第132話 未来予想図?

もちろん、ナシュカはバイラとの婚約のことについて両親である国王と王妃、それに兄二人にも話をした。話を聞いた家族全員が驚いたが、同時に喜んだ。国王はすぐにバイラの両親にも話をしてその日のうちに婚約を許したのだ。


「しかし、バイラ嬢がナシュカと婚約とはな。堅物で几帳面で真面目な彼女も、家柄と言い本人の能力と言い王族の婚約者としては申し分ないが、お前たちがそんな雰囲気に見えなかったから少し驚いたぞ」


「ははは、まあね……(僕もその時は驚いたけどね)」


ナシュカも告白された時は実際驚いた。何しろ側近として信頼していたが、まさか恋愛感情まで抱かれていたとは思っていなかったのだ。


「俺はそんな予感もしてたけどな。あの子はよくお前のために行動してたからな」


「! そうなんだ……(レフトン兄さんには気付かれるか。この次兄には敵わないな)」


こういうことにレフトンは嘘はつかない。そおう考えると、ナシュカはレフトンには敵わないなと素直に思った。たとえ自分が王の座を継いでもだ。洞察力においては勝てないと思うとレフトンから自然に目をそらしてしまうナシュカ。


「ナシュカ、会話中によそ見するな。お前が次の王になるのだろう。これからはもっと堂々とするんだな。もっとも、俺のようになってほしくはないがな」


「そうそう、兄二人を差し置いて王太子になって、やがては親父から王の座を継ぐって決めたんだ。もっと逞しく凛々しくカッコいい男にならなきゃな! 兄貴や俺は参考にならねーけど」


カーズとレフトンの言う通りだった。カーズの廃嫡が決まった後、次の王太子は誰になるかはこの三人と国王と王妃で相談したのだ。その結果、ナシュカが次の王太子と決まったのだ。


「そうだね……」


兄二人に諭されて、ナシュカは信頼する側近の二人……いや、側近の少年と婚約者に言われたことを思い出した。同じようなことを言われているからだ。親しい人たちにそれだけ言われているんだなと思うと、ナシュカはそれにこたえていこうと思った。


「僕が王太子に任命されたんだ。これからは次期国王にふさわしい行動をとっていかないとね。兄さんたちと違ってね」


「「!」」


カーズとレフトンは少し驚いた。このタイミングでナシュカが笑顔でそんな風に答えたからだ。かつてのナシュカならば、素っ気なく言うものだったのだが、こんなふうに答えてくれるとは思わなかったのだ。


それを二人は嬉しく思った。


「(ナシュカの笑顔が、作り笑いではないのが分かるな。こんな笑顔は久しぶりに見たよ)」


「(どうやら、ナシュカはいい方に成長したみてえだ。バイラちゃんとの婚約がそうさせたんだな)」


これなら安心できる。我が国も安泰だ。兄二人は素直にそう思った。そして、誓った。国王となる弟を兄である自分が支えていこうと。


「(俺は考え無しで思い込みが激しいから大失敗してしまった。これからはしっかり勉強して側近の言葉をよく聞いて行動していこう。ナシュカとレフトンのためにも)」


「(ソノーザ家を潰してライトとエンジの肩の荷も下りたな。後はあいつらや馬鹿兄貴と弟のサポートを今後もしっかりやってやるだけだ。俺は変わらずにこのポジションを貫いていけばいい。それだけだ)」


大きな失態を犯したカーズの将来は臣下に下って一貴族となる。レフトンは騎士になって王宮を守る。二人は未来予想図を思い描いていた。

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