第2話目的のものを探して


山岳もラトルの村と同じようにざわつく雰囲気が漂っていた。

入口付近には殺気立っている魔物が少ないが中腹あたりから殺気立っている魔物の気配を感じていた。

「なんか山岳のほうも妙な感じだな」

「ここにいる魔物がピリピリしているのかもしれんでござる」

「子供が生まれたとかだろうか」

「……それはありえそうでござる、子を産むと狂暴になる魔物もいるでござろうし」

「もしそうなら早く見つけださないと、危ないよな」

最悪の結末が一瞬、頭をよぎったがアルドは首を横に振る。

「できる限り早く奥に行こう」

「そうでござるな」

アルド達は周りを気にしながら進んだ。

中腹の辺りまでくると小型の恐竜達がアルド達の周りに寄ってきた。

これが先ほどの殺気立っている魔物の一団だろうとあたりをつける。

恐竜達は鋭い牙を輝かせて、アルド達に襲い掛かる。

噛みつかれないようにとっさに横に転がってよけた。

恐竜は噛みつきがからぶったことで怒りをあらわにしたようで吠えた。

アルド達は転がった先で立ち上がり、腰に差していた剣や刀を抜いて構えた。

剣を構えたことに恐竜はさらに吠え、一斉に襲い掛かってきた。

襲い掛かってきた恐竜を一匹ずつアルドとサイラスはいなした。

「くっ、一匹一匹は大したことはないのに数が多いとつらい」

「予想以上の数でござる」

だが予想以上の数でいなすことしかできずに少しづつ後退している状況だ。

この状況に冷や汗が垂れる。

「くっ、いったん引くべきか」

「それも視野に入れるべきでござるな」

そんな軽口をたたきあっていると開けた場所にたどり着いた。

そこにたどり着いたとたん、小型の恐竜達はいっせいにいなくなった。

「助かったのか?」

「いやそうでもないでござるな、大きい音が聞こえでござる」

サイラスの言った通り、ドスンドスンと地響きと間違うような音が聞こえた。

小型の恐竜がこの場からいなくなり、さらに開けた場所に出てしまったということはたどりつく答えは一つ。

この場所まで誘導されていたということだった。

そして音はどんどんと近づいてくる、それと同時に影も近づいてくる。

ついに影はアルド達を包み込んだ。

そこでアルド達は覚悟を決めて上を見上げた、そこにいたのは

さきほどの恐竜とは比べられないほどの大きさの恐竜だった。

「ウソだろ!?」

「なんと!?」

恐竜は小型の恐竜と比べ物にならないぐらいに大きな声で吠え、辺りの空気が震えた、アルドはそれにひるまずに剣をしっかりと握りなおし、慎重に間合いをとりながらサイラスに話しかける。

「一匹だけなら逃げれるか?」

「厳しいでござるな、少し離れたところに逃げ道をふさぐように先ほどの小型の恐竜がいるでござる」

サイラスが視線を向けた先には先ほどの恐竜達がいた。

そいつらは明らかにこちらの様子をうかがっている。

逃げ出したらそのままあの小型の恐竜のする井戸騎馬の餌食になるだろう。

「なるほど、あいつらは協力して狩りをしているのか」

「まんまとつかまってしまったでござるな」

「協力して狩りをするような奴がうろうろしているなんて他の人達や商人は大丈夫だろうか……」

「大丈夫だと信じるしかないでござるな、それにここを何とかしないと拙者達もやばいでござる」

「そうだな」

「とりあえず、近づいてあいつの死角をから攻撃をするしかないでござる」

「二手に分かれて、素早く死角である足元に行ってダメージを与えよう」

「わかったでござる」

サイラスは頷き、駆け出す、アルドも駆け出した。

二手に分かれて走り出したので恐竜は目立つカエル男であるサイラスを追いかける。

アルドはその隙を狙って、恐竜の足元にたどり着き、勢いよく剣で左足を切りつけた。

サイラスに気を取られていた恐竜だったが足の痛みに気が付きその場で止まった。

その隙にサイラスも恐竜の足元に行き、今度は右足を切りつけた。

恐竜は痛みに耐えきれなかったのかその場に崩れ落ちる。

二人はそれに巻き込まれないように後ろに下がった。

恐竜は動けなくなったみたいで崩れ落ちてから全く動かなかった、ただただ吠えた。

それにひるまずに二人は恐竜の近づき、首元を剣や刀を切りつけた。

恐竜は地響きと間違うような断末魔をあげて絶命した。

その断末魔を聞いた小型の恐竜はかなわないと思ったのか蜘蛛の子を散らすようにこの場から逃げ出した。

それを見送ってから二人は剣や刀を鞘にしまった。

「ふう、なんとなかったな」

「一時はどうなるかと思ったでござるよ」

「本当にな」

「して商人を探すでござるか」

そういいながらサイラスはあたりを見渡す。

すると近くの岩陰からものすごく小さい音が聞こえた。

「なにか聞こえたぞ」

「先ほどの恐竜でござるか?」

「いや、岩陰の大きさから、もしかして……」

アルドは岩陰に近づいてみる。

そこは倒れている人がいた。

倒れている人の特徴は事前に聞いていた商人と一致した。

「やっぱりか……」

アルドはサイラスをこちらに呼んだ。

「サイラス、商人がいたぞ」

「本当でござるか! して安否は」

「顔色は悪いが生きてはいる、ただ傷口がかなり汚れているから念のため洗って包帯を巻きたいな」

「それなら、水筒の水で洗って、簡単に包帯をまくでござる」

サイラスは持ってきた水筒と包帯をアルドに手渡す。

「助かるよ」

「アルド、手当を頼むでござる。拙者は辺りを見張っているでござる」

「任せた」

アルドは手早く、傷口を水で洗った後、包帯を巻いた。

「よし、これで大丈夫だな」

「では商人を連れて、ラトルの村に戻ろう」

二人は気を失っている商人を交代で背負いながらラトルの村に戻った。


戻る道中で商人を探していた村人達にも声をかけ、村に戻った。

村に戻ると一緒に戻ってきた村人に商人の拠点に案内された。

商人の拠点は村のはずれにあった、外観自体はラトルの村の普通の家と違いはないがはずれにあるからかラトルの他の家よりも大きい家だった。

いろんなものが置いておる部屋を通り抜けて、奥にある商人の部屋と思われる場所に商人を寝かした。

部屋自体は広く整理整頓されていた、商人が几帳面な人間であることの証明だなぁと思いながらアルド達はここで待っていた。

しばらくすろと案内してくれた村人とは別の村人が医者を呼んでいたらしく、医者がこの場所に来た。

その医者が言うには今は眠っているだけで命に別状はないとのことらしい。

その結果にひとまず胸をなでおろした。

「しかし、いつ目が覚めるかわからんでござるな」

「そうだな、とりあえず、ラチェットが書いてくれた紙を村人に渡しておいて、商人の目が覚めたら渡してもらうようにしよう」

「そうでござるな」

「それにそろそろエイミもアクトゥールに戻ってきているかもしれないから一回戻りたいし」

「そういえば、ラトルに向かうというのを誰にもいってなかったでござるな」

「……もしかして、エイミが先に戻っていたら怒られるんじゃ」

「急いで戻るでござる!」

「そうしよう!」

二人は紙を村人に渡すと急いでアクトゥールに戻った。

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