第100話 話?
馬車の中。レフトンたちは王宮に戻る途中だった。ただ、帰りの馬車の中は人数が一人増えていた。
「本当にお疲れ様でした。偉大なるレフトン殿下」
「何が偉大なるだよ。どうってことねえよ。スッキリしたのはまだ半分くらいだしな」
レフトンは己の拳を眺める。先ほどソノーザ公爵を殴ったほうの拳だ。次女の格好をした女性が心からの笑顔でレフトンを称賛する。
「旦那様……いえ、ソノーザ公爵が殴り飛ばされた瞬間、私は結構スカッとしましたよ。胸がすく思いでした」
「そうかい。ならよかった」
馬車の中にはソノーザ公爵家の侍女ミルナも加わっていた。いや、今は元侍女という方が正しいだろう。今は無職の身だ。
「それにしても本当にミルナさんも一緒に来るんだね」
「私が同行するのが不服ですか? ライト様?」
「まさか。興味深いだけさ。個人的にね。エンジも嬉しいだろう?」
「俺は会えただけで嬉しいが一緒についてきてくれるなら大歓迎さ」
ライトとエンジも微笑みを返す。
あの後、ベーリュのことは執事のウオッチに任せてレフトンたちはミルナを連れて王都に帰還することにしたのだ。ウオッチにも「ミルナのことをお願いします」と頼まれたこともあり、ひとまずエンジが預かることになった。この時点でミルナは正式にソノーザ公爵の侍女を辞めたことになったのだ。
「サエナリアお嬢様はもうソノーザ公爵家に帰ってくることはありません。お嬢様がいないのであれば私が侍女を続ける理由もありませんから」
「そういうわけで王宮に戻る前にミルナさんをエンジの実家まで送ろう。王都から近いからな」
「ああ、ありがとうなレフトン。恩に着るよ」
「ありがとうございますレフトン殿下。深く感謝いたします」
「なあに、気にすんな。俺とエンジの仲だ」
エンジとミルナは揃って礼を言う。そんな二人にレフトンは普段の笑顔を返す。
「でも、エンジの実家に着くまで時間があるからこの中で話してくれないかなミルナさん。貴女のことを」
「そうだな俺どころかエンジだって知りたいだろうからな。あんたのこれまでのこととサエナリアさんとの関係もな」
ライトとレフトンは真面目な顔でミルナを見る。ミルナはエンジを振り返ると彼も同じ顔になっていた。
「ミルナ……つらいこともあっただろうが、出来る限り教えてほしい。すべてでなくていいが、俺も知りたいんだ。君のことを」
「エンジ様、皆さん…………」
三人の男たちの顔を見回したミルナは、一度目を瞑り静かに考える。そして、間を開けてから目を開けて、笑顔を真面目な顔に変えた。
「分かりました。まずは私の過去からお話しします」
ミルナは話すことにした。家が没落してからのこと。ソノーザ公爵家で侍女になった理由。サエナリアの専属侍女になった理由。サエナリアの望む未来。彼女の目的。
……おそらく、ミルナはレフトンたちが最低限知りたがっている事実の9割を話した。
…………あくまでも9割であり、全てではなかったが。
======あとがき======
いつも読んでくださって、ありがとうございます。遂に100話まで続けられました! ここから先は、いわゆる最終章に突入しますので後一か月くらい時間が欲しいです! …………そういうわけで申し訳ありませんが皆さんどうかお待ちください!
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