第2話 学校
次に栗林が目覚めた時、地上で横たわっていた。
「うぅん……。ここは?」
栗林は辺りを見渡してみる。どうやら見慣れた場所のようだ。
遠くから父親と母親が近づいてくるのが分かる。
どうやら栗林のことを探していたようだ。
「レオ!レオ!」
「あぁ、大丈夫なのレオ!」
そういいながら近づいてくる。
栗林はなんともないことを示すために、立ち上がって見せる。
「父さん、母さん、俺……、いや、僕はなんともないよ」
「あぁ、よかった」
「急に変なものに連れていかれるのが見えたから心配したのよ」
「結局あれは何だったんだろうか?」
(この二人には調査船のことが見えていたのか?)
栗林はそんなことを考える。
「突然銀色の箱が現れたと思ったら、そこに向かってレオが吸い込まれていくのが見えたんだ」
「レオにもしものことがあったと思ったらいてもたってもいられなかったのよ」
「ありがとう父さん、母さん」
「それで、レオ。本当に何もないのか?」
「え、あぁ、大丈夫だよ。特に変な感じはしないから」
「そうか……」
そういって二人は安堵の表情を見せる。
そして二人に連れられるように家に帰る。
(何だろう。いままで何度も見てきた家なのに、初めて来る気分だ)
レオとしての記憶と栗林としての記憶が混濁しているのが原因だろう。
記憶している家の間取りを思い出しながらその通りに通るのに、初めて見るような感覚はなんとも言い難いものを表す。
そのまま夜になる。
栗林はベッドに横になって、マイクロチップの操作を行っていた。
「確かインプラントで魔法が使えるようになっているって聞いたけど……」
栗林は試しに使ってみることにした。
両親にばれないように、そっと外に出て試してみる。
「えーと、まずは火属性の出力か」
そういって、何種類かある火属性のうちの一つを召喚してみる。
すると、大規模な火球が勢いよく飛び出してきた。
それは周囲を燃え上がらせる程、大きくそして熱い。
「うわっ!」
栗林は思わず大声で叫んでしまう。
そのことに気が付いたのか、家の中から両親が出てこんとする。
栗林は慌てて身を隠そうとする。
その時、マイクロチップがある物をおすすめしてくる。
それはステルスモード。
地球時代でも課金をすれば手に入った代物である。
栗林はそれを起動する。
すると、栗林の体はスーッと透明になっていく。
光学ステルス迷彩のおかげだ。
栗林の体が完全に透明になった所で、レオの両親が出てきた。
そして辺りを見渡して、何があったのか、状況を整理しようとする。
家の前にある庭には、少し焦げ目のついた芝生が広がっていた。
それを間近で見ようと両親が出てきたところで、栗林は慎重に家の中へと戻っていく。
そして自室に戻ったところで、ステルスを解除した。
「ふぅ、危なかった……」
あと少しステルスになるのが遅かったら、両親にバレる所だっただろう。
「しかし、相変わらず便利だな、これ」
そういって、栗林はマイクロチップを操作する。
もちろん機能はこれだけではない。それらに慣れるためにも、今後は慎重に行っていく必要があるだろう。
それから数日後、栗林の姿は街中にあった。
今回の目的は、この街にある比較的小さな魔術学校に入学するためである。
この魔術学校は比較的小さいながらも、いろんな人材を排出してきた実績のある学校だ。
そんな学校には、栗林はもちろん、幼馴染のマリも入学する。
「あんた、どのコース行くか決めたの?」
「うん、お……僕は冒険者コースに行く」
「あんた、冒険者なんかに興味あったの?」
「う、うん。実はそうなんだ」
嘘である。先の調査船の司令官から、この世界の文明の程度を調べるように言われた手前、それを一番知りえるのは冒険者という職業しかない。
「まぁ、あんたのやりたいことなら、それを否定するようなことはしないけど」
「そういうマリはどのコースにするの?」
「あたしは魔術の腕を磨くために特級コースにする」
「そこって結構難しいんじゃなかったっけ?」
「そうよ。でもあたしは天才だから。そんなの余裕よ」
実際、教会学校でもマリは良い成績を残していた。彼女なら特級コースでも問題なくやっていくことができるだろう。
そうして別れた二人はそれぞれ自分の教室へと入っていく。
「えー、今日から君たちの担任を務めることになった、エル・リードルだ。よろしく頼む」
そういって担任が挨拶する。
「これから君たちには主に座学と、実地での授業を行ってもらう。それを通じて、冒険者とは何かを学び、1年から2年程度で卒業してもらう。これは余談なんだが、最長で5年在籍していた奴がいたから注意してくれ」
そういって、最初から試験が行われる。
まずは筆記試験。今の識字能力を見たり、学力を調査するために行う。
この辺りは教会学校でやった内容や、前世の記憶を頼りに、スラスラと解いていく。
そしてそれが終われば、今度は魔法能力試験だ。
魔法学校にある広場で、現在の魔法能力をテストされる。
「さぁ、誰からでもいいぞ。自信のあるやつから来い」
そうエルはいう。
それを聞いた、ガタイのいい男子生徒が出てくる。
「よし、まずはお前からだ。あの的に向かって好きな魔法を撃つといい。的はどれだけ攻撃を受けても壊れないように魔法がかけられているからな」
それを聞くと、男子生徒はニヤッと笑う。
「それでは、始め!」
「火の精霊よ、この拳に力を纏い、そして顕現させよ!ファイアーボール!」
男子生徒の手からは炎が飛び出し、そして的に命中する。
男子生徒は満足したように下がる。
「うーん。今のでもいいけど、もう少しいい詠唱もあったよね」
そんな男子生徒に、釘を刺すようにエルは言う。
それを言われた男子生徒は、思わずしかめっ面をした。
「じゃあ次は順番にやっていこうか」
こうして、名前の順に魔法を披露していくことになった。
そして栗林の順番となる。
「それじゃあレオ・ロイド、魔法を出してな」
「はい」
そういって栗林は詠唱を始める。
「水の精霊よ、この杖に力を宿し、そして顕現させよ。ウォーターボール!」
その詠唱の中に、栗林は少しマイクロチップの力を加える。
すると魔法の水は、倍の大きさになり、勢いもそれだけ強くなった。
そしてそのまま的に当たる。今まで微動だにしなかった的が少しだけ揺れるのが見えた。
「うむ。レオ・ロイドの魔法は相性がいいのか攻撃力が少し強いな。その調子で頑張ってくれ」
「はい!」
思わず褒められて、栗林はちょっとだけうれしくなった。
この日は試験をして終了となった。
その後、栗林は学校に併設されている図書館に向かった。
図書館には、様々な本がみっちりと詰まっていた。
その中には文明史から魔法の教本など、この世界の文明を知るにはもってこいのものばかりが勢ぞろいしていた。
早速栗林は、本の一冊を手にして読み始める。
読むことに関しては、マイクロチップのおかげもあって、次々に読むことができた。また、マイクロチップに本の情報が蓄積され、それを地球の調査船に送信することもするそうだ。
「授業がない時は図書館に来て、本を読んでいよう」
そう、心に決めた栗林であった。
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