第26話 ノザレ退却戦1 ジャルカは部下にクリスの秘密を話しました

「大叔父様!」

ロボっクの放った今際の際の言葉をクリスらは受け取った。

クリスらは要塞まで10キロのところまで来ていた。


「クリス様。敵襲みたいです。直ちにウィルと一緒にノザレまで退避して下さい」

ザクセンが言った。

「私は様子を見てまいります」

「ザクセン師団長。私もご一緒します」

「しかし、それは危険です。下手したらノルディン最悪の3個師団が急襲した可能性があります。一刻も早く、救援を呼んで下さい」


その時突然近くで爆発が起こる。

その3人に爆裂魔法が見舞われたのだ。

ザクセンが障壁を張る。


「魔導師の部隊が接近しています。ウィル!クリス様を連れてジャンヌ王女に合流を」

「了解」

「ザクセン様」

「姉さま。行くよ」

ウィルは強引にクリスを連れて転移した。



ザクセンは魔導師達の位置を確認する。

そして、攻撃した魔導師の元に転移して剣で瞬殺する。

「ぐぁああ」

男は胸から血を振りまきつつ倒れた。

その横にいた男もザクセンに攻撃しようとするが、剣で振り向きざまに切られて弾き飛んでいた。


残りの3人も駆け寄り始末する。


「さて、どれだけの敵が来ているものか」

言うや、ザクセンは転移した。



そして、要塞の端に転移した。

中は混戦になっていたが、奇襲されたマーマレード軍は苦戦していた。


「エドウィン。ロボック様は」

第二大隊長のエドウィン・ノーマンを見つけてザクセンは聞いた。

「おそらく赤い死神にやられたかと」

防戦している大隊長のエドウィンが応えた。


「敵はどれくらいだ」

「詳しくはわかりませんが、おそらく赤い死神の第8師団のみかと」

「兵数は互角か」

「しかし、こちらは頭をやられていて組織的な抵抗は出来てませんよ」

「出来る限り防戦して後はノザレで防戦するしか無いか」


そこへ抜剣してアレクが突っ込んできた。

まず爆裂魔法で半数の兵がやられる。


「おのれ、喰らえ」

ザクセンも爆裂魔法をアレクに浴びせる。


アレクが思わず、怯んだ。


そこへ更に全魔力をかけてザクセンは爆裂魔法を叩き込んだ。

とっさにアレクは障壁でおのれを守ったが、叶わず、火達磨になる。

その隙きにザクセンは全軍に撤退を命じていた。




「ジャンヌお姉様」

ウィルに連れられて転移してきたクリスはジャンヌを見つけると慌てて駆け寄った。


「どうした?クリス」

「砦に赤い死神が奇襲してきました。おそらく大叔父は亡くなりました」

「何だと赤い死神が。しかし、帝都付近にいたはずだが。転移してきたか。という事は少数の奇襲か」

「詳しくはザクセン様が探りにいかれましたが、もっと大規模なものではないかと。我々も襲われました。転移できるものだけの奇襲だとは到底思えません」

「そうか。何か移動手段を見出したか。グリフィズ、直ちにジャルカに連絡を」

「判りました」

「総員第一級戦闘配置。1班は私と一緒に来い。周囲の敵情を視察する。残りはグリフィズについて取り敢えず、ノザレまで撤退を」

「了解」



「どうした、グリフイズ、恐ろしい顔をして」

魔導通信に出てきたグリフィズを見てジャルカが聞いた。

軍用に開発された最新特殊魔道具だ。まだ大きくて持ち運ぶのも大変だが、魔導師がどこにいても連絡できるようになっていた。


「北の砦が赤い死神らによって急襲されたようです」

「なんと。我が方の被害は」

「ロボック師団長はお亡くなりになられたようです。現在ザクセン師団長が状況確認に行っていらっしゃるようです。詳しくはそれからかと。ノルディンは帝都から北のパルチラまで特殊な移動手段を見繕ったようです。ノルディン最強3個師団がノザレを攻撃する可能性がります」

「判った。直ちに国王陛下に全軍の招集とドラフォードへの援軍の依頼をお願いする。私もできるだけ早くそちらに行こう」

「お願いします。こちらはひよっこばかりでほとんど戦力にはなりません。ノザレの防衛に失敗すると王都マーレもやばいかもしれません」

「グリフィズ。貴様に国家の重要機密を言うからよく聞けよ」

ジャルカはもったいぶって言った。


「はい」

緊張してグリフィズはジャルカの言葉を待った。何か秘密兵器的なものがどこかに隠されているのだろうか。


「いざという時はクリス様に酒を飲ませろ」

「……………・」

グリフィズはは無言だった。


「聞いたかグリフィズ」

「いえ、ジャルカ様はこんな時にも冗談を言われるのだと呆れ果てて」

乾いた笑みをグリフィズは浮かべる。

「愚か者。そんな暇は無かろう」

ジャルカが叱咤するが、グリフィズには信じられなかった。

「だってクリス様に酒を飲ませてもどうにもならないでしょ。悪酔いして赤い死神に絡んでも殺されるだけですよ」

「これは王家に代々伝わる秘伝なのだ。『我が帝国に危機迫りし時、我が巫女に酒を飲ませよ。しからばわれ来臨せり』と、シャラザール様が遺言を残されたのじゃ」

ジャルカは咄嗟に嘘を作り上げた。神となったシャラザールが全能神の怒りをかって地上に落とされて今はクリスに憑依していると言われても、全然有り難味がなかった。とっさに過去からの伝説にする辺りまだまだ儂の知恵も捨てたものではないわいと一人悦に入ってニヤニヤ笑っていると

「それは本当なんですか。何か嘘くさいんですが」

胡散臭そうにグリフィズがジャルカを見る。


「本当のことじゃ。無敵の戦神シャラザール様が来臨すれば赤い死神や残虐王など瞬殺して下さるわ」

「じゃあ今すぐやれば良いのではないですか」

「それはそうじゃがお主、シャラザール様に殺されるかもしれんがな。こんなしょうもないことで呼び出すなと。あくまでも本当の非常時に限った方が良いと思うぞ」

「判りました。肝に銘じておきます」

半信半疑ながらグリフィズは頷いた。

「では頼むぞ」

ジャルカは慌てて国王の所へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る