第3話3つの異点
アルド達は草原の奥地へたどり着いた。
サイラスのつけた印がはっきり残っている。
サイラス「目印があったでござる」
サイラスはそういうと、×印をつけた場所に立ち、そっと刀をおいた。
サイラス「まずは拝借した刀を お返しするでござるよ」
アルド「えーっと 何から調べようか?」
アルドはサイラスとエイミに問いかけた。
エイミが手をあげる。
エイミ「わたしは 微細プリズマがひっかかってるわね」
サイラス「エイミ それは妄想の類扱いの話でござるぞ 」
エイミ「ええっ? あなたがいうの?」
サイラス「すまんでござる・・・ちょっと 言ってみたかっただけでござる」
サイラスはエイミに対してはすぐに謝ってしまうようだ。
エイミ「そうね 近い未来に この辺りで何かが起こること
行方のわからない夫婦 カエルの話
全部考えたら それぞれが少しはつながってるように思うわ」
アルド「その間に入るものが微細プリズマってわけか」
エイミ「ええ 微細って表現だし しっかり探さないとわからないくらいかも」
アルド「じゃあ 注意して 探そうか」
サイラス「おう でござる カエルにも気を付けるでござるぞ」
アルド「(サイラスがカエルに気をつけるっていうのも
なんだか不思議な感じだ)」
アルド「ああ あまり離れずに 慎重にいこう」
注意深く地面を探すアルド達。
しばらくすると、エイミは何やら光るものを見つけた。
エイミ「アルド!サイラス!ちょっとちょっと!」
サイラス「どうしたでござる」
アルド「なにか見つかったか?」
エイミが地面を指さす。
エイミ「これ 小さな石くらいの プリズマっぽいんじゃない?」
サイラス「本当でござるか?」
アルド達はじっと地面を見ると 確かにそこに光ったものが落ちていた。
アルド「確かに 言われるとそう見えなくもないな・・・」
サイラス「でも小さくて プリズマかどうかはよくわからんでござるな」
エイミ「きっとそうよ! あの剣の近くに落ちてるなんて
偶然よりも 何か関係していると思って いいんじゃない?」
サイラス「ラチェットに見てもらうのがよさそうでござるな」
エイミ「そうね 間違いだったら それこそ妄想の類になっちゃうしね」
エイミはほんの少し、笑いながら言った。
アルドはしゃがんで、その小さな光る石を拾う。
アルド「じゃあ これはラチェットのところへ持っていこう」
こうして、アルド達は再びラチェットのもとへ向かった。
再び、サイラスがラチェットに話しかける。
サイラス「ラチェット 何から何まで頼って 申し訳ないでござるが・・・」
ラチェット「あら 難しい顔して また何かあったの?」
アルド「(あれ? これさっきも見たやり取りだな・・・?)」
アルド「この小さな石みたいなものなんだけど・・・」
アルドは懐にしまった小さな石を取り出し、ラチェットに見せた。
エイミ「これ プリズマに関係してるものなんじゃないかって
思ってるんだけど 小さいからよくわからないのよね」
ラチェットはアルドの手にある小さな石を見つめる。
ラチェット「確かに小さくて わかりづらいわね
これが何か 調べたらいいのね?」
アルド「ああ オレ達には これが何なのか判断がつかなくって」
ラチェット「まかせて頂戴 ちょっと待っててね」
ラチェットはそう言うと、その石を持って部屋の奥へ入っていった。
しばらくたったのち、ラチェットが奥から帰ってくると、
やや高揚している様子で話し始めた。
ラチェット「これ!プリズマの可能性がかなり高いわね!
