Bパート

「はぁ……はぁ……はぁ……」

「ε=( ̄。 ̄;)」

「勇者、何だその顔は?」

「えっ分かりやすくて名案だろ。お前と同じ状態で息切れってことだよ。わざわざ言わせるなよ」

「いや、分かるかよ」

「はいはい~で、どうすんの残り時間。後13分もあるけど」


 神官が軽く手を叩きながら俺と勇者の視線を集め、問いかける。

 そう既に俺達の物語は、残り時間13分を切り始めているのだ。

 俺はもう、勇者にさっさと世界滅亡装置を止めてもらい、そのまま世界を救った後の話をすればいいとめちゃくちゃ説明すると、勇者は物凄く渋々頷いてくれた。


 はぁ~こいつこんな面倒い奴だったか? いや、もう今はそんな事どうでもいい。

 もう時間が迫ってる。

 さっさと世界救って当たり障りなくエピローグが出来ればもうそれで俺はいいんだ。

 すると勇者は諦めたのか聖剣をしまい、とぼとぼと世界滅亡装置への方へと歩き出したその時だった、神官の方からピロピロと謎の機会音が聞こえて来た。


「あっ、私だ」


 神官は服の内側から電子機械を取り出し電話をし始めた。


「はい私だけど。ん? 何の件? うん、うんうん」

「おい、神官」

「あ~それは後回しでいいや。そう、そっちを先に」

「神官ー聞こえてるかー?」

「え? 新しいやつ? 確か倉庫の方にあったよ」


 俺の声に無反応で会話を続けられ、遂に耐え切れず神官に向かい大声を出した。


「お前なんだそれ! てか、世界観的にどうなんだよそれ! ダメだろ! てか電話すんな、止めろ!」

「あっ、はいはい。もう終わるから。うん、口うるさい戦士がね~だから、後よろしく。……はい、止めた」

「子供か。ほら見ろお前、勇者気になり過ぎてそわそわしながらこっち見てるだろう。そんなハイテク機器持ち歩くなよ」

「だって、副業の方もあるから。どうしてもこれは持ってないよさ」


 戦士は大きくため息をついた。


「もう分かったから、とりあえずもう終わるまでは止めてくれ。後勇者! こっちは気にしなくていいから、さっさとお前は装置を止めに行け」

「あっ、そしたら俺も少しいい?」


 突然魔法使いの問いかけに小さくため息をつき、戦士は小声で「何かするなら早くしろ」と伝える。

 すると次の瞬間、魔法使いはナイフを取り出し自分の胸を軽く刺し出した。

 思いもしない行動に、思考が一瞬止まる。


「な、なな、何してんだお前! 血、血かなり出てんじゃねぇか! 神官回復を」


 神官も両手でまさかの事に口を覆って驚いていた。

 直ぐさま回復魔法を掛けようとするが、何故か一番動揺していない魔法使いが神官を止めた。


「あ、大丈夫だから。これ、血のりなのよ」

「……はぁ? 血のり?」

「そう」


 すると再び魔法使いは、体の様々な箇所をナイフで刺すと、そこからにじむ出る様に血が出て来る。

 そして魔法使いは上着を脱ぎ、その下に血のりのパックを装着しているのを俺達に見せつけた。


「ほら! ねぇ、全部血のりでしょ。いや~一応やられるなら派手の方が良いと思って用意してたんだけど、使い道なくなりそうだから、ここで使おうかなって」

「な、何で血のりなんか?」

「いやだって~魔法使いとか先頭の方に立たないし、やられても地味じゃん? だからよ。血がどぱーっと出た方が悲惨だけど印象に残るじゃん?」


 真面目に答える魔法使いに、俺と神官は口を開けたままそれを聞き続けた。

 そして俺は、そっと神官の方を向き小声で話し掛けた。


「えっ、これ俺がおかしんじゃないよね?」

「えぇ。間違ってない反応だと思うわ。私も貴方と同じ反応だし」

「もしかしてこいつ、一番やばい奴? サイコパス的な?」

「ありえるわ。こういう普通的な奴が意外と、ってパターンが多いって本にもあったわ」

「それマジで? で、こう言う時はどうすればいいの?」


 俺が神官に問いかけると、少し考えた後神官が答えてくれた。


「相手を刺激しないで、とりあえず否定せずに肯定してあげるのが一番だわ」

「オッケー……分かった」


 そして俺と神官は魔法使いの言葉を否定せずに、とりあえず肯定するように話を合わせ何事もない様に収めた。

 おいおい、何でこんな時に変なカミングアウトが起こるんだよ。

 マジで止めてくれよ……はぁ~……あっ。

 俺が勇者の方を見ると、こちらをじっと見ており魔法使いの血だらけ姿を見て青ざめていた。

 あ~もう! 話が進まん!


「お、おい戦士! 魔法使いは何で血だらけなんだ? 俺が少し前を向いている間に何があったんだ?」

「えっ、あ~これは……気にすんな! 何でもないから、な!」

「いや、何でもない訳ないだろう! めちゃくちゃ血だらけじゃねぇか」

「勇者~俺は大丈夫だぞ~問題ないから気にすんな~」


 魔法使いはめちゃくちゃ笑顔で勇者に手を振りながら答えるが、体は血のりで血だらけ状態であった。

 いや、その姿で声掛けたらめちゃくちゃ怖いし、説得力ないわ……

 勇者は物凄く困惑していたが、俺はもうこのまま魔法使いの言葉を利用して勇者を前向かせようと声を掛ける。


「ほら、魔法使いもそう言ってるし。お前は目の前の装置に集中しろ~止めればいいだけなんだからな~」


 すると勇者はこちらの事が気になりつつも、前を再び向いた。

 よし! 何とかBパート半分内には装置を止められそうだ……後は、平和的な幸せなエピローグで大団円だ!

 と、その時だった。

 倒れていた魔王が突然立ち上がり復活するのだった。


「はぁー!! ふざけんなーー! こんなタイミングで復活なんてすんなやー! どう回収するんだよテメェ!」

「……あっ、魔法使いです。一応まだ続きますが、その前にCMです」


 ――残り時間7分。



 Cパートへ続く

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