アルドとエイミは村長から仕入れた情報をもとに、ザルボート向かったのであった。



エイミ「あつい、、、ここは相変わらず暑いわね。」


二人は当てもなく砂の街を歩いていた。


アルド「このままじゃ埒があかないな。酒場にいって情報を集めようか。」


二人はザルボーの酒場に入った。そこでは昼間から冷たい酒を渇いた体に流し込む大人たちで賑わっていた。


アルド「マスター!少し話を聞いてもいいか?」


マスター「おぉ、この近くのもんじゃないな。何か飲んでいけよ!」


アルドは少し焦って目を逸らした。


アルド「俺は酒飲まないから、ジュースでもいただくよ。それより、呪いの首飾りについて何か知らないか?」


マスター「呪いの首飾り??お伽話かなにかか?」


マスターはアルドたちの飲み物を準備しながら、考え込んだ。


マスター「毎日いろんなお客さんがきて、いろんな話をしていくが、そんな不気味な話は聞かないな。」


アルド「そうか、、、。」


彼は残念そうな顔をしたが、エイミは引き下がらなかった。


エイミ「もう少しよく思い出してみてくれない?先祖代々受け継がれている黒い首飾りを持っている人がこの町にいるはずなのよ。呪いがいい伝えられていて、その、仲間外れにされている人を知らないかしら。」


ガチャン!!


エイミが言い終わった瞬間、店の端で何かが落ちて割れた音がした。それは30代くらいのフードを被った女で、食事をしていたグラスを落としてしまったらしい。アルドはその女性に駆け寄った。