プリズマ破片っていえばいいのかしら
あまり見ない形だけど 少なくとも単なる石じゃないわ」
アルド達の顔が明るくなっていく。
エイミ「やっぱり そうだったの 思った通りね」
サイラス「ラチェット 感謝するでござる」
ラチェットが石を差し出しながら言った。
ラチェット「この石がこの前の刀と何か関係してるの?」
アルド「それはまだ はっきりしなくて・・・
でも プリズマだとしたら 何かのつながりはありそうなんだ」
ラチェット「そうだったのね でもこれは破片のようなものだから
もう少し大きな 本体があるかもしれないわ」
サイラス「本当でござるか?」
ラチェット「でもわたしがわかるのは このぐらいね」
そう言って、ラチェットはアルドへその石を返した。
アルド「ありがとう ラチェット」
ラチェット「ええ 力になれることがあったら いつでも頼ってちょうだい」
アルド「草原の奥地へ戻ろうか」
パルシファル宮殿を出たアルド達は、再び草原の奥地へ戻ってきた。
アルド「他に 何かあったかな?」
アルドはそう言うと、何か思い出したかのように話し始めた。
アルド「そういえば 行方がわからない夫婦は
小さな池の薬草を取りに行ったんだったな
池の辺りに何かないか探してみようか」
サイラス「そうでござるな 足取りをたどってみることも 重要なことでござる」
アルド達は小さな池が目印の、薬草のある場所を探し始めた。
歩き始めて、少し奥へ進んだところに小さな池が見えた。
アルド「この辺かな?」
辺りを見渡すアルド達。
サイラス「うーむ 特段変わった点は見受けられぬでござるが・・・」
エイミ「あっ あれなんじゃない?その薬草って」
エイミが指さすほうへ、アルドとサイラスの視線が向かう。
サイラス「おお 拙者 薬草の知識はないでござるが
確かに これはあまり見かけないものでござる」
アルド「うーん でも何も変わったところはなさそうだな」
エイミ「少し この薬草を頂いておきましょう 傷口に効くらしいしね」
エイミは走って薬草のある場所へ行き、それを摘んだ。
それらを、少しばかり懐に入れた。
アルド「そうだな でも他に手がかりも見つからないし さっきのとこに戻ろうか」
アルド達は×印のある場所まで戻っていった。
アルド「うーん 剣以外は 何も違和感のないところだけど・・・」
アルドはそういうと大きな息を吐いた。
サイラス「アルド エイミ」
エイミ「サイラス どうかした?」
サイラスは少しうつむいていた。
サイラス「カエルの手がかりが 全くないでござるよ」
アルド「そうだな 未来の本だと・・・カエルの軍団?が襲ってきたとか
にわかに信じがたい話だったけど・・・」
サイラス「あの剣 もしカエルの武器だったとしたら・・・」
アルド「ああ 今なら そう考えるのも間違いじゃないな」
サイラスの言葉が、はっきり強くなったのがわかった。
サイラス「拙者と同じような姿形をしてるのではござらんか?」
エイミ「二足歩行で服を着てて 武器を携えてるってこと?」
サイラス「そ そこまでは 言ってはござらんが・・・」
サイラス「しかし 実物を見たという酒場のお方は
拙者を見て大そう驚いておられた」
エイミ「恐怖という感情も あったかもしれないわね」
サイラス「アルド達と一緒にいて 例のカエルとは違うとわかってても
聞かずにいられない そんな印象でござった」
サイラス「ということは・・・そのカエルと拙者は
見た目の違いが少ないと言えるではござらんか?」
アルドはサイラスの目をしっかり見ている。
アルド「うーん そうかもしれないけど
オレ達は サイラスと同じ姿でもすぐ見分け付くと思うよ」
エイミ「そうね 姿形は同じでも それ以外の動きとか癖なんかは
全然違うんじゃないかしら?」
サイラス「では 同じ声 同じ仕草であったならば どうでござろう?」
アルド「そこまでくると 見分けるのが難しいかもしれないけど・・・
そこまで 一緒ってあり得るのかな?
