27話 エルダルフ vs アベル&カシアス
おれは悪魔カシアスと契約を交わす。
これでおれは全てをカシアスに捧げることに……。
「それでは反撃に移りましょうか」
カシアスはサラを守る
「やっと出てきたか劣等種ども。どうした魔力切れか? お前らはおれの手でぶち殺さなけきゃ気がすまねぇ。地獄のような苦しみを与えながら殺してやんよ」
エルダルフがこっちへとゆっくり歩いてくる。
確かにおれはもう魔力切れだ。
身体もボロボロになって動くのもままならない。
一人では何もできない死にぞこないだ。
だが、今のおれにはカシアスがいる。
さっきのカシアスの言葉の意味はきっと……。
「アベル様、
そうだ。
カシアスに攻撃魔法がないのないのならばおれが攻撃魔法を放てばいい。
おれに魔力がないのならばカシアスから貰えばいい。
おれにはエルダルフを傷つけるだけの
カシアスにはエルダルフの攻撃を完全に防ぐ防御魔法を扱えるだけの魔力がある。
おれたちが協力すれば
「任せろ。劣等種の底力見せてやろうぜ!」
カシアスが今までに見せたことのない表情を見せる。
そして——。
「
カシアスとおれは同一化して……。
エルダルフの背中に亀裂が入る。
おれが一瞬でエルダルフの背後を取り、剣で切り裂いたのだ。
『カシアス今さらだけど、どうして剣を?』
おれは念話でカシアスに聞いてみる。
『剣術は父上がアベル様に遺してくれた強くなるための技術なのですよね。ですので剣を用意
カシアスはさらりと言っているが、何でこいつがおれとカイル父さんのことを知っているんだ?
記憶を読んだのか?
おれのことを見ていた?
だが、これから死にゆくおれにはそんなこと、もうどうでもいい。
『そうだな。ありがとうカシアス』
剣術はカイル父さんがおれに遺してくれたものだ。
こいつであいつを討つ。
「ぐわぁあ。何だてめぇ。いつのまに……」
おれは剣を振るうのをやめない。
しかし、人間であるおれとエルダルフとの身体能力の差は埋めることはできない。
すぐにエルダルフはその俊敏性と強靭な肉体、鋭い爪で対応してくる。
おれの追撃を許さずに、剣と爪がぶつかり合う。
これが魔界の魔族の強さか、同等に戦えるようになって改めてその強さを実感する。
「はぁはぁ。何だたいしたことねぇじゃねえかよ」
やはり剣術だけでエルダルフを倒すのは不可能なようだ。
しかしおれの剣術で一撃を入れることはできた。
カイル父さん……ありがとう。
「結局お前が劣等種であることに変わらねえんだよ! お前じゃおれに勝てない。てめぇらは無様に死にゆく未来しか残ってねぇんだよ!」
エルダルフは地面を蹴り、一瞬でおれとの距離を詰める。
肉弾戦に持ち込むつもりだ。
確かにただの剣術だけじゃおれはエルダルフに勝つことはできない。
1万年修行をしようが種族の壁を越えることはできないだろう。
だが、今のおれには魔力がある。
『カシアス、お前の魔力を貰うぞ』
おれは剣に闇属性魔法を付与する。
そして、さらに純粋に魔力を注ぎ込む。
こんなことは一度もしたことがない。
しかし、おれには……やれる!
「シネ、劣等種!!!!」
「
闇を身に纏い、この世の全てを呑み込むかのようなおれの剣とエルダルフの鋭い爪が交差する。
「ぎゃぁぁぁあああ」
おれの一撃はエルダルフの爪が砕きそのまま強靭な肉体を引き裂く。
そして、傷からは闇が侵食しエルダルフを苦しめる。
「れっ、劣等種が……お前らごとき……」
「さっきから劣等種劣等種うるせんだよ。生まれた種族によってそいつの人生を潰してもいいとか勝手に決めてんじゃねぇよ!!」
ふざけんなよ……。
おれたちがお前のせいでどんな思いをしたと思っているんだ。
「ふざけんじゃねえぞ! 劣等種だと思うのなら……お前の方が優れているっていうのなら、なんでお前はそいつらを助けないんだよ。なんで優れているお前が劣っているやつらを潰そうとしてるんだよ!」
おれだって、昔は他人を
学校にいた頃はおれを誰も助けてくれなかった。
むしろ
どうして弱者は強者に……。
逆におれを恵まれてると思うやつもいたのかもしれない。
病院で暮らしてた頃はおれより不幸な境遇のやつだっていたさ。
だけど、だからってそういう人たちをいたぶるなんて考えられなかった。
おれが彼らを救う力があったなら彼らのために使うだろう。
そんな力があって尚、彼らを苦しめるなんておれは……。
「お前は全く優れてないんかいやしない……誰よりも劣っていることにいい加減気づけよ!」
「うるせぇよ……おれはなぁ、あのときからもう後戻りできねぇんだよ……約束を果たすためにおれは……」
エルダルフに魔力が集中しているのがわかる。
どうやら肉弾戦ではなく魔法戦に切り替えるようだ。
『アベル様、来ますよ』
おれも集中して魔力をカシアスから貰う。
いくらカシアスと
次の一撃に全てを懸ける。
『なあカシアス、もしかして——』
おれは一つの疑問を投げかける。
『えぇ、できますよ。今のアベル様になら、きっと——』
おれは魔力操作、魔力制御に全集中力を注ぐ。
おれにならできる……今現在、最も信用できるカシアスの言葉なんだ。
おれになら属性を『かけ合わせる』ことが!!
おれは火属性と闇属性に適性がある。
魔力操作も魔力制御も全く異なる属性だがおれにならやれる!
「
エルダルフが初めて詠唱をする。
今日見た中で一番大きな炎の塊だ。
直径5mを超えるその塊がおれをめがけて突き進んでくる。
『いくぞカシアス!』
『えぇ、大切なものを守るために戦う貴方が負けることなどありえません!』
おれが放つ最後の魔法。
これがダメならカシアスの防戦一方。
サラは助からないだろう。
おれは……。
いや、おれたちは負けない!
「
燃えさかる闇の炎が放たれる。
全てを呑み込むおれの魔法はエルダルフの放つ特大の魔法とぶつかり合う。
闇の炎がエルダルフの炎を呑み込みそして——。
「そんなバカなぁぁぁああ……。かいん……ずさ……ま……」
エルダルフをも呑み込む。
全てを焼き尽くした
あぁ……これで終わったんだ。
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