第八階層 資料と試験
そして、ようやく長かった一週間が終わった。
残念ながら、金曜日は資料作りのため在宅勤務なのでダンジョンへは行けなかった。
自室で作業を終えてベットに横になる。
疲れが溜まっていたせいかそのまま寝てしまい、深夜に目を覚ました。
滅多に鳴ることないスマホがメールの着信を知らせている。
寝ぼけつつも、シボシボとした目をこすりながらメールを開く。
「研修者対象:卒業試験受験の連絡」というそこにはギルドからの連絡であった。
飛び起きて、メールの詳細を読む。
寝起きのせいなのか、深夜という変な時間に起きてしまったせいなのか、
少し混乱していたのか分からないが理解するのでに少し時間がかかった。
来週の日曜日、実務試験と筆記試験と攻略者との面談を行うみたいな。
場所は・・・、いつもの研修用のダンジョンではないみたいだ。
駅から徒歩5分ほどのホテルのロビーに集合っと持ち物は・・・。
あっという間に試験日になってしまった。
断った方がよかったのだろうか、でも次いつ受けれるか分からないからな・・・。
なんとも気持ちがまとまらないまま、集合場所のホテルに到着した。
既にホテルのロビーには数人程度人が集まっていた。
20人程度かな、これ全員試験を受ける人なんだろうな・・・。
ほとんどが大学生ほどで二十台前半といった年齢だろうか、各グループ会話を楽しんでいる。
俺を含む中年のおっさんはそれぞれ一人で各々時間を潰している。
ソファーに座りスマホでネット小説を読みながら時間を潰していると、
係の人に呼ばれ本人確認後バスへと乗り込んだ。
このバスは中から周りが見えないようになっている・・・。
そのため今どこにいるのかよく分からない。
乗り込んで1時間ほど経過してようやく試験会場へと到着した。
いつもと変わらないダンジョンの入り口、
名前で呼ばれた順にダンジョンへ入りモンスターを倒して魔石を拾ってくれば良いとの事。
ダンジョン内では各自自由に攻略して良いとの事で、グループで受けに来た連中はそれだけで盛り上がっていた。
若いっていいなぁ。。。と微笑ましい感じで見ていた。
ダンジョン内のモンスターは、定番のゴブリンらしい。
ゴブリンと言ってもかなり小型な方でかつ武器も持っていない個体だ。
さらに裏ではギルドの職員が見守っているから最悪の状況になったら、ギルドの判断でサポートに入ってくれるとの事。
という、事で早速、卒業試験が始まった。
よしっと気合を入れてからかれこれ20分未だに俺の順番にならない。
暇すぎて隣の人と無駄話をしていた。
隣にいるおっさんは、俺と同い年のマサという男、さらにその横にはヒカルという同じ年には思えない童顔のイケメン。
そんな三人で話していたら、マサが呼ばれ「お先に」と言ってしまった。
その後も20分待てど俺の名前が呼ばれない・・・。
ヒカルは先ほど名前を呼ばれて申し訳なさそうな顔で「すいません・・・。」と言いつつ足早にダンジョンへ向かっていった。
俺はいったいいつ呼ばれるんだ・・・。
1時間ほど経過しただろうか、ようやく俺の名前を呼んでもらった。
結局俺が最後だったか・・・。
とりあえず、ダンジョンへと入る。
内部は、研修用のダンジョンよりも人工的な感じがする。
壁も床も平になっており、壁から生えたヒカルキノコ、天井にはうっすらと光る苔が生えているのだろうか薄っすらと光っている。
光源不要と書いてあった理由がわかった。
奥へ奥へと足を進める。
ちょっとは予想していたが、ゴブリンがいない・・・。
最後に出発したおかげでもはやモンスターの気配さえ無い気がする。
(詳しくは分からんけどね。)
試験を受けるにしても落ちるよりかは受かりたい。
そんな気持ちもあったので、少し歩く速度を上げてどんどんと奥へ奥へと進んでいく。
何度か分かれ道があったが音が無い静かな方へと向かう。
まあ、鮮明に音が聞こえているわけではないのだけれど何となくモンスターがいる気がする方へと進んでいく。
20分ほど探索してようやく第一村人じゃなくて、第一ゴブリンを見つけた。
なんかこう、モンスターっぽいモンスターを初めて見るなぁと思い角に隠れながらゴブリンを観察する。
遠目で見てもなんというか、ファンタジーというか、キモイというか・・・。
身体は確かに身長100cmほどなので大きさは小さいけれど、
顔はしっかりとゴブリンなので中々凶悪そうな顔をしている。
少し緊張しつつもゴブリンが俺に背を向けている間にゆっくりと近づいていく。
ゴブリンは、俺の足音か存在か分からないが俺の方へと顔を向ける。
俺が近くに来ていることをはっきりと気が付いたようで、体をこちらに向ける。
ゴブリンは何やら騒いでいるが、今更後には引けないので走り出す。
襲い掛かろうと俺に向かってくるが、俺にはこん棒がありリーチが長いのでゴブリンの頭めがけてこん棒を振り落とした。
ドゴッ!
ゴブリンは地面に這いつくばり、地面に真っ赤な花を咲かせて動かなくなった。
そしてゆっくりと光になっていくのであった。
たった一戦だったが、額と手には汗がビッショリかいていた。
ネズミ型モンスターとは全く感じる事のなかった“死”の緊張感。
そして戦闘の高揚感。
いつも見ているビー玉ほどの魔石よりも一回り大きい魔石を拾い上げ、また奥へと進むのであった。
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