第5話受け継がれし心

草原の入り口でアルド達が話し始める。

アルド「その剣は どうして あの場所に置いてあったんだろう?」

アルドがサイラスが持つ剣を指さす。

サイラス「あの場所でカエルにされてしまったとしたら

 今は剣を持つことができないからか 何かの目印でござろうな」

エイミ「未来の本には 大型ガエルが街を襲ったってあったけど

 何か関係してるのかしらね? あの場所が重要な場所だったとか?」

アルド「うーん 今は情報が足りないな・・・」

サイラス「あ 来たでござるぞ」

サイラスが遠くへ視線をやると、アルド、エイミも続いて振り返った。


男たちが数人、こちらへぞろぞろと近づいてくる。

夫婦の子も一緒だ。

酒場の客「兄ちゃん達、またせたな」

アルド「一緒に来てくれる人たちで いいののかな?」

見知らぬ男「ああ オレも行くよ」

その男は、サイラスを化け物ガエルと間違えた男だった。

サイラス「その御仁も 一緒に来てくれるでござるか」

見知らぬ男「この前は いきなり疑って悪かったよ

 オレもあの夫婦に 恩があるからな 何か力になりたいんだ」

エイミが男たちを見て言った。

エイミ「とっても慕われてたのね その夫婦」

酒場の客「おう だから みんなが集まったんだよ」

そういうと、酒場の客が男たちのほうへ手をやる

酒場の客「今は挨拶してる場合じゃねえからな 

 一緒に来てくれる仲間たちだ 話し合った結果

 この子も一緒に連れてくことにしたよ」

男たち「よろしく」「この子は絶対守るよ」

アルド「こちらこそ 来てくれてありがとう」

子ども「よろしく!」

サイラス「よろしく でござるぞ」

サイラスと子どもは笑いながら互いを見た。

酒場の客「じゃあ 案内してくれ」

アルド「わかった」

アルドは振り返り、皆に聞こえるような声で、言った。

アルド「オレは先頭を行くから サイラスは最後についてきてくれ

 エイミはその子のそばで 頼む」

エイミ「わかったわ」

サイラス「了解したでござる」

アルド「じゃ 気を付けて進もう こっちだ」

アルドは草原の入り口を指さし、歩き始めた。

サイラスたちも後に続く、一行は草原の中へ入っていった。


草原も奥へ進み、あと少しで目的の場所につくところまできた。

アルド「もうすぐ目当ての場所につくけど 何か変わったことはないか?」

アルドが振り返り、サイラス達に問いかけた。

酒場の客「特段 異常はねえな」

エイミ「集団だから 魔獣も出てこないのかしら?」

サイラス「後方からも見ていても 特に問題はないでござるよ」

アルド「わかった あと少しだ」

アルドは進んでいく。

しばらくすると、×印がついてある目的地についた。

アルド「ここだ」

サイラス「お借りしたこの剣 お返しいたす」

サイラスが剣を目印のところへ置こうとした。

エイミ「あれ?」

エイミが何かに気づいたようだ。

エイミ「このプリズマ、あっちのほうから来てるの?」

エイミが地面を指さす。

以前見つかったプリズマの破片と同じようなものが、

遠くの場所から放射状に散乱しているように見える。

アルド「あれ?本当だな」

サイラス「少し見てくるでござるか」

サイラスがそう言った瞬間、草木が揺れた。

「ガサガサ、ガサガサ」

エイミ「んん?」

皆が振り向くと、そこには大きなカエルが立っていた。

カエル「ケロケロ」

サイラス「カ、カエルでござるな・・・」

一番驚いたのはサイラスだった。

酒場の客「あ こいつだ オレ達を襲ったのは」

カエル「ケロケロ、ケロケロ」

見知らぬ男「ん 襲ってこない?」

子ども「カエルだー」

子どもの声に反応するカエル。

カエル「ケロケロ、ケロケロケロ」

エイミ「何かを伝えようとしてるのかしら?」

アルド「やっぱり オレ達じゃなく 街の人に反応してるような・・・」

サイラス「拙者、カエル語はわからんでござるが

 ここから立ち去れと 言ってる気がするでござるよ」

カエルと一行がお見合いしているとき

「バン!」

近い場所から破裂音が聞こえた。

アルドが音がした方へ振り向く。

アルド「なんだっ?」

時、同じくして、キラキラ光るものが空から落ちてくる。

エイミ「これ プリズマ?」

サイラス「むう 何かが起こっているでござるな」

