第3話村視察。吉利支丹の姿を認むる。
――両足は立ち上がれないほどに腫れ上がり、両腕は枯れ木のように細く。腹だけが、ぽっこりと膨れ上がり、頭髪は抜け、歯が抜け落ちた者達。
――力尽きた者が出れば、その肉を鍋で煮込み、
――僅かな、虫や、草を奪い合う者達。
――その姿は絵巻に描かれる、
一人や二人では無い。
この地には
しかし。……悲しい
彼らを全て救おうと思えば、元凶を断たねばならない。
五町ほど離れた、よく生い茂った木の上から村の様子を伺う
飢えている村民達に近寄る者が数人いるのに気がつく。
見た目が怪しい者達の、一挙手一投足を見逃さないように集中する虚太郎。
「はれるや。でうすの御名を
そう口々に言いながら、三度笠の者達は村民の額に水滴を垂らし、最後に
村民達は涙を流しながら手を合わせ、でうすの名を讃える。
竃で炊いた
「
溜息を
ふと、吉利支丹の一人が三度笠を外す。――風に吹かれて、黒い絹糸のような総髪が
肌が白く、女子と見間違う程に美しい顔。……つり目がちな目元。眼光は世の総てを見透すように鋭く、力があった。
きょろりきょろりと辺りを見回す。
「ジェロニモ。どうかなさいましたか?」
吉利支丹の一人が辺りを見回す。……ジェロニモと呼ぶ者に声を掛ける。
「いや、気のせいであろう。さあ、次の迷える子羊達を救いに行こうか」
柔和な笑みを浮かべながら、ジェロニモと呼ばれた者は三度笠を被り直す。
ジェロニモは虚太郎の方を見やり、口元を曲げ笑う。
虚太郎は長い溜息を吐く。
「可愛らしい顔をしながら、油断ならん奴だな。救いの邪魔をするなって事か」
がしりがしりと頭巾の上から頭を掻く。
月下に輝く島原城。
有明海を
分不相応なほどに豪華絢爛な五層天守と大量の
五層天守の天辺に立ちながら、虚太郎は溜息を吐く。
「どれほどの怨嗟と屍の上に。……」
天守に
虚太郎の蒼い瞳には。……
虚太郎は音も無く、天守から飛び降りる。
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