量産した方が良さげかね




 ブーメランの大きさは大体俺の拳三つ分、30㎝くらい。


 玩具としてはちょうどいいサイズ。


 一方で木製エックスジャイロは握ると指が少し余るぐらいのサイズ。


 子どもが遊ぶとするならもう少し小さくても良いかもしれんがコレは試作品なのでまぁいいだろう。


 作ったばかりの竹ブーメランをゆっくりと振り上げて軽めに力を込める。




「ほいせっ」




 掛け声と共に縦に持った竹ブーメランを振り下ろし、手から解き放つ───風を切り裂いた。


 空気を切り裂き、こじ開け突き進むかのようにぐんぐんと飛距離を伸ばして旋回していく。


 うん、問題無さそうだ。久しぶりにブーメランなんて作ったけどちゃんと飛ぶな。




「ほぉ……」




 軽やかに空を舞うそれを見てヴァルカンさんが感嘆の声を漏らす。


 何かアイデアでも浮かんだのだろうか、その紅蓮の目は少し楽しそうだった。




「おいしょ───うん、大丈夫そうだな。こんだけ飛べば問題無いだろ」




 無事に自分の元へと返って来たそれを両手で挟み込むように受け取り、一応確認しておく。


…何処も壊れたりはしていないな。よしよし。




「次はコイツだな。シラタマ、コレで遊んでて良いぞ」




「にゅっ!」




 お次はエックスジャイロの番。


 竹ブーメランをシラタマへとパス。


 はっし、とそのもふもふの両手でそれを受け取る。


 とりあえずヒマを潰して置いてくれたまへ。




「コレばっかりは作った事が無いからなぁ…」




 牛乳パックでも有れば良かっただろうが無い物は仕方ない。


 とりあえず投げて見るしかない。




「ソイツが一番気になるなぁ…ソイツも飛ぶのかい?」




「飛びますよ。上手く出来てれば。返っては来ませんかがね」




 ブーメランと違い、コレは投げっぱなしの物だ。


 どうなるかは分からんがなるようになるべ。




「そんじゃあいきまーす」




 鉛を塗って重くした方を前にして鷲掴みにしてピッチングのように構える。


 カーブを投げるようにスピンをかけて───




「ほいせっ」




───投げる。




「おおおおおおお……!!」




 その光景を見てヴァルカンさんから声が溢れる。


 解き放たれた木製エックスジャイロは真っ直ぐ───一直線に空を切り裂く。


 そしてソレは村の外へと───




「やべっ。飛び過ぎた」




───消えて行った。大成功で大失敗である。


 さよーなら、エックスジャイロ。







「いんやぁ驚いた。そこまで飛び続ける物がこの短時間で出来るたぁねぇ」




「空気の流れを利用して飛ばす物なんですよ。詳しくは専門家でも無いんでいえないっすけど」




 俺も初めて見た時は驚いた。


 仕組みは単純だがあそこまで飛ぶんだなぁと。


 まぁ、今回は飛び過ぎたが。この肉体だとなんでも初めてが多すぎてのぅ。




「作りは覚えたから改良と量産は任せな!アレなら大人どもの武器にもなりそうだからよー」




 さーて、どの素材で試してみるかーと楽しげにヴァルカンさんは呟いて手を振りながらその場を後にする。


 ありがとうございましたーとお礼を言いながらそれに答えると「良いって事よー」と振り返らずに返してくれた。


 うーん、いいおっちゃんだ。……武器って、そうか。この世界にはそう言う考えにも行き着くか。




「さて、修行の再開でもしますかね…シラタマ…お前随分と楽しんでるな」




 ふとシラタマの様子が気になって見てみると、回転させた竹ブーメランを頭上でぽいんぽいんとリズム良くヘディングさせ続けて遊んでいた。




「にゅ?」




 へ?ととぼけた顔をしながらシラタマがヘディングを止めると、反動の残った竹ブーメランが弾みと回転を失い、ぽしゅるると止まる。


 可愛い。




「カナタ兄さんこれなぁにー?」




「飛んで来たから拾って来たぁー!」




 あらやだ可愛いのが増えた。


 とててて、とたたたと駆け寄ってくる小さなもふもふ達がわちゃわちゃ。


 村の外へとぶっ飛んで行ったエックスジャイロをヴァイン君率いるちびっ子達が拾って来てくれたようだ。


 壊れて居なくて一安心。


 結構遠くに飛んでた気がするが気にしない。


 獣人の子どもの体力は半端ないのだ。




 ちょうど良い、今日はこの出来たての玩具で俺が遊んでやろう。




「よーし、この作った玩具でみんな遊ぼーかー」




「「わーい!!!」」




 素直で大変よろしい。


 息抜きにもなるし今日は修行はいいか。


 子ども達の体力を考えればむしろ修行になりそうだ。







「それじゃあこの筒を最初に取って来た子にこのブーメランを試せる権利をあげよう」




「「はーい!」」




「じゃあ行くよー…そうれぃっ!!」




「「わー!!!!」」




「さて、その間にもう一つブーメランを……」




 あー!!おじちゃん!取っちゃダメぇ!!


 それ僕たちのー!!!


 ぐはははっ!面白いのが飛んで来たぜ!───あいだっ!


 バカたれ!子ども達のをアンタが取ってんじゃないよこの愚弟!!




 ああ、方向が悪かったみたいだ。


 というかヴィレットの奴こういうの興味あるのか?


 ヴァルカンさんの言う通り【大人用】も必要かもしれんな。




 やめろ姉貴っ!!動きを止めるのは…ぐはははっ!!!


 さぁ思う存分くすぐってやりな子ども達。


 アタシがバッチリ抑えとくよ。


 かかれー!


 とつげきー!


 ぐあああああっ!




「平和だなー。そんでアイツくすぐりに弱いのな」




 意外な弱点だ。そしてヴィレットの動きを止めれる姉御流石ですわ。


 やったれ子ども達、俺も許す。むしろもっとやれ。




「さぁ、ブーメラン作るかシラタマ。手伝ってくれ」




「ふにゅっふー」




 うむ、平和だ。




────────────

カナタ


「平和でええのうシラタマさんや、ほいパス」



シラタマ


「ふにゅー♪」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る