第10話 親は傍観者ポジらしい
結論、親は反対してくれなかった。
あんたのことより向こうのお二人さんの方が心配で、全然あんたのことなんかこれっぽっちも心配してないんだからねっ、とツンデレみたいなことを言い出す母親だった。
旅行の軍資金に関しても、なぜかいきなり5万円渡された。母親曰く、仮に自分が部活動をしていたら、最低でも年間でこれくらいかかるというのだ。
帰宅部は金がかからないからな。その理屈はわかる。だが、いつでも部活に入れるように用意してくれていたとでもいうのだろうか。ちょっと意外だった。
中2まではサッカーをやっていた。だが、涙が止まらなくなったせいで辞めた。当時は、何で泣くんだろうとそればかり考えていて、部活動どころか学校にも行きたくなかった。
「丁度良い機会だから、バイトでもしたら?」
「バイトして返せっていうのかよ」
「違うから。修学旅行でかかる自分の小遣いくらい、自分で捻出しなさい」
修学旅行まではまだ5ヶ月程時間がある。短期バイトでもいいから少しずつやればこの5万円は返せそうだ。
「泊まりは止めないのかよ」
「うん。だって誘われたって言ったでしょ?向こうが良いなら別にいいわよ。あんた、モテ期でも来たの?」
「それって誰にでも来るものなのか?」
「まあね。例え勘違いだとしても、2人以上の異性に詰め寄られたらモテ期ね」
「お母さんにもあったのか?モテ期」
「あったわよ。結局、1番つまらない人を選んじゃったけどね」
自分の息子にあんたの父親はつまらないと言い放つ母親。なぜだか俺自身に言われてる気がする。
「でも安心して。あんたが突然学校サボっちゃった時あったでしょ?あれはわたしの血だから。そういうところは、目を瞑ってあげる」
「じゃあ、今回の泊まりは、ほんとはダメだけど見逃してくれるってことか?」
「だから、向こうが言ってきたんなら乗っかりなさいよ。どっちが好きなのか知らないけど」
「は?希依夏はない」
「どうして?可愛いじゃない」
「なんつーか、あいつは放っておけない妹みたいな感じだから、それは好きなのとは違う気がする」
「ふーん。じゃあなんでコソコソと自分の部屋で逢引きしてるの?」
「んなっ!?ち、ちげーよ。あいつは俺で遊んでるだけだって。泣き虫のおもちゃって言われたことあるし」
「そう?それにしては最近、きいかちゃんはゆめちゃんが用事でいない時は必ずうちに来るけど、それでも遊ばれてるだけだと思うの?」
「ぐえっ」
変な声が出てしまった。
確かにそうである。希依夏のお医者さんごっこは夢花がバイトを始めてから回数が急激に増えた。
でもあれ?ちょっと待てよ?
「今日は希依夏、まだ来てないよな?」
「この後ゆめちゃんが来るんでしょ?じゃあ一緒に来るんじゃない?」
「そうか」
「あまり2人セットでうちに来たことないわよね?まぁ、理由は察するとして・・・」
「どっちも呼ばなくても来るからな。鉢合わせしてもおかしくないんだけどな」
「それは無いと思う」
「え?なんか言った?」
「いいえ〜。特には〜」
なんなんだよもう。
「普通止めるだろ。親なら、止めてくれよ」
「きいかちゃんを見てる限りでは、止められないわよ。あ、でもゆめちゃんに誘われたんだっけ?絶対根に持ってると思うわよ?」
「は?何をだよ?」
「それぐらい、自分で考えなさい?」
くあー!!わかんねぇよ!これでも夢花には細心の注意を払ってるんだ。希依夏とは普通に過ごせるんだけどな。
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