第11話 約束
それから、数か月が過ぎ ――― 11月
「菜月」
ある日の学校帰り、正門を出た所で、名前を呼ばれた。
振り返ると、そこには。
「…智樹…どうし…」
グイッと抱きしめられた。
ドキッ
「菜月に逢いたくて」
ドキン
「智樹…」
抱きしめられた体を離し、両頬に触れたかと思うと後頭部に触れグッとされ周囲の目から隠す様にキスされた。
ドキン
「ただいま。菜月」
「おかえり。智樹」
至近距離で言うと私達は再び抱きしめ合う。
1週間の滞在中、私達は、楽しい時間を過ごす。
「また……離れ離れになっちゃうね…」
「そうだね。一緒に行く?」
「うん、行く!」
「だーめ」
「…だよね…」
「もちろん、俺も菜月を連れ去って行きたい所なんだけどね」
「…だったら…連れ去って…」
「お嫁さんになる事になったら連れ去ってあげるね」
「お嫁さん…かぁ…まだ何年も先だよ…」
「そうだね」
「あっさりしすぎだよ……」
「ごめん、ごめん。結婚は女の子の最大の大大イベントだもんね」
「……そうだよ…」
「それじゃ」
去り始める智樹。
「智樹っ!」
智樹の背中に向かって名前を呼ぶ。
「何?」
振り返る智樹。
「今度、いつ逢える?」
「えっ?そうだなぁ~…いつだろうね?俺、気まぐれだから~」
「来月……一緒に過ごしたい!」
「来月?」
「…クリスマス…イヴ…。…駄目…?」
「今の所、予定は未定だけど…予定に入れておくね」
「うん、絶対だよ」
「OK!それじゃ」
去り始める智樹。
「あっ!そうだ!忘れ物」
「えっ?」
歩み寄る智樹。
グイッと引き寄せ私の後頭部に触れ近付けさせるとキスをした。
「I LOVE YOU!Nazuki!」
ドキン
「Bye Bye Nazuki」
そして、智樹は日本を発った。
ある日の事だった。
「おいっ!菜月」
「麻沙斗」
「お前、今日何か予定は?」
「特には」
「良かった。智樹から伝言。アイツ、今、用事でこっち(日本)にいるらしいから、今夜ここに来て欲しいって」
「えっ?智樹が?」
「ああ。明日、向こうにすぐ帰るらしいから」
「分かった。ありがとう」
夜。
私は麻沙斗から預かったメモを頼りに目的地に向かった。
でも ――――
「あっ!智樹さんですよね?」
「そうだけど……君は?」
「あの、私、モデルの卵なんですけど、ちょっとお茶でもしませんか?」
「えっ?あっ!ごめん…今、人と待ち合わせしてて」
「彼女ですか?」
「うん…そうなんだ」
「じゃあ、彼女が来るまでで良いので」
「いや…誤解されたらかなわないから、席外して貰えないかな?」
「大丈夫ですよ。彼女って私と同じ学校の上谷 菜月さんですよね?」
「えっ?」
「幼なじみって話だし、他の幼なじみの男の子達は学校中カッコイイって噂だから人気も高いんですよ。それに、この前、智樹さんが彼女と堂々とキスしてるのも知ってるし」
「…ごめん…それは分かったから、彼女に誤解されたら困るんだ。帰ってもらえる…」
「…智樹…」
「えっ?菜月?」
「あっ!それじゃ彼女来たみたいだから帰り……」
私は飛び出した。
「待って!菜月っ!誤解…」
グイッと引き止められた。
「…ごめん…」
私は掴まれた手を離し走り去った。
「ご、ごめんなさい。智樹さん。まさか、もう彼女が来ていたなんて思わなくて……。それじゃ、私…帰りますね。本当にすみません…」
「………………」
「……菜月……」
―――×―――×―――×
「菜月!?何してんだよ?智樹と逢えたんだろう?」
バイトから帰宅してきたマンションの建物前にいる私を見掛け尋ねた。
「女の子といたから…」
「えっ?」
「智樹…」
「いや…何かの間違いだろう?」
「………………」
「えっ?その反応って…マジ?」
その時。
