第146話 愛で結ばれた瞬間?

「ちっくしょおおおおお! 何でこうなんのよおおおおお!」


「………………」


取り押さえられたワカナとオルマーは縛られたまま牢屋に入れられた。


「何でこの私が牢屋なんかに……酷い……」


先に目が覚めたワカナは、牢屋に閉じ込められたことにすぐに気付いた。閉じ込められるのは三度目だ。慣れたわけではないが流石に理解が早くなる。


「何でよ………何で私がこんな目に………全てを取り戻したいのに………全部あの女が悪いのに………」


あまりの悔しさで、この期に及んでもミルナを恨み憎み続ける。最初は恨み言をぶつぶつと呟くだけだったが、後になって癇癪を起した。


「うわあああああああああがあああああああああああああああああああああああああああああ!」


何もかもうまくいかない。思い通りにならない。望んだ物がこない。望んだことが実現しない。何も取り戻せない。理不尽な目に遭う。その全てに怒り恨み憎むワカナは最後まで自業自得だということに気付けない。こんなことになっても自業自得だと分からないワカナは本当に救いようがない。


「何で私を怒らせるのよ! 何で苦しめるのよ! 畜生が! くっそお、くっそお! 呪ってやる! 私をこんな目に遭わせた全てを、何よりあの女を呪ってやるからなぁぁぁぁぁ!」


逆恨みの果てに誰よりもミルナを呪うと叫ぶが、当のミルナは幸せになっている。しかも、いずれは幼馴染と結婚できるというのだから、ワカナの叫びは無意味に等しい。皮肉なことに。


数日後、ワカナは終身刑、オルマーは懲役5年が決まった。


ついでにオルマーは家からも見放されたため平民になった。出所後も大変な生活が待っていることだろう。





アクセイル領地の屋敷で、ワカナと取り巻きの男の処遇を聞いたエンジとミルナはホッと一息ついた。


「……こんどこそ終わりました。ソノーザ家との因縁は」


「……ああ、そうだな」


サエナリア以外のソノーザ家の人間はこれで片が付いた。先日、ソノーザ公爵は処刑され、その妻は修道院に送られた。そして、次女は終身刑。生き残った二人が表舞台に立ちことはないだろう。


「サエナリアお嬢様を苦しめた家は今度こそ終わりました……」


「ミルナ?」


ミルナは不安そうな顔でエンジを見る。


「……エンジ君、サエナリアお嬢様のことはお聞きしないのですか? 彼女はどこにいるのか、とか?」


「君は言ったじゃないか。『お嬢様は幸せにしています』と。俺はその言葉を信じるだけだ」


「エンジ君……」


エンジはミルナを信じると決めた。だからこそ、サエナリアのことについては何も言わないことにしたのだ。心配するミルナを安心させるために、エンジは笑顔で今後の予定について口を開いた。


「ミルナ。俺達の結婚は俺が学園を卒業してすぐに行うことが決まったよ」


「! 決まったんですね!」


「ああ。父上と母上も納得して喜んでいる。俺は昨日で三年になったばかりだから一年後になってしまうがな」


つまり、エンジが成人してすぐに結婚ということだ。更にその後でコキア姓に代わってコキア領地を治めることになる。ミルナは妻としてエンジを支えていくのだ。


「それまでに私は立派な貴族夫人になれるでしょうか? まだまだ勉強しなければならないことはありますし……」


「君なら大丈夫さ。必要ならば俺が力になるさ。まだ夫婦じゃないが恋人で婚約者なんだしな」


「エンジ君、ありがとうございます。……大好きです」


「俺もだ……」


二人は恥ずかしがりながらも互いに好きだと告白した。確かな愛で結ばれた瞬間だった。

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