第2話 プロローグ2 戦神シャラザールは天界を追放されました

空の遥か彼方に天界があった。

その天界の象徴と言われる巨大なバベルの塔が今崩壊の危機にひんしていた。


その巨大な塔のはるか天辺にはボロボロにされたヘラクレスが震えて塔に掴まっていた。


「ヘラクレス!そこから降りてきて勝負しろ」

そのバベルの塔の麓では怒りで赤く染まったシャラザールが巨大な大剣を片手に叫んでいた。

「いや、悪かった。許してくれ」

今まで無敵の戦いの神様だったヘラクレスはシャラザールの怒りの前に震えていた。


「許さん。誰が男女だ。今すぐ降りて勝負せよ」

そうシャラザールが叫ぶや、大剣をバベルの塔に叩きつけた。


ドカーンという凄まじい音がして、巨大な塔にひびが入る。



「大変だ」

「シャラザール様が怒り狂ったぞ」

「できる限り離れるんだ」

天界の住民はパニックになって大騒ぎでバベルの塔から離れた。

いつもは観光客で賑わっているバベルの塔も人気はあっという間に無くなった。


「今すぐ降りてこい」

シャラザールが叫んてだが

「絶対におりんぞ」

降りたら確実に殺される。ヘラクレスは必死でバベルの塔にしがみついた。

「おのれ。小賢しい。降りてこないならバベルの塔もろとも貴様を葬ってやるわ」

シャラザールは更に大剣をバベルの塔に切りつけていた。


「シャラザール様。お止め下さい」

衛兵たちが慌てて止めようとするが

「邪魔するな」

爆裂魔法で一瞬で5名の衛兵を弾き飛ばしていた。


「ええい、もう面倒だ。ヘラクレス!この塔もろともに地獄に落ちろ」

シャラザールは渾身の力をして、雷撃を塔の天辺に叩きつけていた。


「ギャーーーーー」

ヘラクレスの悲鳴とともに凄まじい雷撃が塔全体を覆っていた。

大音響の爆発音とともに、塔が爆発して砕け散っていた。

10万年間天界一の高さを誇った塔が一瞬で崩壊した瞬間だった。



「シャラザール!貴様どういうつもりだ」

全知全能神のゼウスが大声で怒鳴り散らしていた。


ゼウスの前には戦神シャラザールが鎖でがんじがらめに縛られていた。


「ふんっ。ヘラクレスが生意気なのが悪い」

ゼウスの怒りにも全く応えていないシャラザールがいた。


「貴様判っているのか。魔王を退治した功績で神に迎えられてからこの1000年。

貴様のせいでやられた神の数だけで100は超えるぞ。どういう事だ」

「ふんっ。余の前で生意気なことを申すからであろう」


「では、マルスの場合はどうなのだ」

「貴様の息子か。あいつは貴様の息子のヘパイストスから妻のアフロディーテと浮気しているからなんとかしてほしいと頼まれたので」

「抹殺したというわけか」

「何を言う。ヘパイストスがあまりに可愛そうだから交渉に赴いたのにいきなり攻撃してきたのは奴だろう。止む終えず返り討ちにしたまでだ」

「何もアフロディーテまで手にかけることはなかっただろうが」

「あの尻軽女か。貴様とも関係があったという」

「な、何の話だ」

シャラザールの冷めた声にゼウスは慌てた。


「ふんっ、まあ良かろう。あの女はマルスを殺ったことに逆ギレして余に打ちかかってきたので、軽く頬を張ったのだ。軽くだぞ」

いや、ゼウスの愛しの美の女神アフロディーテの美しい顔にこの男女のシャラザールが張ったなどと、(シャラザールの軽くが軽い訳はなかった)ゼウスが許せる訳は無かったが、ここは懸命にも黙っていることにした。

「にもかかわらず、その場で自分がモテるのを良い事にあろうことか、男女の余には判るまいと宣ったのだ。あいつのために泣いている妻は多いからな。お前の妻のヘラも含めてだ。

世のため人のため成敗したまでよ」

全く反省の色を見せずにシャラザールは言い切った。


「しかし、あの尻軽女、地上で生まれ変わっても今度は地上で迷惑をかけまくりそうだな。

いっそのこと地獄に叩き落としてやったら良かったか」


反省するのはそこか。ゼウスの周りにいた衛兵たちは驚いた。

この戦神。ゼウスの前でも全く動じないのはすごい事だった。


「ゼウスよ。その方も神のくせに浮気ばかりしているそうだな。

お前の妻のヘラからも一度しっかりと注意してほしいと頼まれているのだ。

面倒になりそうだからやっておらんが。そんなに尻軽女のアフロディーテが恋しいなら一緒に地上に叩き出してやろうか」


このシャラザールの一言にゼウス初め一同驚愕した。

普通はゼウスの前に引き連れられてきた神は震えあがっているのだ。

少なくとも反省していた。

ゼウスもまさか全能神の己の前でここまで問題発言されるとは思わなかった。


「貴様反逆すると申すのか」

ゼウスは逆上していった。

此奴は妻ヘラを始め女どもには圧倒的に人気があった。

下手したら女どもを集めて本当に反逆しかねなかった。


「面倒だからやらないだけだ。しかし、お主があまりにも人倫にもとる行動を続けると言うなら考えねばならんな」

ニヤリとシャラザールは笑った。


ゼウスは背筋を悪寒が走った。そう、本当にこやつならやりかねない。

ゼウスは心を決めた。今やるしかない。でないと本当に乗っ取られると。


「ええい、シャラザール。貴様の悪行の数々神々から怨嗟の声が挙がっておるわ。

よって貴様を地界へ追放処分とする」


「何だと。ゼウス。少し待て……」

ゼウスは慌てるシャラザールを地上へ叩き落としていた。


そしてほっとため息を付いた。

そして、それを周りの衛兵たちが白い目で見ていた。


「なにか文句があるのか」

ゼウスはギロリと周りを睥睨した。

衛兵たちは慌てて視線を外した。


「アホーーーアホーーー」

その頭上を天界ガラスが鳴きながら飛んで行った。

次の瞬間には頭に来たゼウスによって丸焼けにされたのは言うまでもなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る