第3話senseセンシス 49.メタル 50.ほんの1.7キログラム

ジーンの島は地図には載っていない。

視察にやって来た一団の日本人男性とジーンは恋に落ちた。


一方、ジオを取り巻く5人の仲間は、ジオの現状を知らない。

ノーマークは絆を感じている。

タップとタワーは未だ音信不通。

スピは中央アジアの闇夜をヒッチハイク。

ロンは昼間、家を出た途端、倒れて動けない。

原因は光だ。

そして真夜中のスピのシルクロード観光も夢遊病患者のようだった。

何かに引っ張られている。

何かが始まっている。

そしてその中心で弥生ゆりは2週間、ずっと藻掻いていた。

一度外に出られたが、また引き釣り戻される

「もう、なんでこんな事、やだよー!誰かあ!」

彼女はここの何か得体の知れない物質の一部となることを強く抗っていた。

「もう、サリーどこよ?お腹空いたわ」

迷い猫サリーは自分が食われるとでも思ったのかこの日は現れなかった。


船員はいつも同じ積荷を積んでいることに何の疑問も持っていなかった。

船長とて別の港で交代して停泊中の船から下船する。

「ご苦労、異常はないか」

首を振る船員。

常駐している船員でもなければ、船体の重量に書類上からも変化があることから積み卸しはされたと考え、立ち合うこともなく、積荷の確認もせず、出港する。

更に毎回、蝶国の付近で蝶国人と船長から船員、すべて入れ替わる。

不審に思う者も現れたがこれまで疑う者はすべて闇に葬られてきた。

だがこの弥生ゆりは、しぶとい。

体に異常、体質の変化があまり見受けられない。

そして仔猫のサリーをずっと信じている。

何も疑っていない。

「もう、こんなところにいた。もう、お腹が空いたのも忘れたわよ。少し眠ろう。おいで」

彼女が眠っている間に下層部の迷路が様相を変えている。

スヤスヤと鼻の頭を掻く弥生ゆり。

蝶国の港に停泊中にも関わらず船に何人もの人だかりが詰め寄せる。

そして定められた場所に固まって行く。

「もう、サリー!!」

寝言を言う弥生ゆり。

「…お腹空いた…zzz」




サリーを見詰め続けると、クリアな動画が途切れ途切れに配信されたような不可解な印象を持つ。

30分程度の間に微妙な動きを再現してみたり、陰影の中でサリーが平面に見えたり…

そんなはずないと、息を吞み、仔猫の顔、背中を確かめる。

サリーの気持ちは人の心に寄り添うようにできている。

なんて柔らかい頬だろう。丸くてしなやかな背中はまだふにゃふにゃとしてたまらず抱き寄せる。

これは、この巣穴に微弱な魂の熱量がたくさん集まって一匹、いや一人のサリーを弥生ゆりに創り出させた超常現象なのかも知れない。

気になりながらもサリーを受け入れ、勇気を奮い立たせるサリーは最早、弥生ゆりの体の一部となっていた。


再び、ジーンは彼の言葉も待たずに式場の手配に多忙を極めた。

一番親交の厚いスピに連絡をするも無言で切れたり、感じの悪い対応をしてみたり。

スピがこれだから、他のコはもっと酷いことをするのだろうとは思わず、ジオに連絡する。

ジオもまた然りで、しばらく、いえ、2、3日経って、

「おめでとう!でもこれから私、7ヶ月は外に出られないので式には欠席で」

と、ボイスメールが届いた。

「ちょっと7ヶ月って何よ」

慌ててジーンが電話をするも、

「電波が届かない場所にあるか、電源が入っていないためお繋ぎすることができません」

ってこれ一体何なのよ!

ジーンは怒りまくった。

そして唇が震え、さめざめと、

「あたし、誰からも祝福されないじゃない。本当」

と、ジーンの表情は怒りから悲嘆に変わった。

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senseセンシス2 韻稚気者(インチキモノ) @osamu-kob

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