恩着せがましいホラー映画
母は恩着せがましい人だった。仕送りをくれる度、お金を送っているのだから私の言うことを聞きなさいと言ってくるような人だった。お金を貰わなくていいようになれば、もう言うことは聞かなくて済むのだろうか。早くそんな身分になりたかった。
母は父の浮気を確信していたが、父は浮気などしていなかった。母は風呂に入るとき電気を消していた。暗い風呂場に水音が響いていた。何かにつけて恨み言を言った。
母が死んで数年。映画館でホラー映画を観ると、映画に母が出演していた。そんなはずはないのだけど、どこからどう見ても母だった。「私の言うこと聞かなかったでしょ。仕送りのお金を返して」という台詞は明らかに僕に向けられたものだった。「怖がらせてあげたんだから、寿命を頂戴」とも言われた。怖かった。
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