アルド「大丈夫か?すごい落としたけど。」


女性「近寄らないで!」


フードの女は大声を張り上げて立ち上がった。その体は小刻みにふるえている。


女性「どうして知ってるの、、、。」


小さな声でつぶやいたその言葉を、アルドは聞き逃さなかった。


アルド「知ってる?あんた、、、何か知ってるのか。」


女性はハッとしてすごい勢いで店を出ていった。


エイミ「アルド!追いかけるわよ!」


アルド「あぁ!マスター悪い!またゆっくり寄るから!」


マスター「おい!お前たちジュースは!」


マスターは呆気に取られていたが、お金を払わずに出ていった客が三人もいるに気づいて、両手に持ったジュースを悲しげに片付け始めた。


アルドたちが店を出ると、女性がルチャナ砂漠の方に走っていくのが見えた。


アルド「足が速いな、、、。砂漠に女の人が一人で行くのは危ない!エイミ、追いかけよう!」


二人はその女性を追って砂漠へ急いだ。


ルチャナ砂漠の奥、砂嵐が激しくなってきて、アルドとエイミの顔はどんどん険しくなってきた。


エイミ「あの人、どこへいったの??」


アルド「うーん、迷ってないといいけど。」


「きゃーーーーー!!!」


砂嵐の向こうから女の人の叫び声がした。


まさか。


2人は砂風を腕で遮りながら奥へと進む。予想通り2人が追っていた女性が今にも魔物に襲われそうになっている。


女性「もう嫌!!私は悪くないのに、人間には避けられて、魔物に殺される運命なんて!」


アルド「どう言う意味だ、、、?」


アルドは一瞬立ち止まる。


エイミ「アルド!あの人が危ない。行くわよ!」


アルド「あぁ、話は後だな!」


そう言って二人はデザートワームを倒した。


エイミ「あなた、大丈夫?」


女性「えぇ、大丈夫。ありがとうございました、、、。」


アルド「あんた、なんで俺たちから逃げたんだ?こんな奥まで来て、危ないだろ。」


女性はフードを脱いで、えいみの手を取り立ちあがる。


女性「あなたたち、首飾りについて調べていたわね。助けられた恩があるし、話をしましょう。ザルボーにある私の家に来てください。」


アルドたちは女性について村に戻った。

ザルボーのある一軒家に連れられ、その女性はアルドたちに茶をもてなしたあと、腰を落ち着けてゆっくりと話し始めた。


ミナ「私はミナです。改めて命を助けてくれてありがとう。」


エイミ「いいのよ。私たちも驚かしちゃったみたいでごめんなさい。」


ミナは首を振った。


ミナ「いいんです。ただこれから話すことは誰にも言わないでください。私の主人にも。」


アルド「旦那さんがいるのか?」


リナ「えぇ。今は仕事に出ているけれど。首飾りのこと、誰に聞いたか分からないけれど、これは我が一族で守られている秘密なの。」


エイミ「アルド、この人って、、、」


エイミが小声で耳打ちするとアルドは小さく頷いた。


アルド「たぶんリナたちの先祖だな。」


リナ「遠い遠い昔の話よ。まだこの地に緑が生い茂っていた時。その時代、村は表面上は平和に過ごしていたけれど、夜になると魔女によって送りまれた魔物に侵略されることが多々あったのよ。魔女はその村で生まれた娘だったらしいけど、闇の魔術に魅入られて村長たちに危険視され、ついにはその村を追い出されてしまった。それを恨みに思って魔女は村の人たちを皆殺しにしようとしていたんだそうよ。だから夜になると村長は兵士を雇って村の周囲を警備させていたんだって。」


エイミ「そんな、、、ひどい。逆恨みじゃない。」


エイミは怒りで顔を赤くさせた。


ミナ「そうね。ほんとに血も涙もないやつだったみたい。その村に私のご先祖のキナという女性がいたの。キナは穏やかで美しい女性だったみたいだけど、かなり悪い病気をかかえた父親がいてね、医者を探し回ったり薬になりそうな薬草を摘む毎日を過ごしていたそうよ、、、。どこのお医者さんに診てもらっても、父親の病気は全く良くならなくて、絶望したキナは魔女と契約をしたの。父親の病気を治す代わりに、村に入るための警備されていない抜け道を教えるって。」


アルド「なんだって?!」


ミナ「父親を助けたいその気持ち一心だったのね。村は魔物たちに襲われて一夜でメチャクチャになってしまった。村人たちは傷だらけになってしまった。唯一その夜に襲われなかった家はキナとその父親の家だけで、彼女が村の情報を魔女に流したことがバレてしまい、一生迫害されて過ごすことになった。これが魔女と契約した時に、受け取った首飾りだそうよ。」


そう言ってミナが出してきたのはあの黒い首飾りだった。


エイミ「それは!!」


ミナ「あなたたちに言わせれば呪いの首飾りね。言う通りだと思うわ。時が経ってキナも死に、村の人々は裏切り者のことを忘れていったけど、いつこのことがバレてまた迫害されるか分からない。私の祖先は人間の仲間を魔女と魔物に売った罪を代々背負いながら、生きていくことを決めたの。」


話し終えたミナの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。


アルド「祖先を恨んでるのか?」


ミナは涙を拭って答えた。


ミナ「恨んでないって言ったら嘘になる。でも先祖のキナも悪人ではなかったと思うの。このことが知れることが怖くて、私も私の親も堂々と街を歩けない。主人にもこのことは言えていません。しかしこれが私たちの償いなのです。」


そう言ってミナは崩れ落ちた。


エイミ「ミナ、、、そんなことって。おかしい、そんなのおかしいよ!」


アルド「エイミ落ち着こう。ミナ、頑張って話してくれてありがとう。このことは誰にも言わないし、俺たちはミナもそのご先祖たちも悪人じゃないって心から信じてるよ。」


ミナ「ありがとう、、、。」


二人は落ち着いたミナに見送られて、家を後にした。しばらく無言で歩いていたが、我慢できなくなったエイミが口を開く。


エイミ「こんなことって、、、。たぶんおばあさんが持ってた手紙を書いたのはミナよね。こんな話リナにできない。私まだ納得できないよ。」


アルド「俺もだよ。エイミ。」


アルドはそう言ってエイミの肩に手を置いた。


アルド「ミナはその事件が起きたのはまだこの地に緑が生い茂っていた頃だって言っていた。俺たちは伝聞された話を聞くために時空を越えたんじゃない。直接真実を確かめにきたんだ。そうだろ?」


アルドはそう言ってエイミの肩を軽く叩く。


エイミ「わかってる。古代に、サルーパに行こう。」




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