第7話
破裂音とともに ホワイトボードに何かがめり込んだ。
教室中の視線が、机下に自作のレールガンを隠そうとしていたレミに集まる。
「今は物理の時間じゃないぞ」
教師が眉をひそめて言った。
「それで没収されたってわけか、ほんと、道具の使えないやつだな」
「道具ならきちんと発射機構を作れよ。弾丸セットしただけで飛んでいったんだぞ」
工作機械が並ぶ鉄くずだらけの部室でレミとチャドが言い合う。そこへ「朗報だ」とムスがやってきた。
「スインドンから招待状が来た」
「スインドンって人工知能を研究開発してところじゃん。すげぇな、爆破予告状でも送ったのか」
大はしゃぎするチャドに、ムスはトーンを落として言葉をつづけた。
「ロボット大会三回戦相手のスポンサーだったらしい。それで再戦をしたいそうだ」
「あっちも棄権したんだったよな。恨みつらみか。レミと心中なんてごめんだぞ」
「ん、いざとなればお前たちを盾にして生き残るから、心配するな」
断る理由がない三人はそれぞれの期待を胸にスインドンの本社へ向かった。
山奥に建つ巨大な近代建築の門をくぐる。
「ようこそ」といかにも研究者な白衣の男が三人を出迎えた。
「今、私たちは人工知能による管理システムとサナギを使った新しいロールプレイングゲームを開発しています。あなた方の意見を聞きたくてお招きしました」
案内させたホールには、熊みたいな大柄なものから、赤ん坊のようなちんまりしたものまで、いろいろな形状のサナギが展示されていた。
「説明するより体験してもらうほうが早いでしょう。試合相手を呼びます」
奥の扉が開いて、対戦相手が歩いてきた。レージングスーツを着込み、フルフェイスのヘルメットをしている。
「これが開発を進めている人工知能です。ボディはサナギですけど」
白衣の男が横に並んで紹介する。人工知能の頭上に「コンニチワ、ヨロシクドウゾ」とメッセージが表示された。
「そう言えばあそこの学校、人工知能が授業を受けている、なんて話があったな。つまりこの間の試合は」
「あのときの対戦データから、あなた方こそ、モニターにふさわしいと判断しました」
「ようするに一戦やろうってことだろ。頭で考えていたってなにも始まらないよ」
レミが会話に割って入り、人工知能を指さした。
施設内に用意された闘技場は大会のモノより一回り小さく、天井もあるため閉鎖感が強い。
操縦室のレイアウトは大会時のままだ。三人は定位置につく。
「なんか動きが鈍いぞ」
サナギと同期を済ませたレミが不満を漏らす。
「そうかぁ、数値はすべて正常だけどな」
チャドがモニターを確認する。サナギは規格が統一されているから、大会で使用したものと性能は同じはずだ。
「現在、サナギにはリミッターがかけられています」
簡易闘技場にアナウンスが響く。白衣の男の声だ。
「ハンディ戦か、そのほうが面白そうだ。これは九歳か九十歳って感じだな」
笑い飛ばすレミは、サナギで軽い体操を始めた。
「制限されているのは、むしろプラズマコーティングのほうでは」
ムスが指さすモニターの表示には、プラズマ量が短剣一つくらいしかない。
「そうです。数値にすると現在は十五パーセント。大会時で七十五パーセントですから、四分の一ほどになってます」
即答でアナウスンが入る。会話は筒抜けのよう、まさに試験だ。
「では、レベル三十から始めましょうか」
男の声を合図に、対面からもう一体のサナギが入場してきた。
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