エイミ「どうして そこまで気になるの?」
サイラスは空を見上げるような恰好で話し始めた。
サイラス「ふと思ったのでござるよ 拙者は 拙者と同じ見た目の
カエルと戦ったことがないでござる」
アルド「確かに サイラスは呪いでカエル姿になったわけだから
同じ見た目のカエルがいる可能性も ゼロではないわけだよな」
サイラス「その通りでござる 同じ呪いがかかったカエルがいるかもしれぬし
人は 人を見分けられても カエルを見分けるのは至難の業でござろう?」
エイミ「普通の人だと そのカエルの仲間だと 思っちゃうでしょうね」
サイラス「そういうわけで 拙者が拙者たるものを考えたでござるが・・・」
アルド「ああ」
サイラスがアルド、エイミをじっと見た。
サイラス「一番わかりやすいのは 太刀筋じゃないかと
そういう結論になったでござる」
エイミ「太刀筋?」
サイラス「そうでござる ちと恥ずかしいでござるが
拙者 この刀裁きには少しばかり自信がござって・・・」
アルド「それはオレもよく見てるよ 多分言葉がなくっても
サイラスってわかるんじゃないかな?」
またサイラスの言葉が強くなった。
サイラス「そうでござろう! そこで この際
アルド達と少しばかり刀を合わせて 確認しとうござる」
アルド「え?確認って?」
いきなりの提案に、アルドも聞き返す。
サイラス「練習と実践を兼ねた 戦いでござる」
エイミ「うーん そこまでしなくっても・・・」
サイラス「戦いといっても 殺し合いじゃないでござるよ」
アルド「そりゃそうだよ! でも サイラスとはじめてあったときは
戦ったんだよな」
サイラス「幾分昔の話になり申した
あれから多くの たくさんの戦いをアルド達と・・・
ああ・・・感傷に浸るときではござらんな」
サイラスは少し間をあけて、再び話し始めた。
サイラス「そう 互いの武器で語り合うのも 侍として憧れるところでござる」
エイミ「え?憧れ?」
エイミの表情が先ほどから固い。
サイラス「あ・・・失礼 いいきっかけと思うており
試し合いをお願い申し上げるでござる」
アルド「うーん サイラスがそこまで言うなら やってみようか」
エイミ「アルド いいの?」
エイミがアルドの目を見た。
アルド「ああ 何も本気で戦うんじゃなくて
サイラスと戦いの練習をするようなことだし
もしかしたら 例のカエルと戦うことになるかもしれないしさ」
エイミ「わかったわ サイラスが納得いくところまで やってみましょうか」
エイミ「いつもの武器でいいのね?」
サイラス「改めて よろしくお願い申し上げる いざ!」
サイラスが一礼すると、アルドのほうを向いた。
こうして、サイラス対アルドの試し合いがはじまった。
アルド「よし!いくぞ!サイラス!」
サイラス「ケロケロ ケロケロ」
アルド「えっ?えええ?」
意表を突かれたアルド、少し腰が引けている。
サイラス「失礼 拙者の想像しているカエルでござるよ」
アルド「そ そうなのか・・・」
アルド「(サイラス 何だか気分が乗ってるみたいだな)」
サイラス「ケロケロ ケロケケケー」
サイラスが叫びながら、アルドに向かって武器である刀を振り下ろす。
アルド「危ないっ」
アルドの武器である剣がサイラスの刀をはじいた。
はじかれた刀につられ、一瞬隙ができたサイラスへアルドが剣を打ち込む。
アルド「ここだっ」
サイラス「ケロ?」
サイラスもアルドの剣を軽々はじいた。
まるで造作ないことだといわんばかりの表情だ。
サイラス「ケロケロ」
アルド「さすがサイラス 一筋縄にはいかないみたいだ」
サイラス「ケロケロ ケロケロケロー」
サイラスが叫びながら走り出すと、今度は刀を下から繰り出した
アルド「やあっ」
アルドは素早くサイラスの刀をよけると、脇の下を狙って剣を打ち込んだ。
サイラス「参ったでござる」
アルドの剣が、サイラスの脇で止まっていた。
