俺達の戦いはこれからだ!

属-金閣

Aパート

 物語終了まで残り24分。


 だが、既に世界滅亡の元凶である魔王を俺達勇者一行は倒してしまった。

 そして何故残り時間を気にしていると言うと、魔王と対峙していた勇者(男)・戦士(男)・神官(女)・魔法使い(男)の勇者一行と呼ばれる俺達は、過酷な旅の中で自分達の物語終了までの時間が分かる様になっていたのだ。

 そんな中で俺達は最終決戦を迎えていたが、まさかそれが勇者のある行動で1秒で終了してしまうとは思わず、残り時間をどうするかで頭を悩ましていた。


「さてどうしたもんか……」

「思ったり早く決着ついたわね、どうするの残り時間」

「どうするも何も! どうやっても持たせなくてはならないだろうが! 最終回がこんなあっさりとかないわ!」

「そうは言うが勇者、何するよ? てか、時間を持たせる必要とかあんの? もうあの奥にある世界滅亡装置止めて、めでたしでよくね?」


 戦士の俺が勇者に提言すると、勇者は勢いよく俺の方を向いて来た。


「ダメに決まってるだろー! 最終回魔王との決戦1秒とか何? 後24分もあるんだぞ! まさか序盤の雄叫びだけで、相手が失神して完全瀕死になるなんて思わないだろうが!」

「それはお前がいらないスキルを取るからだろうが! 俺はいらないと言ったろうが! そもそも、こんな事になると思わないわ!」

「だって魅力的だろうが、一撃発音スキル!」


 マジで何なんだよそのスキル意味分かんねぇよ!

 俺には全然魅力的に感じねぇんだけど。


「そんな口論してるよりもまずは、どう言う構成で残り24分、いやもう残り23分持たすかだ。こうしている間にも時間は一向に減るぞ」


 魔法使いの言葉に、俺と勇者少し冷静になる。


「そうだな。この神過ぎる展開続きだったのに、最終回でいきなり駄作なんて事もあり得る時代だ」

「えっ、そんな事あり得るの? こんなに可愛い私が居ればもう神でしょ。神作でしょ。覇権決定でしょ」


 どんだけ自分に自信持ってんだ、こいつ。

 まぁ確かに、容姿もいいがこいつたまに口が悪いから、そこが何とも言えないんだよな……

 俺は神官の言葉を聞き流し、再度勇者の方を向くと魔法使いと座り込んで何か話していた。


「おい、何してるんだ?」


 俺は勇者達の方へと近付くと、2人はあり得ない事をしていた。

 勇者と魔法使いが禁術魔導書を開き、魔王の蘇生魔法を詠唱し始めていたのだ。


「いやマジで! 何してるんだお前ら!?」

「おい邪魔するなよ。今俺達は、魔王の蘇生を試してるんだよ」

「いやいや、何で? 倒したのに何でお前が蘇生を試みてるんだよ。する必要ないだろうが! そんな事するならさっさと装置止めろ」


 いい加減呆れて俺は倒れている魔王の奥にある世界滅亡装置を止める為に歩き出すと、突然勇者が大声を上げて俺の足に飛びついて来た。


「ダメだー!」


 俺は軸足を引っ張られ、その場で勢いよく顔から地面に倒れてしまい鈍い音が部屋に響き渡った。


「こんな見せ場ないまま、終われないんだよ! 頼む~だから行かないでくれ~」

「いっててぇなぁ! 軸足を引っ張るんじゃねぇよ! 見ろ、鼻血が出たじゃねぇか!」

「頼むよ~ちょっとでいいから、見せ場をくれよ~俺勇者なんだよ、主人公なんだよ」

「いや聞けよ。後、俺の足にすり寄りながら泣くなよ……」


 俺はしがみつく勇者を足から強引に引きはがし、勇者を説得し始める。


「いいか勇者、見せ場うんぬんよりあそこの装置を止めれば、お前はちやほやされるんだぞ? されたいだろ」

「俺がちやほや」

「あぁ、そうだ。お前が世界を救った英雄になるんだよ。だから、止めに行こう。なあ?」


 そして俺は勇者の腕を引っ張り、連れて行こうとするも何故か勇者は動かない。

 すると勇者は俯いた直後、物凄い目力で口を開いた。


「いや、俺はちやほやより、カッコよく技を叫びながら決めて魔王を倒したい!」

「何故そこにこだわる! 魔王は倒した、後は装置を止めるだけだでいいんだよ!」

「嫌だ! 俺はカッコよく技を決めたいんだ! 声だけでとか締まりないだろ」

「いやいや、今までに十分やってきてカッコよさ伝わってるよ」

「魔王で出来なきゃ意味がねぇんだよ!」


 と勇者が叫ぶと、体から強大な魔力を放出し黄金のオーラを体に纏い出す。


「おぉ、遂に最強の力を覚醒させたか勇者」

「さすが勇者だわ」

「いやお前ら少しは違和感を持て! こんなしょうもない会話で最強の力の覚醒とか変だろ! てか、何で覚醒してるんだよお前は!」

「こ、これが、最強の力……体の底から力が湧き出る!」


 あ~ダメだ。

 全然聞いちゃいない。


「よし勇者、もうこうなったらその力を存分に発揮しろ」

「そうよ、その力さえあれば今まで以上に強力な技が出せるわ」

「皆……分かった! 戦士!」

「?」

「俺の技を受けてくれ! いくぞ!」

「はぁ!? いやちょっと待て! 止まれ勇者!」


 すると勇者は素直に俺の言葉に従い、振り上げた聖剣を止めた。


「え? ダメ?」

「ダメに決まってんだろうが! 俺を殺す気かお前は!」

「ほんの少し、ちょびっとだけは? ほんの少しだから。絶対に痛くしないからさ」

「ダメだって言ってんだろうが。あと言い方」


 そんな俺と勇者が言い合いしている時に、魔法使いと神官が声を掛けて来た。


「お~い、そろそろ14分経つぞ」

「いや~なかなか有意義な時間だったわね~」

「そんな分けあるか! もうこれでAパート終わりなんだぞ! 最悪の最終回だよ!」

「なぁ~ほんの少しだから撃たせてくれよ、戦士~」

「あ~もう! しっかりしろ勇者! さっさとあの世界滅亡装置止めるぞ!」

「え~技撃ちたい~」

「はいはい、口論するならCM中に終えてね。それじゃ、CM~Go!」

「勝手にCM行くな!」


 Bパートに続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る