第8話 智樹と菜月の想い

「さあ、向こうに帰ろうかな?」

「えっ!?帰んの?」

「うん。こっちにずっといるわけにはいかないから」


「……そっか……」

「何?麻沙斗、寂しいの?麻沙斗はそっちの趣味?」


「おいっ!ちげーよ!」

「な~んだ。そっか」

「テメーこそ、そっちの趣味じゃねぇのかよ!」

「冗談キツいし!俺、ノーマルだよ」

「なら良いけど」


「第一、ノーマルじゃなかったら既に麻沙斗、夜這いされて襲われてるから」


「辞めろよ!気持ち悪いからっ!」


「クスクス…ちなみに、俺が発つ事はみんなには言わないで良いから。見送り禁止!」


「えっ!?でも…」


「良いの、良いの!見送りされると別れが辛くなるから。じゃあ、また!」


「ああ…またな」



「たった一人だけ…天使のような彼女の涙だけは見たくないから…」




その後、麻沙斗から智樹が日本を発った後に智樹の事を知った。


それは偶々、麻沙斗の所に足を運んだ時だった。




「そうか…」


「何故、そんなにこの世の終わりみたいな顔をする?」


「別れに悲しくなるの当たり前でしょう!?」


「いや…今の顔は意味ありげな顔だ。お前、アイツに気があんのか?」


「違うよ!色々と助けて貰ったしと思って」


「ふ~ん…」


「本当だってば!」

「はいはい!」




私達は騒ぐ。





ある日の事。



「麻沙斗」


「うわっ!ビックリした!何だよ!いきなり!部屋に入ってれば良いだろ!?」


「いや…不法侵入だから…」


「はあっ!?今更おかしいだろう?遠慮すんなよ!何だ?その変な気遣いは…。お前…大丈夫か?」


「失礼なっ!大丈夫ですっ!」



私達は部屋に移動する。



「で?どうしたんだ?」

「…智樹の住んでる住所教えて!」

「えっ?智樹の?」

「うん」


「どうした?急に」

「…それは…その…逢いたいから…」

「えっ?」


「…………」


「やっぱ…お前…アイツの事…」

「…智樹…彼女いたりするのかな?」

「えっ?」

「彼女いないとしても……好きな人くらいはいたりするよね?」


「さあな。心残りの人は、いたみたいだけど」

「…えっ…!?…そっか…」

「ただ、今は知らねぇけど」

「…ねえ、夏休みみんなで会いに行こう!」

「いや…まず厳しいと思うけど」


「えっ?」

「みんな色々と忙しいし。一応、声は掛けてみるけど…良い返事は貰えないだろうな…多分」


「…そっか……」

「とにかく急過ぎるし、すぐに住所は教えられねーから」

「…分かった…取り合えず帰るね…」

「ああ」



私は麻沙斗の部屋の後に帰る事にした。



「全く…!」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る