平和の祈りの地 長崎

次は長崎

「今日は災難でしたねえ。これでも食べて休んでくださいや」

 中村を出てすぐ、車掌さんがやってきて翔太たち三人にカステラを差し出した。

「ラッキー! 車掌さんありがとー」

 いの一番にカノンが手を伸ばして、つまようじで一切れ口に放り込む。「おいひー!」と言いながらペットボトルのお茶を口に含んだ。甘いものには目がないんだから!

「それで車掌さん、次の駅はどこなの?」

 翔太がふと思い出して聞くと、車掌さんは「ふっふっふ」ともったいぶったように笑って今食べているカステラを指さした。

「ここですよ」

「カステラ……ってことは長崎ね」

 カノンがもごもごしながら付け加える。

「長崎……って確かかもめが走ってるところだね!」

「かもめはどこでも飛んでると思うけど……」

 また少しズレた会話になったけど、翔太は気付く様子もない。かもめっていうのは新幹線かもめのことだ!

「長崎はですねェ、異国のおいしい食べ物がありますから私は個人的に好きですよ、えぇ」

 車掌さんは大きな目玉で上を見ながらジュルっとつばを飲み込んだ。

「グラバー園に大浦天主堂に平和公園に……明日は忙しくなるわよ」

「じゃあ早起きしなきゃね!」

 毎日毎日観光しているから、翔太も早起きに慣れてきていた。カノンも笑って「そうね」と返事。この二人もいいコンビになってきたね!

「長崎には午前八時の到着を予定してます」

「それじゃあ七時起きね。翔太、ちゃんと早く寝なさいよ」

「分かってるって!」

 翔太はさっとシャワーを浴びてさっさとカーテンをしめて布団を被った。この布団で寝るも今日で四回目のことだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る