たずねる

紫と白のグラデーションの風呂敷を背負ったお婆さんが坂道を上って来る。途中で腰を下ろして息をつく。

「どうしたんですか?」と尋ねてみる。

「いや、届け物なんだが、腰が痛くてね」

「よかったら持ちましょうか」

「いや、いい」

お婆さんは立ってまたヨタヨタと坂を上る。じゅうぶん休めたのだろうか。気になりながら私は坂を下る。


用事が済んで家に戻ろうとしたとき、あの坂でお婆さんとすれ違いそうになる。紫と白のグラデーションの風呂敷を背負っている。届け物ではなかったのだろうか。

「大丈夫ですか?」と声を掛ける。

「ああ、あんたかい。いや、大丈夫。何も問題ない」

「さっき届け物って言われてたと思うんですけど、ご用は済んだんですか」

「気にしないどくれ」お婆さんは坂を下る。

そう言われると余計気になる。風呂敷の中身は何なのだろう。気になりながら私は坂を上る。


家に帰ると、玄関先に風呂敷包が置いてあった。紫と白のグラデーションだった。お婆さんの包みそっくりだった。これがお婆さんの届け物だったとしたら、さっき帰りに持っていた風呂敷包は何なのだろう。持ち上げるとずっしりと重かった。足はひとりでに坂の方へ向かっていた。


あんまり重そうにしていたからだろう。途中で誰かに尋ねられた。

「大丈夫ですか?」

「あ、はい。届け物なんです」

「よかったら持ちましょうか」

「いえ、結構です」自分の意志ではなく勝手に返事してしまう。さっきのお婆さんもそうだったのだろうか。どこを訪ねるつもりなのか風呂敷に聞きたかったが、その自由は私には残されていないようだった。

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