ヘルメット

「防災ヘルメットの耐用年数って何年なんだっけ」

「5年かな」

「え、じゃあ、これ切れてない? 耐用年数」

「あ、そうか。前買ったの、震災の直後だったもんね」

「もしかしたら、これ全員分そうなんじゃ……」

「まあ、5年過ぎたらすぐにダメになるって訳じゃないんだろうけど」

「どうしよう。今年、予算取ってないよ」

「予算がないとしても更新しとかないとまずいかな。もしものとき、耐用年数が切れてたってことになると、問題でしょう」

「仕方ない。常務に相談しよう」


ヘルメットを更新した次の日、地震が起きた。


「おお、地震だ。みんな、ヘルメットをかぶって机の下に隠れるんだ」

「揺れが激しい。みんな、大丈夫か」

「はい」

「いや、しかし、ヘルメットを更新しておいてよかったよ」


揺れが収まって、点呼を取る。

「課長、新入社員の高橋君が」

「何?」

高橋が戸棚の下敷きになってうめいている。意識がない。救急車を呼ぶ。

「高橋の血液型は分かるか」

「ああ、それならヘルメットに」

「そうか。ヘルメット」

「……書いてないですね」

「ああ、そうか。まだ書いてなかったのか。ヘルメット交換するの、もう少しあとにしておけばよかった」

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