アルド「音が聞こえるほうに 行くしかないか!」

酒場の客がアルドを呼び止めた。

酒場の客「おい!」

アルド「ここは危険かもしれない 少し戻って安全な所まで

 その子と退避していてくれないか すまない」

酒場の客「ああ わかった 気をつけてな」

酒場の客はつぶやいた。

酒場の客「このカエルは オレ達に警告してくれてたのかもな・・・」

カエルは酒場の客や子をじっと見ている。

酒場の客「周りに気を付けて、少し戻ろう」

酒場の客が男たちへ向かって、声を上げた。

男たち「ああ」「この子を守るぞ」

酒場の客が子どもに諭すように話す。

酒場の客「兄ちゃん達は向こうへ行ったけど

 オレ達は少し戻る 一緒に行こうな」

子ども「わかった! 約束は守るって決めたからね」

男たちとその子は、ゆっくり周りを見ながら奥地から離れた。

そのやりとりを見ていたカエルはその姿を確認すると、

アルド達が進んだほうへ走り出した。


アルド達が音がした方向に進んでいくと、辺りの光が強くなってきた。

アルド「これ プリズマなのかな?」

エイミ「ええ きっとそうよ」

サイラス「あそこでござる!」

サイラスが手を向けたその先に、大きな光る石のようなものがあった。

その隣には、さっき遭遇したカエルのようなものが見えた。

アルド「あれ カエルがいる?」

エイミ「え? さっきいたんじゃ?」

サイラス「やはり2体いたでござったか?」

サイラスの声に応答したかのように、後方から声が聞こえる。

カエル「ケロケロ、ケロケロ」

アルド「あっ 同じカエルか?」

エイミは前の光る石とそばのカエルを見ている。

エイミ「あの石を守ってるのかしら?」

アルド「わからない でもカエルは襲ってきたりしないな」

「バン」

また破裂音が響く。

エイミ「プリズマがシャワーみたいになってる?」

光るものが、また空から降ってきた。

すると、すぐ近くから魔獣らしき声が聞こえた。

「グオオオッ」

アルド「何の声だ?」

アルド達が声がした方を振り向くと、大きな魔獣が出てきた。

サイラス「こっちへ来るでござるよ」

アルド「仕方ない 戦うぞ!」

大きな魔獣との戦闘は始まった。


すぐにエイミが気づいた。

エイミ「この魔獣 大型化してる?」

サイラス「そう言われると この近辺の魔獣にしては 大きいでござるな」

アルド「このプリズマが原因かもしれない 魔獣よりプリズマのほうか!」

アルド達は魔獣の攻撃を防ぎながら 大きな光る石の前に着いた。

すると、石の近くにいたカエルがアルド達と魔獣の間に入った。

カエルと魔獣が睨みあう、相対する状態になった。

サイラス「カエル・・・守ってくれるでござるか?」

サイラスは魔獣とカエルの方向を見ている。

アルドとエイミは「コツコツ」と武器で軽く叩き、で石の様子を確認している。

アルド「ぐっ これは剣が通らないのか?」

エイミ「これ 硬いわね」

アルド「そうだ」

アルドが何か思いつく。

アルド「サイラス そのカエルの剣で 叩いてみてくれ」

サイラスが振り返ると、剣を指差した。

サイラス「置いてあったこの剣でござるか?」

アルド「ああ 頼む」

サイラス「了解したでござる」

サイラスは剣を振りかざす。

サイラス「いざ!」

言葉と同時に剣を大きな石に叩きつけた。

剣が石に当たったと同時に少し鈍い音がした。

「バリ」

サイラス「ん 割れたでござるか?」

エイミ「ええ そのようね」

アルド達は石を見つめる。

アルド「割れたところから 何か出てきたな」

アルドが後ろに下がる。

しばらくすると、石から出た液体が石の周りにたまっていった。

サイラス「少し下がるでござる」

サイラスがそういって、後ろを振り向くと、魔獣とカエルの動きが止まっている。

エイミ「あれ?動いてない?」

エイミが異変に気づいた。

アルド「今は 少し離れた所へ 逃げよう」

アルド達はそう言って、カエル、魔獣を背に走り出した。


しばらく走ると、酒場の客たちが見えてきた。

酒場の客「おーい 何があったんだ?」

アルド「何が起こったかわからないから 逃げてきたんだ」

サイラス「逃げるが勝ちでござる」

エイミ「(・・・・・・)」

エイミが何か考えているようだ。

エイミ「カエルが2体いて 顔見知りの人たちをあの石から守ってた?

