目覚め
───解放サレタ……!…我ラノ呪縛ガ解放サレタ……!!
───オオ、目覚メヨ
───我ラヲ抑エラレシ
───我ラノ【主人】ノ為ニ!…今コソ!成長ノ時ハ来タ!!!コノ五体ト五臓六腑ニ我ラノ本来ノ
…
なんか良く分からない夢を見た気がする。そもそも夢だったのかあれは?
「……んぬぅ。眩しい」
顔面に浴びせられる暖かな光に顔を歪ませ、目をゆっくりと開く。
ああ、そうか。いや、分かっていても言わねばならない気がする。言わねばならぬのだ。
「…知らない天井だ」
一度やってみたかった。後悔はしていない、寧ろ清々しい気分である。
「…ふにゅ〜……」
もぞもぞとベッドの中から毛玉もといシラタマが寝惚け眼で出てきた。凄く可愛い。
コイツを抱き枕にして寝てみたがやばかった。秒で意識飛ぶ。心地良すぎて。一家に一台シラタマくん。
なんだこのもふもふかつ、ふにふにでぐんにょんぐにょんの癒し枕は。
寝るモードに入ると通常はある弾力がくてくて枕になるのは反則ではないか?許せる。
「おはようシラタマ。腹は空いたかね」
「にゅっ!」
びしぃ!と効果音でも尽きそうな勢いでシラタマは手のような物で敬礼をした。
ゆるみ切っていた表情は既に無い。欲望に忠実で大変よろしい。
そしてどこで敬礼なぞ覚えた。お前さん魔物じゃろうが。
なお、洞窟内で沢山取っておいたキノコは既にシラタマによって喰い尽くされている。恐ろしい子……!!
「とりあえずアルの元に行くとするかね。メシメシ、腹減って死にそうだ。昨日あんだけ食ったのにどこへいったやら」
「ふにゅふにゅ」
立ち上がろうとする俺の頭の上にシラタマはぴょいーんと飛び乗る。
どたまに感じるふんにょり弾力。既にお前の定位置はそこか。
…
「ああ、おはようカナタ。軽食にするかい?それともガッツリ食べるかい?」
既にアルは起きていた。お早いですね。
「ガッツリ食いたい。なんか知らんが腹減って死にそうだ。昨日あんなに食ったのが嘘みたいだ」
起きてからの凄まじい空腹感が止まらない。こんな事は初めてだ。学生時代でさえここまで空腹感が来ることなんてないのに。
ぐおお、と唸り声にも聞こえかねない我が胃袋の欲求に思わず手を当てていた。
「死にそうなくらいか。今用意するからテーブルに着いて待っていてくれ。…こりゃ大物が目覚めたようだね……」
「あいよー。あー、腹減ったー」
アルが最後になんか言っていた気がしたが腹が減り過ぎて良く聞こえんかった。まぁ、大した事じゃないだろう。
…
「うむ、腹半分って所だな。…俺の身体はどうしてしまったんだ……」
山のように積み重なる皿たちを見て思わず白目になった。
いくら食っても全く太らない体質だったけどこれは異常だ。物理法則ガン無視状態なう。
「…カナタ。今朝に夢は見たかい?」
不意にアルが聞いてくる。食い過ぎて怒られるかと思ったジャマイカ。
「夢ェ?…それと関係あるのか?」
「ああ、凄く重要な事だ。夢の内容は全て覚えてる筈だ。全部話してくれ」
……マジな顔してる。おふざけは許されないらしい。
脳内に一瞬浮かんだ魚雷の姿をした教師を思い浮かべてすまんて。
分かる人だけ分かれ。
…
「……確かにそう言っていたんだね?」
「ああ、間違いない筈だ」
「……だとするととんでもないぞ。いやでもしかし……」
朝に見た夢の内容を包み隠さず話すと、冷や汗を浮かべながらアルは自分の世界に入り込んだ。
待て待て、置いてけぼりだってばよ。俺に詳しく教えてクレメンス。
「そうは思わないかねシラタマよ」
「にゅ?…にゅっ」
首を傾げるように少し考えた後、とりあえずイエスと答えた様だ。可愛いから許そう。
「そろそろ俺にも教えてくれないかアル。こっちはさっぱりなんだが?」
「ああ、済まない。少し想定外過ぎて思わず動揺してたよ」
想定外…ね。また【例外】なのかね俺は。
俺の人生は少し特殊だった。【不運】過ぎるのだ。
例を挙げるとキリがないが、簡単に例えるならばそうだな。百個中に一つ当たりがあるとしよう。
当たりが出ずに最後の一つが残り、当たりが確定してる筈のソレは不良品で限定生産の為に替えは存在しない。
それを引くのが俺だ。そしてこの不運は連続する。それも……本人が嫌がる形で。
「カナタ?大丈夫かい?」
「…おう、大丈夫だ。ちょっとぼーっとしてたわ」
そんな俺の様子にアルが声をかける。いけねぇいけねぇ。
まぁ、いずれ何処かで話す事がくるだろう。今は忘れる事にしよう。
────────────
カナタ
「まだ食えるぞ。ブラックホールかわしゃー。うめー」
シラタマ
「もきゅもきゅ」
アル
「……これは…驚いたな」
次のページは簡単な人物紹介になります。
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