「はい、もしもし。あー…菜月ならいるけど…俺も今、バイトから帰ってきた所で……ああ、ちょっと待ってな。菜月、智樹が変わって……」
「良い……」
「菜月、良いから変わってやれよ!」
私は携帯を受け取るも携帯を切った。
「うわっ!馬鹿っ!何で切るんだよ!」
「……帰る……」
「菜月っ!」
私は走り去った。
「あの馬鹿っ!」
―――×―――×―――×―――×
私は帰ろうと思ったものの真っ直ぐ帰らずに再び街に出た。
とあるショーウィンドーに目が止まる。
閉店間際の宝石店だ。
「見られますか?」
締めようとしていた店員さんが私に尋ねた。
「えっ?あ…いいえ」
私は去り始める。
グイッと誰かに手を掴まれた。
「閉める間際ですけど、閉めて貰って貸し切りしてもらって良いですか?」
「あ、はい…」
そう言うと私の手を握ったまま、店内に入れた。
「あ、あの、何ですか?離してくださいっ!」
「この手を離したらまた菜月と離れ離れになるから」
「えっ?……智樹…どうし…」
「偶々、見掛けたから。それに誤解されたまま向こうに帰る事は出来ないよ…」
「…智樹…」
「すみません、彼女に似合うジュエリーお願いします」
「えっ?ま、待って…そんな…」
「俺にプレゼントさせて」
「智樹…い、良いっ!そんな高価な物いらないから…私には似合わないから」
「似合う似合わないは…菜月が決める事じゃないよ」
「えっ?」
「決めるのは…菜月以外のみんなが決める事だから……」
「智樹…」
「恋人同士も、つりあうとか、つりあわないとか言うけど、周囲がどう見てようと自分の事を相手が選んでくれたんだよ。ジュエリーも一緒だよ」
「…………」
「ファッションでも身に付けるものは自分の直感で選んで自然と相応しくなれるように導かれていくから。今回に関しては俺達は付き合って、まだ分からない事ばかりだから店員さんに選ばせてもらうけど…」
「智樹…」
「だって…まだ俺達、高校生だからジュエリーの良さは、もっと大人にならなきゃ分からないし」
そして、店員さんはネックレスを選んでくれた。
私達は店を後に移動する。
「ちょっと早いクリスマスプレゼント」
「智樹…」
「今度、行く時は…」
スッと私の左手を優しく握る。
「この指に填められる永遠のリングの時だね」
ドキン
「…智樹…」
「今日は…俺も油断してた…せっかくサプライズデートしようと思ったら、突然、女の子が声をかけてきたから…。菜月を傷つけた…ごめん…菜月…。嫌な想いさせて…」
「智樹…ううん…私こそごめん…」
私達はキスをし、抱きしめ合う。
「……菜月……。…来月は……菜月の全て貰って良い?」
「えっ?」
「他には何もいらないから…」
「…智樹……」
抱きしめ合った体を離す。
≪つまり…それって…そういう事…だよね…≫
私は背を向ける。
「菜月…?」
ふわりと抱きしめられた。
ドキン
「今から緊張してる?」
「…えっと…」
「でも…無理にはしたくないから…ゆっくりで良いよ…大事な彼女だから……大切な程…大切にしたいから…菜月が決心した時…菜月を抱かせて」
ドキッ
かああああ~~っと身体が熱くなる。
私を振り返らせるとキスをされると、初めて深い大人のキスをされた。
両手で、両頬を包み込むように触れる智樹。
「二人で頑張ってレベルあげていこうか…菜月」
私は頷いた。
幼なじみなのに
どこか大人で
大切にしてくれる智樹
私は
彼に導かれるように
一歩ずつ
一歩ずつ
大人の階段を
のぼっていく
「智樹…」
「何?」
「……大好き……」
「えっ…?…菜月…反則だよ…」
「えっ?」
「可愛すぎだから…」
私達は、キスをし帰る事にし、智樹は次の日、日本を発った。
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