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好きなものを答える事は簡単だが、なぜそれが好きなのかを説明する事は難しい。同様に、好きなものをずっと好きのまま生きていくのも、また難しいのだと俺は思う。
たった一度の人生、それ以外に好きなものが出来る可能性なんて、いくらでもある。世の中に絶対なんてものはない。絶対になんて言葉を使った時には、必ずやり遂げなければならない〝誓い〟であり〝約束〟になってしまう。
いや、もう一つ〝呪い〟とも言えるだろう。絶対という言葉を安易に使ってはいけないのは、その言葉に自分で責任を持つという事だから。
大切なのは、己が心の底から大事にしたいと思うものを、一つでも見つける事だ。それが、自分にとって〝ずっと好きでいられるもの〟なんだと、己に〝絶対〟と言えるように。
俺は移ろいやすい人間だ。興味を持ったものから、また新しく興味を持ったものに意識が向いてしまい、それ以前のものへの興味を自然と失う事が多い。
完全にという訳ではない。また、時が経てば自然と興味が沸いてくる事もある。
そんな俺は自分に対しても、他者に対しても、〝絶対〟と誓えるような人間じゃない。だからこそ、俺は自分に対して正直に真摯に向き合い、〝絶対〟と言えるような何かが欲しい。
まだ時間のある俺が、この世の中のどれだけの人間に〝何〟を残せるのか。
挑戦してみたいと、俺は思った。
その結果として、俺は一つの作品の歩みを止めてしまった。
もう間違わない。今度こそなんて陳腐に聞こえるだろうセリフを言ってでも、俺は自分に約束する。
この作品を、新しく受け継いだこの物語を。今度こそ、終わりの先まで書き切ってやる。
そして、俺の物語を読む読者たちに刻み込んでやる。俺という人間が生み出した世界を、存分に魅せ付けてやる。
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