第21話 会議
王宮には、すでに対策室のようなものが講じられており、調査船との戦闘を見据えた用意を施している。
そんな中、調査船とレオの関係はどうなのかと言った情報を共有するため、レオは対策室の公務員と話をしていた。
「……というのが、調査船と自分の関係です」
「なるほどねぇ。しかし我々の世界とは違う世界があるとは驚きだよ。その地球……だっけか。それは我々とは比べ物にならない程の技術力を保有しているようだね」
「まったくです。自分もこの偽の記憶がなければ、にわかに信じることは出来なかったでしょう」
「とりあえず、敵のことについては分かった。あとは、奴の弱点とか分かれば……」
レオは調査船の弱点なども話をする。
「なるほど。しかしこう、口頭で言われても理解しがたいことはあるもんだねぇ」
「そうですね」
「とりあえず話は分かった。あとは残りのエージェントに連絡を取り続けてくれ」
「分かりました」
そういって公務員は去っていく。
「さて、自分の仕事を始めますか」
そういってマイクロチップから残りの現地徴集エージェントに連絡を取り続ける。
この作業は順調に進んでおり、今のところ全員が調査船に対して敵対的な印象を持っていることが判明した。
これは遠藤が調査船に反感を買うように仕向けた結果なのかもしれない。
「けど、そう考えると、保守軍と革命軍でやっていることは同じだよなぁ……」
そう、もし遠藤の言っていることが本当ならば、革命軍はこの惑星を乗っ取ろうとしている。しかし遠藤の言っていることが間違っているならば、レオたちバッヘン王国の人々がやろうとしていることは、間違っていることなのかもしれない。
「これは要相談だな……」
そういって定例会議に出席する。
「さて、本日は周辺国家との連携についてだ。本日はエンジア王国から返事があった。エンジア王国は全面的にバッヘン王国を支援するものであり、これをもって正式な連携締結の証明とする、とのことだ」
「ついにエンジア王国とも連携締結か」
「あの国の科学技術は素晴らしいぞ。そんな国がバックについてくれるなんてありがたい」
そう周囲から反応が出る。
しかし、レオはあまり浮かない顔をしていた。
「どうしたレオ?何か気にかかることでもあるか?」
「それは……」
「遠慮はいらない。緊急事態だからな」
「……分かりました。それでは……」
レオは保守軍と革命軍、どちらの言い分を信じればいいのか、それを相談する。
「……ということなんです。どちらかが本当のことを言っているような気がするんですが、それが分からないんです」
会議に出席していた人々は静かに聞いていた。そして議長が口を開く。
「なんだ、そんなことか」
「へ?」
レオは思わず変な声をあげる。
「簡単な話だろう。あのヴェルナーというホログラムは革命軍の人間で、我々に対して明確に敵対心を出していたことだろう?」
「えぇ、まぁ」
「そして、その保守軍のエンドウは革命軍を止めるために行動しているんだったな?」
「はい」
「なら、答えは一つだ。我々の道を行く。ただそれだけだ」
「……はい?」
非常に単純明快で簡潔な回答に、レオは思わず聞き返してしまった。
「ここは我々の土地だ。そして守るべきものもある。現状、言い分を聞いていると、保守軍のエンドウの行動原理が我々の利害と一致している」
「そう、ですね」
「ならば彼女の言葉に乗りつつも、我々が目指すべき道を行くまでだ」
そう議長は言い切った。
その時、レオの中で何かがはまったような感じがする。
「そうだ……。僕はこの世界の人間だ。なら、目指すのは僕たちの理想とする世界……」
「その通り。それが我々の目指す道だ」
そう議長は話す。
このことをきっかけに、レオは何かすっきりしたような感じになる。
「さぁ、会議を続けよう」
そういって議長が会議の進行を進める。
そして会議は終了した。
今後はこの周辺国家と連携を密にし、必要な武装を取り揃えるというものになる。
また戦力の確保ということで、遠距離攻撃が可能な冒険者に協力を要請することになった。
そのために、王都にある冒険者ギルド長のウェンリーが呼ばれることになった。
「……ということですので、国内にいる冒険者に依頼をお願いしたいのです」
「なるほど。しかしここまで大規模な依頼となると、我々の手にも負いかねるものもありますぞ」
「しかしそこを何とかしてほしいのです」
「もちろん全力を尽くしますが、一体どれだけの人件費が出るか、考えるだけでも鳥肌ものですよ」
「それでは、依頼のほうをよろしくお願いします」
「分かりました。何とかします」
そういってウェンリーは王宮を去る。このあとは全国に対して依頼書を発行することだろう。
こうして着実に、調査船に対する結束は強まっていく。
そんな中、国王が定例会議に出席する。
「国家主席級の会談を行いたいのだが、それに同席する護衛がほしい」
なんでも、まだ惑星級の危機であることを自覚していない国家が複数あるという。
そんな国家に対して、直接国王が出向き、そして会談をしたいという思惑があるそうだ。
しかし、そんな大事な護衛に、そこらへんの冒険者を使うわけには行かない。
「そこで、レオとシンシアに護衛としてついてきてもらいたい」
「いいんですか?」
「何、構わんよ。もとはと言えば、レオが発端の戦いみたいな所があるからな」
「うっ……」
「それに、レオには担ってもらわなければならない役目があるからな」
「役目ですか?」
「そうだ。その腰に下げている刀剣を、各国の国家元首に見せびらかすというものだ。勇気ある者にしか抜けないというその刀剣を、実際に抜いて見せることで、相手からは信頼を得られるだろう」
「そういうものですかねぇ……」
結局、国王に流されるように、外遊する国王の護衛としてレオとシンシアが選ばれた。
その準備として、騎士団にお世話になることになった。冒険者としての服装ではなく、護衛としてそれ相応の服装をしなければならないという国王の助言からである。
「で、マリが出てくるのか」
「いいじゃーん、幼馴染なんだしっ」
そういってマリはにっこり笑う。
レオはなんとなく、マリの罠にはまったような感覚を覚えた。
そして仕立てに入る。
服装には赤を基調とした騎士団仕様の服を用いた。完全なオーダーメイドではないが、二人の体に合わせて服は作られた。
こうして、服装を新調した二人は正式に国王の護衛任務につくことになる。
翌日、早速国王は外遊に出かける。
「さて諸君。準備は良いか?」
その言葉に、護衛隊隊長が応答する。
「総員、問題ありません」
「よろしい。では行くぞ」
そういって国王一行は王宮内部にある広場へと向かった。
「ここからどうするの?」
レオは小声で、一緒についてくるマリに聞く。
「これから転移魔法で、目的の国家まで移動するの。周辺国家の宮殿とは、転移魔法によって繋がっているの。こちらから魔法陣を生成して、魔術を詠唱すれば、範囲内にいるみんなが一緒に移動できるのよ」
「へぇ」
そのために、国王のそばには魔術師がいるのだろう。
そして目的の場所に到着する。
「では行おう」
そういうと、四方に魔術師が展開し、魔術詠唱を開始する。
「大地の精霊よ、かの地であるエンジア王国と繋がりたまえ。それは人々の繋がりを象徴し、そして交わることで得られるエネルギーが、我らをさらなる高みへ到達させることだろう。トランジッション」
そういうと、国王一行の地面に魔法陣が展開され、そして光り輝く。
そのまま国王一行の姿は消失した。
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