第6話
一面の荒野の先にかすむ塔が見えた。かなり大きな建造物だとわかる。
「あそこへ向かってくれ」
通信が入り、視界の端に地図と矢印が表示された。両肩から白い煙を吐き出し、レミは不慣れな鉄の塊を歩かせる。
塔は大陸を三つに分断する裂け目からそびえ建っていた。それぞれの陸地と橋で繋がっている。
未踏を思わせる地に人の行き来があり、レミに気づいて何人かが近づいてくる。背格好から子供だと思っていたが、サナギだ。
ロボット武道大会で使われていた物と同型が三体、外装にアレンジが加えられていて個々の見分けがつく。
「新しい種族かな(゚_。)?)」「モンスターじゃない(゚ペ)?」「今日、イベントなんてあったっけ(・_・?)」
三体ロボットの、それぞれの頭上に文字が表示される。
うっとうしいな。ま、人間じゃないし。レミはまとわりつく小さなサナギたちを片手で弾き飛ばす。
「わ、攻撃してきた\(;゚∇゚)/」「不具合だ。管理者に報告(o゚◇゚)ゝ」
フキダシを残し、サナギたちは退散した。
入れ替わりに一回り大きい、赤いサナギが額の小さなランプを点滅させてやってきた。
今度はなんだ。レミはちょっとした痺れを感じて、赤いサナギを睨んだ。
「この区域の管理ロボット、警察みたいなものさ。普通なら同期されて行動不能になるけど、思ったとおり効かない」
赤いサナギが手をかざすと、レミの目の前で爆発が起きた。驚きで二、三歩後ずさりする程度の威力。
「プラズマコーティングの応用だよ。頑丈さはこっちが上だから気にするな」
気にするなって言うが、警告なく撃ってきたんだぞ。レミの高ぶりの呼応して駆動、振動が激しく唸る。白煙の勢いが増し、羽のように立ち上る。
プラズマで形成した剣を持って斬りかかってくるサナギをお構いなしに殴りつけた。
化石燃料が生み出す膨大な馬力は、一撃で赤いサナギを粉砕する。
「今のうちに塔へ。どんどん厳しくなるぞ」
オッケー、だいぶわかってきた。レミが意気込むと肩のブースターが展開し。巨大なサナギは滑るように駆けだす。爆音ととどろかせて橋を走り抜ける。
進入禁止の柵も勢い任せで突き破り、塔の内部へ侵入した。そこは無数の記憶装置で覆われたデータバンクだ。
これを全部、壊すのか。
「壊すのは二つで良いのだけど、ピンポイントは難しいからな。この辺りを狙ってくれ」
いくつにも別れた階層から、ターゲットマークが記憶装置群の一部分を囲う。優秀なナビゲーションのおかげでなんなく目的の場所にたどり着いた。
爆弾を持っているわけでもないので、格好悪くも殴りつけるしかない。これじゃただの空き巣だ。
レミはあえて精密に指先を操って、目標の、手のひらに収まる記憶装置二つをつまみ取った。
記憶装置の一つにチャドと書かれていたが、気にすることなく握りつぶす。
破壊活動を終えて塔の外に出たレミを、無数の赤いサナギが待ち構えていた。
あれ、これはヤバくないか。赤いサナギたちが一斉の放つプラズマの光がレミの視界いっぱいに瞬いた。
レミが次に気づいた場所は病室の寝台だった。恐る恐る首を回す。思い通りに動くことで安心した。
近くの壁に寄りかかっているムスがいた。目を合わせ、お互いが眉間にしわを寄せるとムスは携帯電話を手に取った。
「もしもし、チャド。悪い知らせだ。レミが目を覚ました」
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