第47話 想像?

ナシュカと別れた後、レフトンは自室に戻って勢いよくベッドに寝転んで大きなため息を吐いた。


「はぁ~、兄貴はほんっと、ろくなことしねえな。ナシュカも頭良すぎだよ」


レフトンは頭が痛くなった。悩み事が増えたために、心労が増したのだ。原因は愚兄と賢弟のことだ。


「ていうか、サエナリアさんにマジで惚れてんのか? あいつがあんな顔するなんて……」


レフトンの弟のナシュカはとても頭がいいが、感情が出にくい性格だ。社交でも愛想笑いすらぎこちないぐらいだった。だが、ナシュカがサエナリアのことを評価するときに笑っていた姿は、確かな感情を感じられた。だからこそ、レフトンは「もしや!?」と思って、複雑な気分になった。


全て、とは言えなくても、大体のことは把握している身であるためにつらい。


「もしもナシュカがサエナリアさんのことを本気で想っていたのなら……俺はどうすりゃいいんだ? 全部言っちまえばナシュカはどう出るか分からねえぞ」


ナシュカが本気でサエナリアを思い幸せにしたいと考えているならば、兄として応援はしたい。だが、ナシュカは「王家の権力を使ってでも取り込んでもおつりがくると思っているよ」と口にしていた。つまり、居場所が分かれば問答無用で攫っていくと受け取れなくもない。そう考えるとレフトンは頭が痛くなる。


「思い切ってサエナリアさんのことを話すほうがいいか? あいつならサエナリアさんを幸せに……いや、ナシュカは『個』よりも『全』を重んじるタイプ。人一人よりも国のために動くだろうな。あいつに渡るとサエナリアさんの意思関係なしに国の中枢で働かされちまう可能性がある。あいつ自身が愛国心が高いし、それに……」


ナシュカは言っていた、『先に会って、カーズ兄さんが深く反省してるって説得すればいいの』と。レフトンは素直にいい考えだと思ったのは表向きだけだ。それをそのままの意味だけだと解釈できなかった。裏の意味は結構残酷に解釈していた。


「(先に会って説得。それは自分だけがサエナリアさんに会って、反省したらしい兄貴の心にとどめを刺すように仕向けるということ。そう考えてもいいだろうな。もしも、ナシュカが本気で兄貴を蹴落としてサエナリアさんと婚姻を結ぶ気でいるなら……兄貴をあのままに、王太子のままにしておくつもりもないなら……。くそっ、考えたくはないがそんな想像ができちまう)」


レフトンが頭の中で想像したのは、カーズがサエナリアに振られて王太子から失脚し、それをナシュカが陰で腹黒そうな笑みを浮かべるという光景だ。更には、ナシュカとサエナリアが結婚式を挙げて、レフトンと廃人化したカーズが見守るという光景まで……。


「いやいやいや! 兄貴が自業自得なのはわかってるが、兄貴には反省したうえで立ち直ってほしいんだ! ナシュカには幸せになってもらいてえが、兄貴を蹴落としたりサエナリアさんに無理矢理迫るのはいけねえ!」


レフトンは頭を横に振った。一旦頭を冷やして考え直した。今のサエナリアは幸せだと聞いている。それなのに、再び貴族の世界に戻すというのは酷なことだと思える。ただでさえソノーザ公爵家の歪な家庭で暮らしてきていたと、カーズが問題を起こす前から聞いてしまっているだけに、恋慕の情はなくても幸せになってほしいと思わざるを得ない。つまり、レフトンはナシュカの恋(?)を応援できそうにないのだ。


「……仕方ねえ、俺はソノーザ公爵家に行くしかねえか」


レフトンはナシュカに宣言した通り、見えないところで調べることにした。ナシュカやカーズの目が届かないところで。





===============あとがき===============


本当に申し訳ありませんが、一旦ここで区切らせてもらいます。理由は下書きが尽きたからです。ごめんなさい!


そういうわけで2月の『行方不明!?』はここまでです。下書きがたまれば、再開します。


ですが、今日から新作の『敗北した女神と普通の少年』を毎日投稿します。こちらもよろしくお願いします。

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