第20話 対策
レオたちと使節団は関係者と言うことで、一緒に緊急会議に出席することになった。
「さて、異星人とやらの戦闘能力がどれほどであるか、我々には検討もつかない……」
そんな会議を始めると、レオのマイクロチップに反応が出る。
それは視覚野ホログラムとして、レオの視覚に現れた。
「あ、遠藤さん」
「元気にやっているようね」
そういって現れた遠藤は、なんだかソワソワしていた。
「どうかしたんですか?」
「えぇ、あなたの元にヴェルナー少将が出てきてから、事態が急変しているの」
「と、いうと?」
「さっきのヴェルナー少将の発言。あれはある意味、この惑星に対する宣戦布告のようなものよ。これから本格的に惑星侵攻を開始するつもりだわ」
「確かにそんな感じに受け取れましたね。なので今こっちでは対策会議を開催している所です」
「でもそんなことをした所で、調査船に勝てるわけないじゃない」
「でも、ここで戦わないと、この惑星は大変なことになりますよね?」
「それは否定しないわ」
レオの言い分に、遠藤は少しうろたえる。
「でも本気で戦うつもりなの?相手は地球の科学力で作られた宇宙船よ?」
「それでも、戦わなければ、僕たちがやられるだけです。せめて抵抗の意思くらいは見せないと」
「……そう、そこまで言うなら、協力するわ。調査船の武装や弱点を教えてあげる」
「ありがとうございます」
そういって、レオは手元にあるメモ帳に書き込み始める。
「まずは調査船はアブダクション装置のほかに、主砲4門、環境是正装置、その他対生命体用の個人武装多数って所かしら」
「なるほど」
「弱点は、外につながるアブダクション装置の出入り口と、隊員の出入りハッチって所ね」
「ほかに調査船はいないんですか?」
「いいえ。我々の調査船一隻のみよ」
「分かりました。ところで、遠藤さんは大丈夫なんですか?」
「今の所はね。ただ、スパイが紛れ込んでいることが発覚しているのは事実よ。私がスパイであることがバレないようにいろいろと手を回しているの」
「とりあえず、頑張ってください」
「ありがとう。ひとまずこんな所ね。ほかにも現地徴集したエージェントがこの惑星にはたくさんいるわ。彼らにも連絡しないと」
「僕以外にも?」
「えぇ、各国各都市に配置されているわ。あなたが思っている以上にね。例えば隣の国にも2、3人いるわ」
「そうなんですか……」
「ちょうど彼らと連絡がつけるようにマイクロチップのアップデートをした所よ。活用して頂戴」
「分かりました」
「それじゃあ、頑張って」
そういってホログラムは消える。
その様子を見ていたシンシアを筆頭に、その場にいた全員がレオのことを見る。
「レオよ、一体誰と話をしていたのだ?」
「敵の中にいる自分の味方です。彼女から、敵を攻撃する方法を教えてもらっていました」
「そうか。それなら話が早い。今は敵がどのような物なのかを話し合っていたところだ。教えてくれないか?」
「はい」
そういってレオは調査船のことを詳しく教える。
「なるほど、空中に浮く鋼の船か。これは厄介だな」
「しかし弱点がないわけではないそうです」
「ほう。しかし、空中に浮かんでいる敵の弱点にどうやって攻撃をするというのだ?」
「それは……。これから考えます」
「まぁ良い。弱点があるだけ良しとしよう。それで、ほかには何か言っていたか?」
「周辺国家にも、自分と似た境遇の人間がいると」
「そうか。ならば彼らとも共同して戦わなければならぬということか」
国王は腕を組み、思案する。
「これは高度な外交問題にまで発展するだろう。早速周辺国家に連絡を。レオはその転生者?とやらに連絡をとってくれ」
「分かりました」
そういって、レオは早速マイクロチップの操作をする。
すると、操作できる場所の中に、「通信」という項目が追加されているのに気が付く。
それを選択すると、名前一覧が出てくる。そのうちの一つを選択するとコール音が響く。
そして数回のコール音のあとに、声が入ってくる。
『もしもし、誰です?』
「僕はバッヘン王国でエージェントをしているレオ・ロイドという者です。そちらは?」
『バックス・オードです。調査船に乗っている遠藤という人から話は聞いています。バッヘン王国というと、自分のいるエンジア王国の隣ですね』
「協力することは可能ですか?」
『もちろん、この星のために戦うと決めましたから』
「ありがとうございます」
そういって今後の話を簡単にする。
そして通信は切れた。
「今日から王宮に缶詰になりそうだな」
そんなことをレオはつぶやく。
実際、対調査船のために日夜作戦を練ったり、連絡を待っていたりしていた。
そんな中で、これまで以上に周辺国家と連携を密にすることで、今まで以上の連携をとることに成功する。
そのような状況で、レオはあるものに気が付く。
それは通信の欄に、ハロルド・ヴェルナーの文字を発見したのだ。
「どうしてヴェルナー少将の名前が?」
しかし、興味を捨てきることはできなかった。
これも作戦を立てる上での重要な要素の一つだと思い、レオは通信をしてみることにする。
数回のコールのあとに、ハロルド・ヴェルナーは通信に出た。
「ハロルド・ヴェルナーだ。誰だね?」
「……栗林です」
レオはわざと地球時代の名前を言う。
「……あぁ、思い出した。すまない、現地徴集エージェントを多く徴集しすぎたようでな、名前を思い出せないものもいるくらいだ」
そういってハロルド・ヴェルナーは笑って見せる。
しかし、レオの心情はそのようではない。
「ところで、この通信、一体どこから手に入れたんだ?」
そんなハロルド・ヴェルナーの疑問を無視して、レオは疑問に思っていたことを思い切って聞いてみた。
「ヴェルナー少将、どうしてあのような行動に出たのですか?」
「あのようなこととは?」
「あの宣戦布告のようなものですよ」
「あぁ、『ようなもの』ではない。宣戦布告そのものだよ」
「な……」
「我々の当初からの目的は惑星侵攻、それ一点のみ。それ以外はお遊びみたいなものだよ」
「なら、なんで地球の記憶を埋め込んだんですか!」
「それは我々を信用してもらうための口述に過ぎない。我々は目的を達成するためならば、過程は重視しないタイプなんでな」
「そんな……」
「話は終わりか?なら通信を切るぞ。あと、君の通知欄から私の名前を消してもらえるとうれしいのだがな」
そういって通信は切れた。
レオはしばらく、その場から動くことが出来なかった。
(いや、分かっていたことだ。すでに遠藤さんがそういうことを言っていただろう。慎重になれ。最初から決まっていたことなんだ)
そういってレオは深呼吸する。
「レオ、大丈夫?」
そこにシンシアがやってくる。
「ん、あぁ大丈夫だ。問題ない」
「それならいいんだけど」
そういうと、シンシアは少しためらったあと、レオの裾をつかむ。
「私たち、大丈夫かな……?」
レオが初めて見る、シンシアの弱い一面。
レオはしっかりとシンシアの目を見て言った。
「大丈夫だ。僕たちなら何とかなる」
そうはっきりと言ってみせた。
「……うん」
その意気込みのようなものを感じたシンシアは、いつもの調子を取り戻す。
(ここからが本番だ)
レオはそう感じた。
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