アルド「あ サイラスが元に戻った」
アルドは少しほっとした表情を浮かべた。
サイラス「アルド 流石の剣裁きでござった」
アルド「サイラスも 動きが素早くて オレも危なかったよ」
お互いの顔がしっかりと緩んでいる。
サイラス「多くの戦いを共に経験したからでござろうか
なんとなく アルドがこう動くんじゃないかと予測できたでござるな」
アルド「ああ 何だか オレも 最初に戦ったときより
サイラスが手ごわく感じたよ」
サイラス「んん? というと はじめて戦った時は
あまり強くなかったでござるか?」
アルド「いや そうじゃなくて ともに戦ってきたからこそ
サイラスの変化がわかったんだ」
サイラス「そう言ってもらえるのは ちと照れるでござるな」
サイラスは緩みっぱなしの顔を「キッ」と普段の表情へ戻し、エイミに話しかけた。
サイラス「では エイミ よろしく頼むでござる」
エイミ「ええ それじゃ いくわよ!」
待ってましたと言わんばかりに、
エイミはサイラスの態勢が整う前に拳を打ち込んだ。
エイミ「とりゃあっ」
サイラスはなんとかエイミの拳を刀で防ぐも、
その勢いは抑えられずサイラスの態勢が崩れた。
サイラス「ケ ケロロー」
アルド「(あ それまだやるのか・・・)」
エイミ「ラストっ」
エイミが勢いよく拳を、サイラスの刀の鍔部分へ狙い定めて打った。
「ガシッ」
エイミの拳があたると、握りが甘かったサイラスの刀は、
その衝撃で手から離れてしまった。
サイラス「降参でござる」
エイミ「サイラス どうだった?」
誇ったような表情のエイミ。
サイラス「うーむ まず迫力が違ったでござるよ」
エイミ「嬉しいような 嬉しくないような・・・少し複雑ね」
エイミは予想外の言葉に戸惑った。
サイラス「あとは 瞬時に弱点を見抜くところは 流石エイミでござった」
エイミ「ははは でもちょっと不意打ちみたいになっちゃったかしら」
サイラス「いやいや いつ何時 敵が襲ってくるかわからんでござるからな」
サイラスがそう言うと、少し声色を変えた。
サイラス「ある意味 油断が一番の敵でござるよ 逃げるが勝ちとの言葉も、
油断という罠にかかれば 逃げることもままならんでござるからな」
エイミを見るサイラス。
サイラス「その点 エイミはよく理解しておるでござるよ
戦いに身を置くものとしては 重要なことでござる」
エイミ「そうね あまり 意識してなかったけど・・・」
サイラス「本能でござるか?」
サイラスの言葉が少し上ずった。
エイミ「ちょっと 静かにしなさい!」
アルド「ははは なんだか遊んでしまったような感じだな」
サイラス「ご両人 感謝申し上げる 拙者としてもいい経験でござった」
サイラスはそう言うと、2人に向かって礼をした。
アルド「ああ こちらこそ 得るものが多かったよ ありがとう」
アルドが辺りを見回し、サイラス、エイミに問いかける。
アルド「とりあえず 今 ここでわかりそうなことは 一通り見れたかな?」
サイラス「そうでござるな 気になることは増えたでござるが・・・」
エイミ「あまり 進展している感じは しないわね・・・」
アルド「薬草 プリズマの石 剣・・・
うーん もう一度街へ帰って 今度は息子さんにも話を聞いてみようか」
エイミ「ええ じっとしてても何もはじまらないしね」
サイラス「カエルと遭遇する気配もないし 今は街へ戻るでござるよ」
サイラスが剣を持つと、小さな声でつぶやいた。
サイラス「また 拝借するでござる」
こうしてアルド、サイラス、エイミはゆっくり街へ帰っていくのだった。
「ガサガサ・・・」
同じとき、アルド達を遠くから見つめるものがいた。
「ケロ・・・」
カエルと思わしき、その生命体は、
アルド達がその場から立ち去るのをただただ見ているのだった。
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