第2話

 今日も部室へと足を運ぶ。何事もなく日々を過ごす藍のルーティーンだ。

 鋭意制作中の作品を取り出して彫刻刀を手に取るが、その時、いつもとは少し異なる静けさを直感した。

「……今日、人少ないね?」

 藍は誰かへ語り掛けるよう呟いた。答えは帰ってこない、だが来たら有能だとその程度に思っていた。

「奈央とあゆ、今日はお休みです」

 後輩の一人だった。二つの名前に真っ先に反応したのは菫だった。

「昨日……体育倉庫行くって言ってた二人じゃん」

 何かあったのかな。菫が口の中で言った呟きが微かに聞こえた。

「……偶然でしょ。大丈夫だよ。しかも贋作でしょ、あれ」

 突発的にだが、藍は返した。確かに不自然なことだ。少し何か疑問に思ってもおかしくはない。だがそれは、怪奇という普通なら無いはずのものが絡んでいるからだ。


 だからそう。。藍はそう思うことにした。とりあえず、明日次第だと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る