第22話 会談
レオが手に魔法のまぶしさに目を細めていると、一瞬で風景が変わる。
それは宮殿のようであったが、バッヘン王国とは異なる建築様式のものだった。
「さぁ、到着したぞ。ここがエンジア王国だ」
そう国王がいう。
その証拠に、正面に人々が集結している。
「バッヘン王国の皆様、ようこそエンジア王国へ。私が国王のドルシア・R・エンジーです」
そうエンジア国王自らじきじきに挨拶する。
「これはご丁寧にありがとう、エンジー国王。緊急の申し出によく対応してくれた」
「いえいえ、緊急事態であるがゆえに、応対するのは当然の摂理。我々とともに問題を解決いたしましょう」
そういって国王同士、会談に入る。
レオはその会談に参加することができた。
「さて、早速本題に入るとしよう。先日通達したように、現在我々の世界はある浮かぶ鋼の船によって脅威に晒されている。これにより、我が国はおろか、周辺国家にまで危機が迫ろうとしている。エンジア王国には、これに対処できる最新の兵器があると聞く。その兵器を利用して、我々に加勢してもらうことは可能か?」
「それは最新兵器、エンジア砲のことだろう。エンジア砲は魔術と科学を融合させた特大兵器である。仕組みも複雑であり、おいそれと動かすことは困難だが、我々の世界が危機に瀕しているというのならば、これ以上に使わない手はないだろう」
このような話が続いていく。
(つまりどういうことだ?)
こういった会談では話が長くなりやすいため、レオは話の内容がさっぱり入ってこない。
そこでメモ用紙を取り出して、要点を拾い上げることにした。
すると会話の内容は以下の通りになる。
『この世界がヤバい。エンジア王国にある最終兵器出してくれない?』
『エンジア砲のことだね。もちろんいいよ』
こんな具合だろう。
その後も会談は続いていき、バッヘン王国が目標としていた合意に動くことができた。
そして参謀級の会談も同時に開催され、今後の作戦行動などを話しあう。
その間に、レオはこの国にいるエージェントと会うことにした。
約束の場所で待っていると、ある男が近寄ってきた。
「レオ・ロイドですか?バックス・オードです」
「初めまして、レオ・ロイドです」
なんとも日本人らしい挨拶をかわす。
お互い、偽の記憶が日本人で作られていることもあり、こうして礼儀作法が成り立っているのだ。
「オードは仲間はいないんですか?」
レオが不思議そうに質問する。それはバックス・オードが一人でこの場所にやってきたからだ。
「仲間はいますよ。自分は魔術と科学を融合させた技術関係の工房で働いているので、来れないだけです。もともと偽の記憶も技術関係のものだったので」
「なるほど。となると、もしかして今回の作戦では前線に出ることもあるってことですか?」
「可能性はあります。エンジア砲の保守点検要員として駆り出さる可能性は否定できませんのでね」
「そうなんですか。こっちは必ず前線に出なくてはいけないので大変ですよ」
そんな会話を二人はかわす。
「これから大変になるでしょうが、お互い頑張りましょう」
「そうですね」
そういって二人は別れる。
その後、丸一日使って、集中的に会談は続けられるのであった。これは必要なものをすべてやってしまおうという思惑から動いているものだ。
こうしてエンジア王国とは共闘関係にあることを確認したのだった。
「良い時間だった。作戦開始時には真っ先に連絡を送る。その時までよろしく頼む」
「わかっています。では」
そういうと、バッヘン王国一行は転移魔法を使って一度バッヘン王国へと戻る。
そして荷物を取り替えるために、一日休憩をとることにした。
この休憩が終了すれば、再び周辺の国家に転移し、再び会談をすることだろう。
なかなかにハードなスケジュールをしている。
そして一日の休憩をはさんで、バッヘン王国一行は再び転移魔法で別の国家に移動するのであった。
こんなことを繰り返し、5か国目に行こうとしていた。
「次の国家で、この大陸は最後だったな」
「そう、意外とハードだった」
「私たちはついていくだけだけど、それで仕事をしている人はもっとハードだよね」
そんなことをレオたちは話している。この日は4か国目のスケジュールをこなし、休憩に入っているときだった。
「しかしあれ以来遠藤さんから連絡が入ってこないし、大丈夫かな?」
「エンドウって、一応私たちの味方をしている人だよね?」
「そう。忙しいのかな?」
そんなときだった。
レオのマイクロチップに連絡が入ってくる。
その相手は遠藤ノノである。
「もしもし、遠藤さん?」
『……しレオ?ちょっ……大変なことが起きて……』
その通信はノイズ交じりで、うまく聞き取れない。
「どうかしたんですか?遠藤さん?」
『革命……奴ら、計画を変更……みたい。……ジ国の侵攻を……ようだわ。それに……まで手を出して……を妨害しよう……わ。この通信もどこ……わからない』
「遠藤さん?通信状況が悪いですよ?」
『とにかくア……国には行かない……よ。もしかしたら……の攻撃に巻き……可能性があるわ』
「遠藤さん?」
『一方的……してしまったけど、忠告……わ。アリ……には行かないで』
そういって一方的に通信は切れてしまった。
「どうしたの?レオ」
「いや、今遠藤さんから連絡があったんだけど、どうも要領を得ないというか、ノイズがひどくて何を言ってるのか分からなかったんだよ」
「何か変なことでも起きているのかな?」
「そうかなぁ?ただどこかに行かないように忠告はしていたようだけど……」
しかし内容がまったく聞き取れない上に、その意味を見出すことができなかった。
とりあえず、レオはこのことを記憶の隅に留めておくことにした。
そうして休憩が終了し、次の国家に向かう時間になった。
「次でこの大陸では最後だ。最後の国家はアリージ国である。この国は戦闘民族が主に占めている。会談は難航するかもしれないが、それでも頑張っていこうではないか」
そう国王が言う。その言葉に、一行は気を引き締めた。
「では行こう。転移魔法を」
「はい」
そういって転移魔法を発動する。
そして転移した。
その瞬間、ひどい熱波に襲われる。
「あっつ!」
思わず目をつむったが、その熱波が止むことはない。
レオは薄目で周辺を見てみると、そこは火災の真っ只中であった。
「どうなっている……!」
護衛団に守られる国王も困惑している。
その時、レオのマイクロチップに反応した。
「この感じ……、調査船が近くにいる!」
そういってレオは上空を見上げる。
するとそこには、空に浮かぶ鋼鉄の艦があった。
「まさか、この国は敵の手によって攻め落とされたあとだというのか!」
国王が上空を見上げながらそういう。
そして叫んだ。
「今すぐ王国に戻るのだ!早くしろ!」
そういって魔術師が魔法を詠唱する。
その時、調査船の主砲が地上に向き始めた。
「まずい、こっちのことに気が付いた!」
こうなると、詠唱が先に終わるか、主砲が発射されるかの極限状態である。
詠唱はまもなく終わりそうだ。
だがその瞬間、主砲が発射される。
転移魔法が発動し、光り輝いた。
そして主砲が弾着する。
主砲が弾着した跡には、何もなかった。
その前に転移魔法が成功したのである。
「……生きてる」
レオが確認するように、声を出す。
その瞬間、国王一行は溜息をするように、安堵する。
「しかし、アリージ国があのような状況になっているとは、予想していなかったぞ」
そう国王が言う。
「それだけ時間が残されているわけではないのだな」
続けてそういった。
時間がない。それは調査船との決戦も近いということである。
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