第四階層 アパートと半額シール
電車に揺られること30分、少し寂れてはいるが利用客も多く賑わっている駅に到着した。
最寄り駅からからアパートまで徒歩20分。
少し豪勢な食事になりそうだ・・・。
と、一人ニヤニヤしながら家の近くのスーパーへ向かう。
生活にあまり余裕はないけど、ダンジョンへ行った帰りには自分へのご褒美として少し豪華な夕食をとると決めている。
通い慣れたスーパーへ入り、お惣菜コーナーへ向かう。
ただ、まだ少し時間が早かったようだ。
まだ、狙っている物がない。
いや、今からだ・・・。
そう、俺の狙いは「半額シール」という俺を魅了する悪魔
仕方なく時間潰しにほかの場所へ移動する。
ビールと発泡酒を迷い、結局発泡酒を買い物かごへ入れる。
男一人暮らしの生命線であるカップ麺と袋麺もついでにと籠へ放る。
数分後、半額シールを貼る店員さんが奥へと戻るのを確認し、足早にお惣菜コーナーへ向かう。
既に強者たちが群がった後のようで、一番人気の日替わり肉弁当は既になくなっていた。
仕方なく日替わり焼き魚弁当、今日はサバの塩焼きと
野菜サラダ、そしておつまみ用の焼き鳥を手に入れホクホク顔で会計に向かう。
アパートに戻り、発泡酒を冷蔵庫へ入れてからシャワーで汗を流す。
1Kで少し手狭だが、駅から徒歩15分、スーパーは徒歩5分という立地と身の丈にあった家賃でもうかれこれ5年以上は住んでいる。
シャワーを浴び終え、発泡酒を流し込む。
「ぷっはぁーー。」
今日一日の疲れを癒すように発泡酒をあおり、半額弁当とお惣菜で少し豪華な夕食。
しがない30才を目前にしたおっさんの夕食は始まったのだった。
「この資料、先週言った通り作ってないよ。やり直し。」
偉そうに俺の作った資料に難癖をつけてくる上司。
「いえ、先週はこうするように指示されましたので指示通り作ったのですが。」
毎度の事ながらイライラさせられる・・・。
そもそも、指示がブレブレだから何度もやり直しているんだけどな・・・。
昨日言ったことを忘れて、今日の思い付きで指示を出して喚くのはやめてほしい。
「はぁ?言い訳なんてしてなでとっとと直してきて。」
「承知しました・・・。」
返事をして自分の机に戻る。
「先輩あの仕事まだ終わってないんですか?まったくいつまでたっても遅いですね・・・。」
目の前に座っているのは後輩の福田。
「あぁ、ちょっと立て込んでてな。」
そもそも元はと言えば福田の仕事を代わりにやっているんだが。
この働かない後輩へ回されるはずの業務はほぼ全て俺に流れてくる。
福田は自分に仕事が回ってこないことをいいことに、
ほぼいつもネットという大海原でサーフィンをしている。
たまに回ってくる仕事も結局終わらずで最終的に俺に回ってきて納期遅れの責任を押し付けられる。
責任だけ押し付けて手柄は自分にするのだから恐ろしい限りだ。
しかも、こいつの凄い事は自分は出来ているという謎の自信と、自己評価が超高得点だ。上司も表面だけ見て判断をしており評価は高い。
なので、なんやかんやこの会社に居座っている。
「野原さん、おはようございます。先週から頼んでた資料は順調?」
隣に座っている部下である野原へと挨拶がてら進捗を確認する。
眼鏡をかけ少し出っ歯なところがチャーミングポイントだ。
去年から俺の部下になってパッと見は真面目そうなで誠実そうな新人なんだが・・・。
「いえ、まだです。」
自信なさげに申し訳なさそうに言うので、やんわり再度指示を出す。
「そっか・・・、いちよう今日までに形だけでも終わらせてくれればいいから。」
一週間もあったのになんでなんもしてないんだよ・・・。
真面目なんだけど、なぜか俺の指示した事はやらずに違うことをやるんだ・・。
結局俺の責任になるのだからもう少し指示通り動いてほしい・・・。
俺の指示がダメなのだろうか、理解できん。
「はぁ・・・。今週も厳しくなりそうだな。」
そんな月曜日から憂鬱なスタートをきったのであった。
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