第130話 報われる?
「(こ、これも打ち合わせ通りだというのですか!? エンジ様もレフトン殿下も!?)」
ミルナはレフトンを振り返ってみるとニヤニヤした顔が見えた。横にいる二人の王子は真剣な顔で状況を見守っているというのに。
「(あの王子が仕掛け人の一人なのは間違いありませんね。私の本当の素性を言わなかったことに対する当てつけですか?)」
「(これで借りは返したぜ。コキア子爵令嬢さん!)」
握りこぶしに親指を立てるレフトン。その行為に心の中で苦笑いするミルナ。そんな二人のやり取りを誰も気づかずに状況は進む。
「であれば、私はミルナを再び婚約者とします! この私が婿養子となってコキア家を継いでミルナの家を再興します!」
「エンジ様!(マジで!)」
「ほおう! それは思い切った考えだが、アクセイル子爵家はいいのかね?」
国王が試すように問いかける。それに対してエンジは恐れもなく堂々と答えた。まるで待っていたと言わんばかりに。
「父とはすでに話は済んでおります。当主の座は留学中の弟に譲る予定となっています。それに私としては幼馴染であり元の婚約者と結ばれるのですから強く望むところです。ミルナもそれでいいな?」
エンジはミルナの方を振り返って問いかける。その顔は力強い自信にあふれた笑顔で会った。その凛々しい顔を向けられたミルナは縦に頷いて肯定するしかなかった。
「は、はい……!」
「よくぞ申した! ならば問題はないな。本日をもってミルナ・ウィン・コキアとエンジ・リュー・アクセイルの婚約を決定し、近日中に二人の結婚と同時にコキア家の復帰を決定する!」
国王が宣言した。エンジとミルナの結婚を。それを祝福するために大勢の者たちが盛大な拍手をささげた。平民も貴族も王族も関係ない。誰もがエンジとミルナを祝福した。
「おめでとうー!」
「おめでとうございます!」
「ひゅー、ひゅー!」
「エンジー! 幸せになー!」
「ミルナー! 生きててよかったー!」
多くの祝福の声を聞いて、ミルナは頭が追いついて理解した。
「こ、こんなことって……」
ミルナは胸が熱くなった。感激のあまりその場でへたり込んでしまった。
「は、ははは………こ、こんなことは、私の計算外、でした………こ、こんなサプライズがあったなんて………」
「迷惑だったかい?」
「そんなこと………このときほど報われる思いはありませんわ………」
本心からの言葉だった。ミルナは平民になってからはとても苦労してきた。貧しい暮らし、両親の死、侍女になるための勉強、そしてソノーザ家への復讐。その中で輝かしい思い出があったのはサエナリアとの出会いだけだった。忠誠を誓ったサエナリアのために裏で動いてきたが、今日のことで、ミルナの子供のころから今までの努力がすべて報われたのだ。彼女はそう断言できる。
「私は、サエナリア様だけでも幸せにしたいと思っていましたが……今は私も幸せな気分です……エンジ様、本当にありがとう……」
「お礼なんていらないよ。俺はミルナの婚約者だったのにご両親のことも家のことも何もできなかったんだ。礼を言うならレフトンや陛下のほうさ」
エンジとミルナのやり取りに国王も嬉しそうに加わった。
「ははは、私やレフトンはきっかけにすぎないさ。私達の力がなくても君ならミルナ嬢のためにうごいただろう。違うかね?」
「そうですね。子供の頃と今の俺では違います。今の俺ならミルナを守りぬいて見せます!」
「エンジ様……!(本当に、本当に報われましたよ。サエナリアお嬢様! 近日中にご報告しなければ!)」
ミルナはこの場にはいないサエナリアに思いをはせる。ソノーザ家に来てからサエナリアを幸せにするのがミルナの目的になっていた。ソノーザ家を潰して残った両親と妹を処罰することに成功したため、目的は達成できたようなものだった。だからこそ、エンジと結婚する前に会いに行こうと決心した。
ミルナ自身も幸せになった、と伝えるために。
だが、この時誰も思いもよらなかった。ソノーザ家との最後の戦いが始まろうとしていたことに。
「ムッキー! この私を誰だと思っているのよー!」
====あとがき====
遂に遂に遂に遂に! ソノーザ家が天罰を受けました! やっと「ざまあ」できました! やったー! ……と思いきや『最後の戦い(?)』が残りました。それを中心に新たなプロットを作成してエピローグまで作り上げようと思います。ではそれまでご期待ください!
それと並行して、ミルナを主人公にしたスピンオフ作品も作成中ですのでこちらも投稿したらよろしくお願いしますね!
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