最後の戦いへ

 ラスピルと別れた深夜。クリードはレオンハルトとルーシアを地下室へ呼んだ。

 クリードはアサシン服を着てフードを被っている。

 ルーシアは、冷たい目で言った。


「第一王女を暗殺するの?」

「ああ。遅かれ早かれ、第一王女リステルは実力行使で第三王女ラスピルを排除する。その前に、こちらから仕掛ける」

「無謀だね」


 レオンハルトも冷たかった。

 だが、クリードは気にしていない。

 そのまま、二人に命令を出す。


「お前たちは第三王女ラスピルを護衛しろ。余力があれば第二王女も守れ。あれは今後役に立つ」

「「…………」」

「……言いたいことがあるなら言え」

「あんた、死ぬ気でしょ?」


 ルーシアは、冷たい目と声でクリードに言った。


「あたしは、立場上ラスピルと仲良くしてるつもり。上からラスピルを始末しろって命令が来たら迷わず殺す。でも、今のあんたは違う……情に流されてる」

「オレも同感。クリード、あの子に心を動かされた? アサシンともあろう者が」

「…………」

「第一王女リステル。閃光騎士団十傑にして【勝利】を司る最強の騎士団員だ。クリード、いくらキミがアサシンで屈指の実力を持っていても、真正面から挑んで勝てる相手じゃない」

「…………」

「もう気付いてるだろ? 彼女は決して暗殺できない。あの勘の鋭さは異常だ」

「…………」


 クリードは、もうそれ以上何も言わなかった。

 そのまま振り返り、部屋を出ようとする。

 それをレオンハルトが止めようとしたが……ルーシアに遮られた。


「…………」

「命令よ。あたしも納得いかないけど、クリードはエージェントコード04……あたしらが逆らえる相手じゃない」

「……フン。わかってる……くそ、長く学園に染まりすぎた」

「あたしもよ。ま、切り替えていきましょう」


 レオンハルトとルーシアも、アサシン服に着替えるため準備を始めた。


 ◇◇◇◇◇◇


 クリードは、深夜の生徒会室に侵入した。

 すると───……待ち構えていたように、電気が付く。


「待っていたぞ」

「…………」

「必ず来ると思っていた。アサシン」


 第一王女リステルが、待ち構えていた。

 完全装備だった。

 銀色の鎧。長い髪はポニーテールにして、手には巨大な槌が握られている。

 微塵の隙も無い。暗殺は不可能に近かった。


「……場所を変えるぞ。ここでは狭い」

「…………」

「フン。暗殺など無駄だ。私は、貴様が屠った連中とは違う」

「…………」


 その通りだった。

 リステルは本当に、生徒会室では戦いにくいと感じているだけ。

 そして、窓を開けると、槌を抱えたまま飛び出した。

 向かったのは、修練場。初めてリステルと戦った場所だった。

 リステルは、修練場舞台の中心に立ち、槌を構える。


「アサシン。大方、ラミエルの差し金だろう……十傑を悉く始末したのも貴様だな?」

「…………」

「フン。まぁいい……貴様を殺し、ラスピルを殺す。ラミエルもだ。障害を全て排除し、私はこの国の女王となる」


 リステルは、槌を頭上で回転させクリードに向ける。

 圧倒的な戦意だった。

 だが、クリードは戦う。


「…………任務、開始」


 両腕を広げ、カティルブレードを展開。

 アサシンとして、命を賭けた最後の勝負に挑む。

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