遅刻
親から大学の卒業式の日を聞かれた。
「えー。来るの?」
「当たり前だろう」
「しょうがないな、ちょっと待ってて」
日付を調べて、親に伝える。
「よし。わかった。その日は休みを取ろう。母さん、母さんも大丈夫か。――うん。じゃあ、よろしく」
「もう。来なくていいのに」
当日、両親がやってきた。
「散らかしてるな」
「これでも結構片付けたんだけど」
「母さん、ちょっと片付けてやってくれ。俺はこいつを散髪に連れて行く」
大学の生協のとこの散髪屋。意外と閑散としている。
「今日はこいつの卒業式なんですよ」親父がうきうきしながら散髪屋の人に言う。
髪を切って、さっぱりした。三人で卒業式会場に行く。誰もいない。
「どうしたんだろう」
大学の事務に問い合わせると、1週間前に卒業式は終わっていた。
「え、でも、ネットで今日が卒業式だって」
「あー。それ、去年の日付じゃないですか?」
とりあえず、証書だけはもらえることになったが、父親に言われた。
「うーん。けっこうあれだな。遅刻しちゃったみたいだな」
あとで妹にさんざん笑われた。
それから1か月もしないうちに、妹が専門学校の入学式に遅刻した。2つの学校を受験したのだが、間違って合格していない方の学校を訪ねてしまったのだ。
「いやさ、学校の名前、似てるんだよね」と言い訳をしていた。笑うに笑えなかった。
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