第17話 エピローグ 戦神は王妃の淑女教育と言う名の拷問に毎日つきあわされる羽目になりました
「ジャルカ!どういう事だ。何故ミハイル嬢をダレルなんて危険な所に連れて行ったのだ。
ミハイル卿からは怒りの苦情が来るわ、王妃は怒り狂うわ大変じゃったぞ」
ジョージ国王はジャルカの前で怒り狂っていた。
「申し訳ありません」
素直にジャルカは謝った。全能神ゼウスに言われて戦神シャラザールをジャンヌにではなくてクリスに憑依させるためにクリスを連れて行ったなどとは言えなかった。
「囮の人質など、ジャンヌや魔導部隊のもので十分であったろう。何故戦えもせぬ、クリス嬢を連れて行ったのだ?」
「全ては戦神シャラザールのお導きでございます」
「その方までもがクリス嬢の真似をせんでも良い」
ジャルカの一言に国王が怒って言った。
「そもそも、ジャンヌはダレル伯を城ごと燃やすつもり満々だったろうが。あのような聖女のようなことを言える訳もない。あれは全てクリス嬢の意見であろう」
娘の性格をよく知っている国王は言い切った。
「はい。姫様の城ごと燃やす考えは、クリス嬢の反対に会い、全ては海の藻屑になってしまいました」
「まあ良い。あのダレル伯が泣き崩れておったではないか。クリス嬢が王妃になった暁には絶対にあの地は逆らいはすまい」
「はい。功を誇るでもなく、全ての功はジャンヌ王女に帰しましたし、王女の人気アップにも繋がりました」
「本当によく出来た子じゃ。ドラフォードに取られずに良かったわい」
国王が笑って言った。
「はい。クリス様がいらっしゃる限り未来のマーマレードも安泰でございます」
「貴様それを見込んでクリス嬢を連れて行ったのか」
国王は驚いた目でジャルカを見ていた。その目は尊敬の眼差しであった。
「ここまでになるとは想定しておりませんでしたが」
ジャルカの目的はあくまでも、戦神シャラザールをクリスに憑依させることであって、そのまま城もろともダレル伯を葬ることだったのだが、まあ、雨降って地固まる。口うるさい面倒な伯爵が聞き分けの良いクリスの犬になってくれたし、シャラザールはクリスに憑依してくれてゼウスからは感謝されたし、ジャルカにとっては言う事はなかった。
「さすが大賢者ジャルカだ。今後共によろしく頼むぞ」
国王は大満足でジャルカを見ていた。
ジャルカは喜んでいる国王の誤解をわざわざ解くことはないと黙っていることにした。
しかし、ジャルカは大切なことを1つ忘れていた。
クリスは翌日、ジャンヌの言うところの拷問部屋、淑女教育の部屋で、王妃から淑女教育を受けていた。
ジャンヌは王妃から一緒に来るように言われていたが、当然その夜に王宮から逃走していた。
「クリス。此度の件、その方の尽力に感謝します」
王妃から開口一番感謝の言葉を述べられてクリスは絶句した。
いつもと違うと。
「いえ、私は何も」
「嘘おっしゃい。あのガサツで出たとこ勝負、世の中は楽しければ良いというジャンヌがあのような事をする訳はありません。あの子は、大方、あなたを囮にして捕まえた非を論って、伯爵もろとも城を吹き飛ばすつもりだったのでしょう」
「・・・・・・」
クリスは何も言えなかった。よく娘の性格をご存知でいらっしゃる。
と頷くしか無かった。そうは言わなかったが。
「あなたのおかげでガサツな暴風王女が慈愛に満ちた王女とまではいきなり行かないとは思いますが、多少は下々のことを考えているマシな王女になったと思います。反乱を未然に防げて小うるさい伯爵の忠誠を得たこと、本当にご苦労さまでした」
いつもガサツだとか、一度首の傾きがおかしいとか叱られてばかりのクリスが、王妃から褒められてこそばゆかった。王妃様も話せば判る方だとクリスは思った。
「しかし、クリス。あの財務卿に対する態度は何なのですか。
何故諜報部が掴んだ証拠をばらしたのです」
ギロリと王妃はクリスを睨んだ。
「えっ、王妃様。あそこはそうするしか」
クリスは王妃が説教モードになったことに唖然とした。
「何を言っているのですか。実際に具体的なことをバラすのではなくて、それらしく匂わせれば良かったのではなくて」
「それは出来ればそういたしましたけれど、」
「それが出来ないからまだまだだと申しているのです。
言い方。首の角度。そして声音で、モワット風情を脅せなくてどうするのですか。そもそも・・・・・・」
マシンガントークのように王妃は話しだしたら止まらなかった。
後ろで聞いていた女長官は15歳の少女にそこまで言うかと呆れていたが。
そして、クリスの中ではシャラザールが切れていた。
「ジャルカ、この拷問は何だ。絶対に許さん」
シャラザールの怒りの叫び声は王妃のマシンガントークの前に誰にも聞かれることなく、消えていった。
**********************************************************
皆さん、ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ここまでで取り敢えず第一章完結です。
第二章はまた再開する予定ですが、取り敢えず完結扱いにします。
しばらくはこの3年後の話
「皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054917566155
第8章ボフミエ王宮恋愛編にうつります。
今回のクリスティーナとドラフォード王国オーウェン
そのなかなか進展しない恋愛に今回はライバルが現れます。
果たして二人は結ばれるのか
乞うご期待
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます