EX、煮干し戦線。(高難易度バトル)

 とある受難者の祝福をクリア後。

最果ての島、墜落している船付近。

群れを成して何かを行う複数の猫を見つけたアルド。

アルド「……このニオイは」

猫「ナァ……」

猫「……ナァナァ」

猫とは思えぬような規律ある動きで作業する猫たち。

そしてアルドは、その作業の正体を理解した。

アルド「猫が採ってきた魚を自分たちで干物にしているのか⁉」

小さな島の片隅で猫たちが行っていた予想だにもしていなかった文明行為に思わず声を大きくするアルド。

猫たち「「「……‼」」」

その声に無心で働いていた猫たちは動きを止め、アルドを見つめ始める。

アルド「うわっ⁉ な、なんだ……?」

まさにその光景は異様であった。盲目的に仕事をこなしていた者たちが、まるで一つの意志で動かされているかの如き挙動を見せ、すべからく心の失われているような瞳にアルドを映す。そして——、

猫「フシャーーーーー‼」

一斉にアルドを警戒し威嚇し始める猫の群れ。

アルド「ちょっと待ってくれ、俺に干物を盗む気は無いって」

それでもまだアルドは疑ってはいなかった。これもまた長い旅路の中で経験した様々な不思議の一つなのだという認識であった。しかし、

ニャントム?「オナカガ、スイタ……」

猫たちが群れ成してアルドを威嚇する背後で燻り始める黒い煙状の意志。或いは蒼白い炎のようにも見えるソレが蠢き始める。

アルド「……ファントム……なのか……?」

するとアルドは何処となく既視感を感じる。その存在を知っているような気がしたが、どこか違う気配も感じて戸惑い、ファントムという存在に猫耳が付与されている奇妙な姿に首を傾げて。

不倶戴天の敵にも等しいファントムのような風貌のニャントムに対し、アルドの感情は留まる事の無い混乱の様相。

猫「ニャァァ、ニャァァ」

ニャントム「オナカガ、スイタ……」

だが、一方のニャントムは、まるで慕われる猫の王のような佇まいで、亡霊の如くその場に漂っているだけのようである。しかしそれでも、どこか疑わしく不穏。

或いは、ファントムという存在を知っているが故の先入観なのかもしれない。

アルド「まさか……コイツが猫たちを操っているのか……‼」

ニャントム?「オマエ、ウマソウナモノ、モッテル」

けれどアルドの直感通り、不可視の不穏が蒼白い炎によって露になる。

猫「……ニャアア‼」

再びの威嚇、牙を剥き始める猫たちの群れ。

アルド「くっ、俺を襲わせるつもりか⁉」

思いもよらぬ事態に思わずアルドは剣を抜いた。

——猫二匹とニャントムとの戦闘。

※シオンの煮干しを二個以上所持していないとクリア不可。

*二個以下の場合。

戦闘開始時、会話。

アルド「駄目だ‼ 操られている猫を攻撃する訳には……何か猫たちの注意を惹くものがあれば……‼」

ニャントム「煮干シ。集メテ」

ニャントム「ガレク、シツゲン。ヴァルヲ」

***

煮干しを持たない場合、ニャントムは猫を盾にする。

アルド「しまった‼ 猫に攻撃が……‼」

ニャントム「……ネコネコネコ‼」

猫を攻撃すると、ねこ好きキャラのシルエットをした敵が何処からともなく登場し、

カウンターを発動。ねこ好きのアナザーフォース発動。即死攻撃。

*シオンの煮干しが二個以上の場合。

アルド「駄目だ‼ 操られている猫を攻撃する訳には……何か猫たちの注意を惹くものがあれば……‼」

ネコ「にゃあ……‼」

アルド「ん……? 何かに反応してる……もしかしてこの煮干しか?」

アルド「よし‼ これを喰らえ‼」

ネコ「ニャァァ‼」

アルド「これでアイツと戦える‼」

煮干しを投げるとニャントムの盾になる猫が逃げる。

——ニャントムとの戦闘開始。

ニャントムはパーティーにデバフ攻撃をしつつ、ねこ好きのキャラのシルエットの敵を召喚し戦闘。召喚されるキャラはニャントムの死亡回数とHPに依存。

※顕現マリエルの力を用い、数回蘇る。

*勝利後。

アルド「はぁ、はぁ……勝ったか……?」

長期戦を勝ち抜き、膝を着くアルド。

ニャントム「……オナカガ……スイタ……」

横たわるニャントムは、風前の灯火の如く息絶え絶えに呟く。

アルド「……この煮干し、食べるか?」

そんな様から放たれた言葉に、物思ったアルドは懐に残っていた煮干しをニャントムに差し出す。その表情は、とても穏やかなものであった。

ニャントム「クレル……ノ?」

差し出された嘘偽りのない善意を目の当たりにしたニャントム。

その声は、まるで純朴な少女のようで。

アルド「ああ。たらふく食えよ、足りなかったら俺がなんとかするから」

ニャントム「……アリガ……トウ」

そしてやがて消えていく。ニャントムの体は煙のように空に昇り、和やかに空気へと溶け始めて。

アルド「腹が減っていたらイライラするもんな。気にするなよ」

先の戦いの憎しみは既に失せ、アルドは笑った。

憎悪の連鎖を断ち切るように、追悼し、空に溶けていく煙を見送るアルド。

終末の空は青く、ふと傍らの足下に目を送ると——、

ネコ「ニャアア……」

一匹の猫が鳴き声を漏らし、自由を満喫するが如く自らの舌で毛づくろいを行う。

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