後片付け、そして

 学園祭が終わり、学園内は後片付けに追われていた。

 大規模な出し物が多かっただけに、後片付けも大変だ。クリードも小道具係として、雑用を真面目にこなしていた。 

 ラスピルには、レオンハルトとルーシアが付いている。三人で仲良く舞台の天幕を畳んでいる姿は、仲良しグループにしか見えない。

 十傑は残り少ない。全員を始末すれば、ラスピルが女王になれる確率はかなり高い。

 だが、不安もある。 

 第二王女ラミエル。果たして、信用できるのか。

 全ての十傑を葬った後で、掌を反さないとも限らない。


「おいクリード、箒よこせー」

「あ、塵取りもっス」

「ああ」


 クリードは、マルセイとトウゴに掃除道具を渡す。 

 

 ◇◇◇◇◇◇


 生徒会室では、リステルが苛立ちを抑えきれず、室内をうろうろしていた。

 ゼオンは、それを見て大あくびをする。


「ふぁ~あ……なぁ、なにイラついてんだ?」

「これがイラつかずにいられるか!? 十傑がほぼやられたのぞ!?」

「あぁ~……」 


 アサシンによってほぼ壊滅させられた。

 まともに動けるのは、リステルとゼオンのみだ。

 すると、生徒会室に『王冠』のデミウルゴスが入ってきた。

 リステルは、デミウルゴスを見るなり詰め寄る。


「【王冠】よ。このままではアサシンの思うがまま。こうなれば仕方なし……直接、我が妹ラスピルを始末する許可を!!」

「……落ち着くのだ、【勝利】よ」

「ですが……!!」


 リステルは歯噛みする。

 ゼオンは我関せずと言った感じで大欠伸した。


「だが、このままではまずいのも事実。これまでは敵の土俵で戦っていたが……こうなれば、直接始末することも考えねばならん」

「それでは……!」

「うむ。だが、もうしばし待て。あと数日で、期は熟す」

「え……?」


 デミウルゴスはニヤリと笑う。 

 この会話の十日後。リステルの母であるジェノバ王国の女王は、病により急死することになる。


 ◇◇◇◇◇◇


 ある日。授業中に一人の教師が入ってきた。 

 教師は授業中の教師に耳打ちし、ラスピルの元へ。

 クリード、レオンハルト、ルーシアが反応した。


「~……で、すぐに」

「は、はい」


 どうやら、別室に呼び出されたようだ。

 クリードは、眼球の動きで二人に指示を出す。


『待機。自分が行く』

『『了解』』

 

 ラスピルが教室を出ると同時に、クリードも抜け出す。

 席が後ろの方だったので、クリードがいなくなっても気付かれなかった。

 そのまま、ラスピルを追う。

 入ったのは、空き教室だ。

 そこにいたのは、教師ではない。年老いた老婆……学園関係者ではない。


「み、ミネルバ。どうかしたの?」

「姫様……お辛いでしょうが、お聞きください」

「え……?」

「女王陛下が、お亡くなりになられました」

「───……え」


 それは、ラスピルの母であり、このジェノバ王国女王の死を報告するものだった。

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