 さっきは魔獣がプリズマで変化した? うーん」

アルドがエイミのつぶやきに気が付いた。

アルド「カエルと魔獣の動きが止まったのは あの石が壊れたからなのかな?」

エイミ「なるほどね!」

思いついたかのようにエイミが石のあった方向へ振り返り、また走り出した。

アルド「エイミ!」

アルドが呼び止めると、エイミが大きな声でアルド達へ話した。

エイミ「大事な手がかりがあるかもしれない!わたしはさっきのところへ戻るわ!」

サイラス「拙者も行くでござるよ」

サイラスが応じる。アルドは考える。

アルド「うーん オレは・・・」

アルド「すまない 誰か1人ついてきてくれないか?」

少し考えたのち、アルドが酒場の客たちに呼びかけた。

酒場の客「よくわからねえが オレが行くよ」

酒場の客が手を上げた。

アルド「こっちだ ついてきてくれ」

アルドがエイミ達を追って、走り出す。

酒場の客「お おい 速いな」

酒場の客も負けじと、アルドを追いかけた。


エイミが石のあった場所へ戻ってきた。

エイミ「あっ!」

エイミの声に、サイラスが反応する。

サイラス「どうしたでござるか!」

エイミ「こ これは・・・?」

サイラス「むむ・・・人が2人とカエルと魔獣が倒れてるでござる・・・」

エイミは走り出して2人の元へ駆けた。

エイミ「ちょっと!大丈夫?」

エイミが2人の体を揺らすと反応があった。

男「う・・・うう・・・」

女「ぐっ・・・」

サイラス「大丈夫でござるか!」

サイラスも声をかける。

「グオ・・・」

サイラスの声に反応したように、魔獣が立ち上がった。

サイラス「ぐ・・・」

サイラスが倒れた2人を守るように、前に出ると

それに気づいた魔獣は後ずさりしながら、

ゆっくりと草むらの中へ入っていった。

サイラス「逃げた でござるか?」

サイラス「このカエルも ここでは危なかろう 

 少し場所を移させてもらうでござる」

サイラスはカエル2体も草むらの近くへ移動させた。

サイラス「よかったでござる さて 次はこのご両人の救護でござる」

サイラスが振り返り、2人のほうを向くと、アルドが酒場の客を連れて走ってきた。

アルド「おーい!」

サイラスが簡単に説明した。

サイラス「アルド 見ての通りでござるよ」

酒場の客「おい!大丈夫か!」

酒場の客がわき目もふらず、倒れている2人の元へ駆けてきた。

エイミ「大丈夫 意識はしっかりあるわ」

エイミがこたえると、酒場の客は安どの表情を浮かべた。

酒場の客「よかった・・・本当によかった・・・」

アルド「この2人は・・・その・・・いなくなった夫婦でいいのか?」

アルドがためらいながらも聞くと、酒場の客は声が上げた。

酒場の客「ああ!そうだ!どこへ行ってたんだか・・・ったく」

エイミ「わたし あの子を呼んでくるわね!」

サイラス「エイミ 頼んだでござるよ」

酒場の客「何から何まで すまねえ」

エイミが走り出す。

男「お おお・・・」

女「ひさし・・・ぶりね・・・」

酒場の客「気が付いたか! おう オレだよ!

もうすぐお前たちの子もくるぜ」

酒場の客の声は荒い。

男「聞こえてるよ・・・ちょっとずつ戻ってる」

酒場の客「ん? 戻ってるって・・・?」

女「私たち カエルになってたのよ・・・」

酒場の客「おう にわかには信じがたい話だが

 そうなんだってな!」

男「あれ・・・驚かないのか・・・」

酒場の客の視線の先が、2人の顔とアルド達を往復している。

酒場の客「ああ こいつらが全部解決してくれたんだぜ

 カエルにされちまったから オレ達を連れていくってな

 情けないが オレは何もしてないんだ」

アルド「そんなことないよ あんた達の想いで こうなったんだ

 オレ達は ただほんの少し 手伝っただけなんだ」

女「ありがとう・・・」

女がそう言うと、遠くからエイミが子と男たちを連れてきた。

子ども「お父さん!お母さん!」

子どもが2人のもとへ走り出す。

子ども「今までどこいってたの! カエルになっちゃったとか・・・

 聞いたから・・・ぐす・・・」

子どもが2人の間で座った。

男たち「おやっさん!」「おかみさん!」

男たちも2人のもとへ集まる。

アルドが2人に聞いた。

アルド「ここは危ないし 少し 移動したい 肩を借りたら 歩けそう?」

男「ああ・・・大丈夫だ」

女「ええ 今は動きにくいだけで それくらいなら」

アルドは街の方向を見た。

アルド「よし ここで長居はできないし ひとまず街へ帰ろうか」

酒場の客「ああ 仲間のことなんだ オレ達にも手伝わせてくれよな」

サイラス「よろしく頼む でござる」

エイミ「わたしたちも 何か起きないか 辺りに目を光らせておきましょ」

アルド「ああ そうだな 帰ろう」

一行は、街の方向へ歩き出した。


アルド、サイラス、エイミが振り返り、光る石があったところを見た。

アルド「今は 光る液体があるだけで 何も起こらないな・・・」

サイラス「カエルになったのはやはりあの石が原因でござったか?」

エイミ「サイラス あの剣は?」

エイミがそう聞くと、サイラスが剣を取り出した。

サイラス「拙者は元々何も起こらなかったので わからんでござる」

アルド「じゃ オレが触ってみよう」

そう言ってアルドがサイラスが持っている剣を触った。

アルド「あ 大丈夫だ」

エイミも手を伸ばす。

エイミ「本当ね やっぱり これもあの石が原因だったのね」

サイラス「そのようでござるな では拙者達も彼らに追いつくでござるよ」

そういって、アルド達は一行とともに街へ帰っていったのだった。

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