第8話 名前

 お腹いっぱいになったから眠くなってきたわね。

「加藤、寝床を用意しなさい」

「え? 僕の顔の上で寝るんじゃないんですか?」

 あたしはそんなことしないわよ。そこらの猫と同じにしないで。

「あのね、落ち着く場所っていうのは猫によって違うの。だから、きちんとした寝床を用意しないとダメよ。ということで、ダンボールにタオルを敷き詰めなさい。今すぐに!」

「は、はいー!」

 こいつ、猫の言うことなら何でも聞くのかしら?

「……で、できました! どうぞこちらへ」

「え? もうできたの? 早いわね」

 まあ、適当に作ってたら爪でひっかいてやるんだけどね。

「ふーん……へえ……ほう……」

「え、えっと、その……ど、どうですか?」

 黒猫様はタオルから顔を出すと、僕の顔をじっと見つめた。

「まあ、及第点ってところね。良くも悪くもないけど、特別ダメってわけじゃない。初めてにしては上出来よ」

「ほ、本当ですか! やったー!!」

 そんなに嬉しいの? あたしみたいな猫に褒められただけなのに。

 まあ、どうでもいいんだけどね。

「あっ、そうだ。黒猫様」

「なによ」

 黒猫様って、あたしにはちゃんと名前が。

「黒猫様に名前はあるんですか?」

「……あった。けど、今はない。だから、新しい名前をあたしにつけて」

 そ、そそそ、そんな重要な仕事を僕がやってもいいのですか!?

「あっ、でも変な名前だったら許さないからね?」

「は、はいっ! 黒猫様にふさわしい名前を考えます!」

「よし。じゃあ、始め!!」

 僕はその場で正座をしてから黒猫様にふさわしい名前を考え始めた。

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