第3話

「武器の特性を知り、相手との間合いを計り、有効な攻撃手段を探る。少しは戦略的に動けないのか。二試合とも単調すぎる」

「試合内容が採点されるわけじゃないし、勝つか、負けるか、だろ」

 スタジアムの客席でレミとムスの実にならない口論が続く。

「自分本位になってるけど、弾丸をはじいたのも、あのジャンプだってプラズマコーティングの調整あってのものだぞ。チャド、説明してやれ」

「そうだな、次は記録更新のために羽でも生やすか」

 取り合う気はないチャドが見つめる舞台、レッドシグナルが点灯した。

「前回優勝チームの戦いからこの競技大会の目指しているものが何たるかを、少しは学べ」

 三人が観戦する二体のロボットにプラズマコーティングが施されていく。

 一体はオーソドックスに剣と盾を装備し、全身を鎧で覆う。対するもう一体の出で立ちに レミは感嘆の声を上げた。身の丈を超える一振りの巨大な剣を携えている。その大剣にすべての粒子を集約し、ロボットはサナギ状態のまま。

「さすがはチャンピオン。良い趣向をしている」

「いや、盾を持っているほうがチャンピオンだから」

 まともにやりあっても勝てる見込みがないから奇策に出たとしても、そんな捨て身の覚悟、思い切り良さは希望を持たせる。

 グリーンシグナルが点灯してもチャンピオンに動きはない。

「ずいぶんと慎重だな」

「一回戦も同じスタイルで勝利しているからね」

 チャドが持つ小さな端末に問題の試合録画、巨大な剣を振り下ろし、対戦相手を頭から斬り通す映像が流れる。限度いっぱいまで凝縮した粒子の剣に、生半可な防具は役に立たないことがわかる。

 一際大きい歓声が上がった。視線を舞台に戻せば、録画映像と同じ、両膝を突くチャンピオンのロボットと大剣を担ぎ上げるロボットの姿があった。試合終了を告げるベルが鳴る。

「レミ、見ていたか。あれが次の対戦相手だぞ」

 ムスが声をかける。レミは二度ほどうなずいて答えた。

「チャンピオンを倒した相手を倒せば、優勝したと同じだな」

 その得意げな笑みに、ムスの不安は裏返った。

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