第五階層 上司と後輩、ときどき部下

「やっと木曜日か・・・。」

俺の会社では月曜から木曜日は出勤して金曜日は休日扱いもしくは在宅勤務となっている。


俺は今週の金曜日は休日として申請してある。

今週は金曜日から日曜日にかけてダンジョンへ攻略する予定である。


「先輩は暇で良いですね。俺なんて忙しいから金曜日は在宅勤務ですよ。」

人を見下したような目で俺に嫌味をいうのは福田だ。


「あぁ、そうお疲れ様です。」

こういう奴は相手にしない方が良い。構っただけ損するだけだからな。

どうせ自宅勤務と言いつつネットでサーフィンだろうが。


「朝日野くん、ちょっといいかな」

と、急にクソ上司じゃなくて課長に呼び出された。


「えーと、言いにくいんだけど、君の部下の野原くんは福田の部下に変更するから。」


「構いませんが、理由は何でしょうか?」

自分の業務冴え出来ていない福田になぜ部下が付くんだ・・・。


「ほら君仕事遅いじゃない、君みたいになったら困るからさ。

 福田君に彼を任せた方が成長すると思って。

 まあ、これを機に君も気を引き締めてくれると助かるよ。」


「そ、そうですか・・・。承知いたしました。」


なんというか、呆れて物が言えないとはこの事だろう。

福田の仕事はほぼ俺が代わってやっているのをコイツは気が付いてないようだ。

まあ、俺の業務も減るし良いか。


自分の机に座ると、福田はニヤニヤしながら。

「やっぱ、この部署を担うのは俺でしょ。先輩はゆっくり金曜日休んでていいですよ。」



俺は福田の話も誰にも挨拶もせず、無言で会社を後にするのであった。



―翌日―


「クソがぁーー!!」

始発の電車に乗り、誰よりも早くダンジョンに入って、

ネズミ型モンスターにありったけの不満を込めてこん棒を叩き込んでいる。


「誰のせいだと思ってんだクソやろうが!!」


朝一でダンジョンに入ったおかげかネズミ型モンスターがうじゃうじゃと俺に群がってくる。


「クソな後輩、クソな上司っ!!クソな部下がぁーーー!!」


魔石を拾うのも忘れ一心不乱に群がるネズミ型モンスターを叩き潰していく。

こん棒を振り上げては振り下ろす。

鈍い音と男の悲痛な叫びがダンジョン内に響き渡っていた。



「ふぅふぅ・・・。」

何分立ったのだろうか、群がってくるモンスターがいなくなり少し気が晴れた。

息を整えつつ落ちている魔石を拾う。


拾い終えると、壁に置いておいた小さなリュックから飲み物を出し喉を潤す。


にしても、イライラしていたとは言え短時間で結構なモンスターを倒したな。

既に魔石を入れている袋がずっしりと膨れはじめていた。


もう少ししたら休憩がてら一度ギルドに戻るか・・・。



「研修生33番の方ですね、手数料を含めまして18,000円ほどになります。」


まだ昼前だが、なかなかの収穫だった。

ホクホク顔でギルドの隣にある、食堂へ向かう。

流石に酒類はないけど、簡単な食事ならとれるようになっている。

ダンジョン入口にあるので、かなり割高だけど今日は午後も攻略をするので少し奮発をするか。


定番のギルドカレーを腹に入れ1時間程度休んで一度ダンジョンへ向かった。

明日は弁当でも持参していこうかな・・・。

そんなことを考えつつ午後は少しペースを落としてストレス発散をするのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る