生乾き

チリーン、チリーン。どこからか鈴の音が聞こえる。僕は虫取り網を持って、竹藪の方に飛んで行ったクワガタを追いかけていた。虫かごには今日捕まえたセミやカブトムシがいっぱい。竹藪に入ると鈴の音が大きくなった。耳を澄ましてみる。どうやらそれは、地面に生えた竹筒の中から聞こえて来るようだった。


「おーい。誰かいるのかー」竹筒に向かって叫ぶ。

チリーン、チリーンと音がするが、返事はない。

「あのさー、こっちに大きなクワガタ来なかった?」

チリーン、チリーン。

「今日ね、沢山虫が取れたんだよ。セミでしょ、それからカブトムシ」

チリーン、チリーン。

「いま見せてあげるね」竹筒の上に虫かごを持っていく。

チリーン、チリーン。

「見えにくいかな。これでどうかな」虫かごの虫を取り出して竹筒に放り込む。

チリーン。もががが。

「なんだろう。何かいま声がしたみたい。やっぱり誰かいるんだ」

チリーン、チリーン。

「じゃ、これでどうだ」次々に虫を放り込む。竹筒の中におしっこをする。

チリーン、もがが、もがががが。ぐえっ。地面が揺れる。


地面を割って、何かが飛び出してきた。僕は目をつぶって念仏を唱えた。何も起こらない。薄目を開けると生乾きのミイラが、僕に大きなクワガタをさしだして頷いた。

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