第9話 夏休みの予定

「菜月」

「麻沙斗?」

「ほら、例のものだ。だけど、お前一人で行け!」

「えっ!?待って!迷ったらどうすんの?」


「アイツには、迎えに行く様に話しておくから。あいにく、みんなバイトで忙しい。友飛なんて部活とバイト両立してる!」


「…そうか…そうだよね…分かった…」




私は日本を一人発つ事となった。




―――×―――×―――×―――×―――×


無事に到着。


しかし、まだ智樹の姿はなかった。




「智樹…いない…」



右も左も分からない私。


どっちにどう出れば良いのかさえも分からず流れに任せるしかなく下手に動けずにいた。




―――×―――×―――×―――×―――×



その頃、私を迎えに行く直前に突然の訪問者が、

智樹の前に一人の女の人が訪ねてきていた。


そんな事など知るよしもなく。



「Tomoki !」


「What!? …I'm sorry. I'll pick you up airport child hood friend now!」


「…Steeve had an affair!」


「What!? No something an error!」




―――×――×――×―――×―――×―――×




「おかしいなぁ~…迎えに来るって…」



私は待っていた。


一時間、二時間と待っても智樹は現れなかった。




「慣れない海外に待ちぼうけなんて最悪…」



私はブルーに入る。




「タクシー」



『タクシーには頼るな!馴れていない事が分かれば観光客と思われるだけじゃなく騙される可能性がある!』


『一人で街を歩くな!お金がすられる!』



「とか言ってたっけ?日本人は狙われ易いからって…。大人しくしてるしかないのかな?智樹には連絡ついてるはずだろうし……はあ…何か帰りたくなってきた……」



「菜月っ!」

「えっ?…今…」



私は辺りを見渡す。



「…あっ!…智樹…良かっ…」



グイッと抱きしめられた。


ドキッ



「ごめんっ!マジ待たせてごめんっ!」

「智樹…」



私は智樹を抱きしめ返した。


凄く急いで来たんだろうと分かる程、智樹の心臓の音が私の耳にこだまする。



「不安だったよね。一人で待たせてごめんっ!」


「智樹…大丈夫だよ…確かに心配で不安だったけど…こうして来てくれたから」



抱きしめ合った体を離す。


おでこにキスをする智樹。



ドキン



「本当に菜月が、今、俺の目の前にいる」


「えっ?」



再び、抱きしめ、ぎゅうっとしてくれた。




「さあ、移動しよう。大荷物持ち歩いてたら、強盗犯って思われるから」


「えっ!?」


「日常茶飯事だから。家にも平気で強盗に襲われるから気をつけないと」


「ちょ…ちょっと来て早々…辞めてよ…帰りたくなってきたじゃん……」



クスクス笑う。



「今、会って、もう帰っちゃうの?駄目だよ~。俺が帰さないから」



ドキッ



「か、帰さないって……」



グイッと肩を抱き寄せられた。




ドキッ




≪わわ……スキンシップが……≫



そして、私の顔をのぞき込むと、至近距離で




「今日からしばらく俺が菜月を独り占めするから楽しませてあげるね♪」


「智樹…う、うん……」




≪ヤバイ心臓持たないかも≫



私達は、智樹の家に移動した。



両親とは別々に暮らしている智樹。


親の名前で自分の持ち家みたいになっている一戸建てだ。



「だけど、せっかくの夏休みなのにバイトとかすれば良いのに。バンドの練習もあるんじゃないの?」



「バイトの練習は随分としてないよ」


「そうなんだ」


「うん。みんなバイト始めたし、友飛はバイトと部活両立してるし…私だけだよ、暇してるのは。とは言っても超暇じゃないけど……」


「こっちに来てるのに暇じゃないの?」


「…智樹って…意地悪…」



クスクス笑う智樹。



「まあ、バンドは趣味でしてるようなものだし、オリジナル曲作ったりとかしてる訳じゃないから、そのうち自然とやらなくなりそう。ただでさえ、現時点ではほとんどしてないし」



「そうか」


「うん。やっぱりやるなら時間作ってするだろうし、正直、どうなるか分からないかも」


「なるほどね~」


「うん。だから、この上谷 菜月様が代表して来ました♪いつも来てもらってるし」


「了解しました!」



私達は一日を過ごした。




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