第108話 半信半疑?

「ナシュカが学園に向かった後、私、レフトン・フォン・ウィンドウはソノーザ公爵の屋敷に向かった。理由はもちろんサエナリア様の手掛かりを求めてのことだ。そのために屋敷の執事に無理を言って調査させてもらった。その過程でサエナリア様の部屋を案内させてもらったのだが、そこは物置だった」


「物置……先ほどカーズ殿下からもそう聞いておりましたが、その物置をサエナリア嬢の部屋として確認できる決め手は何かあったのでしょうか?」


裁判長は説明を求めると、レフトンは真面目な顔を曇らせた。頭の中は嫌でもサエナリアの部屋であり物置でもある部屋の中を思い起こしてしまうからだ。だからこそ、この場で見たことをそのまま説明しなければならない。


「私も最初はすぐには理解できなかった。だが、案内してくれた執事の説明を聞いて、やっと理解できた。物置として使われる部屋には簡易な椅子と机にベッドがあり、その机の上にはかつて兄カーズがサエナリア様にプレゼントした髪飾りが置いて……飾ってあったのだ……」


「………カーズ殿下の贈り物ですか?」


「確か覚えがあったから事実だ。それにあの髪飾りは王族のために作られる使用でもあったからな。この場で私が嘘をつく理由はない。そもそも我が兄もその目で見ている」


「………っ!」


レフトンの視線がカーズに向けられると、裁判長も多くの貴族もカーズに視線を向ける。視線が集中して向けられたカーズはレフトンと一瞬目が合うと落ち着いて事実を口にした。


「弟の言っていることは事実です。私もこの目で見ました。サエナリア嬢の部屋の机になったのは、確かに私が送ったものでした」


「………そうですか」


静かに聞いていた裁判長はおろか聞いてしまった多くの貴族が驚いた。物置を自室にさせる、そんなことは貴族の子供にする仕打ちでは決してあり得ない、だから王族の言葉でも半信半疑の者が多かったのだ。だが、ここまで口にしてしまっている以上は誰もが偽りでも話を盛っているわけではないと理解した。傍聴席は顔を見合わせる貴族の夫婦やサエナリアに深く同情する貴族令嬢、ソノーザ公爵に罵詈雑言を口にする学生で騒がしくなった。


「まじで物置で過ごすように仕向けていたのか。令嬢なのに……」


「ソノーザ家はヤバいな。そんな家が公爵だなんて……」


「もう取り潰し確定じゃね?」


「王族二人がここまで言うなんてね……。物置のことは事実……」


「ソノーザ夫婦許すまじ。ついでに次女も」


傍聴席の方が再び騒がしくなって裁判長は注意を呼び掛ける。


「静粛に、静粛に! 私語は慎んでください」


「裁判長の言う通りだ。事実確認がいるならソノーザ公爵夫妻に確認をとればいい」


「「「「「っ!」」」」」


「「…………っ!?」」


レフトンの声にビクッと震えるソノーザ公爵夫妻。今度は全ての視線が公爵夫妻に向けられた。そして、このタイミングで裁判長ではなく国王が遂に口を開く。


「ソノーザ公爵よ、我が息子二人が口にしたことは真か?」


「「…………っ!?」」

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