第四章

宣言

 ジェノバ王国女王の死。

 それは、すぐに国中に広がった。

 葬儀は国を挙げて行われ、学園も授業が休みになるくらいだった。

 リステル、ラミエル、ラスピルは正装し葬儀に参列。

 他国からもお悔やみの挨拶をしに、大勢の使者がやってきた。

 クリードは、アサシン服を身に纏いシロに侵入……ラスピルたちを見た。


「ふん……」


 三人の様子はバラバラだ。

 リステルは野心に燃えているような目、ラミエルは無関心、ラスピルは悲し気に目を伏せている。リステルの眼を見た限り、この後はロクなことにならなそうだ。

 式が終わり、ジェノバ王国の重鎮と三姉妹は別室へ。

 クリードは、式が終わる寸前に部屋に侵入していた。

 豪華な椅子、テーブル、調度品が多くある部屋だった。全員が座るなり、リステルは言う。


「母上は、次期女王を指名したのか?」


 それに答えたのは、宰相のオリビアだ。

 女王と最も付き合いの長い宰相は、涙を見せず淡々と言う。


「いえ。晩年は話すこともできないほど衰弱されてました……」

「そうか。では、次期女王はわからない、そういうことだな」

「はっ……」


 オリビアは、なぜかラスピルを見た。

 その視線の意味を理解したのか、リステルは強く言う。


「ならばここで宣言する。ジェノバ王国の次期女王は、この第一王女リステルが「異議あり」


 と、ここでラミエルが挙手。

 フッと鼻で笑ったような笑みを浮かべた。


「姉上が次期女王? 私は、第二王女としてその意見には反対」

「フン……頭でっかちの貴様に、この国を統べることができるとでも?」


 リステルとラミエルがにらみ合う。

 そして、ラミエルは立ち上がり……ラスピルの背後に回った。


「え、お、お姉さま?」

「ラスピル……」


 ラミエルは、ラスピルの両肩に優しく手を置いた。


「第二王女ラミエルは、次期女王に第三王女ラスピルを押すわ」

「なっ」


 リステルが驚愕、宰相のオリビアも驚き、他の貴族たちも驚いていた。

 リステルは立ち上がる。


「貴様……そこまでして、私を女王にさせたくないのか」

「それもある。でもね、気付かないの?」

「……なに?」


 ラミエルは、ラスピルの髪を優しく梳く。


「この子は、私を超える頭脳と姉上を超える武の才能がある。まだ粗削りだけど……五年、いえ三年後には誰もが認める女王になるでしょうね」

「……っ」

「ね、ラスピル。あなたの意志は?」

「え……わ、私、の?」

「お母様の意志を継ぎ、この国を治める女王になりたいと思う?」

「…………」

 

 ラスピルは、即答できなかった。

 すると、リステルが立ちあがる。


「意志なき者に国を治めることなど不可能。やはり、私が相応しい」

「姉上。この子を脅すのをやめてもらえるかしら? いきなりのことでまだ時間が必要なの」

「くだらん。だが、これで決まったな……私か、ラスピルか。真の女王に相応しいのがどちらか」


 クリードは『まずい』と思った。

 だが、ここから飛び出すわけにもいかない。


「ラスピル。貴様に決闘を申し込む」

「え……」

「真に相応しいのはどちらか、決闘だ」

「馬鹿ね。そんなの、あなたが勝つに決まってるじゃない。さっきも言ったけど、この子はまだ未熟。力も、心も……その状態なら勝てると思ってるなら、あなたこそ女王に相応しいとは思えないわ」


 リステルとラミエルがにらみ合う。

 ラスピルは、二人の姉を交互に見ていた。


「わ、私は……」

 

 ラスピルは、何も言えずに俯いた。

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